福島県が水素の総合展示会を開催 活用推進のトップランナーを目指す
【REIFふくしま2025】
福島県は再生可能エネルギーと水素の展示会「REIFふくしま2025」を開催した。
最先端の導入事例などを紹介し、先陣を切って取り組む姿勢を示した。
福島県は2040年に県内エネルギー需要の100%を再生可能エネルギーから生み出す「福島新エネ社会構想」を掲げている。この構想の下、10月16、17の両日、再エネと水素の展示会「REIFふくしま2025」を郡山市で開催した。県内外から225の企業や団体が出展。4722人が来場した。


FCVセルを応用 熱の燃料転換に貢献
特に来場者の関心を集めていたのが再生可能エネルギー電気由来のグリーン水素を活用する展示だ。デンソーとデンソー福島(田村市)は、グリーン水素をアフターバーナーの燃料として活用する取り組みを紹介した。デンソー福島の工場敷地内の太陽光発電(1000kW)で発電した電気を使用し、トヨタ自動車の燃料電池車(FCV)に採用するFCセルで水素を製造している。FCセルは400kWの電気で1時間当たり8kgのグリーン水素をつくり出す。この水素をパイプラインで工場へ供給し、ラジエーターなどの生産工程で、製品を加熱する脱脂、ろう付け炉で使用する。これまで同用途向けの燃料はLPガスだった。これを水素燃料転換することで燃焼温度を下げNOXの発生を抑えた。
同工場の水素設備は、20フィートコンテナにパッケージ化されたもので、1カ月に約1・5tの水素を生産し2日分を貯めることができる。デンソーでは、この設備導入で得た安全対策やメンテナンスの知見を蓄積して、他の工場への展開を計画する。
自治体では浪江町が町内の取り組みを紹介した。同町は、全国に先駆けて水素タウン構想を掲げ、20年に稼働を開始した世界最大規模の水素実証拠点「福島水素エネルギー研究フィールド (FH2R)」を中心にさまざまな規模で水素事業を進めている。業務向けでは、FH2Rで生成した水素をトレーラーで運び、貯蔵、50kW燃料電池で電気と熱を付近の温浴施設へ供給する取り組みを行っている。水素供給は柱上パイプラインでも計画する。家庭向けでは水素をシリンダーで民家へ配置、家庭用FCで発電する電気を自己託送で供給することなどを行っている。

産業技術総合研究所傘下の福島再生可能エネルギー研究所(FREA)の古谷博秀所長は福島県の水素地産地消について、「県が先端的に取り組む水素地産地消ではさまざまな技術のアイテムがそろうだろう。再エネの特徴を使い分けし、まずBCP対応を建物や通信系などの重要設備で実現し、カーボンニュートラル化が難しい工場での高温熱利用などで実用化が進んでいく」と展望した。
オンサイトの事例紹介も P2Gの導入進む
展示会には、県を挙げて水素に注力する山梨県もブースを構えた。同県は東京電力ホールディングス、東レと水素事業会社「やまなしハイドロジェンカンパニー(YHC)」を設立、今年10月にはサントリー白州工場(山梨県北杜市)に1万6000kW規模のパワーtoガス設備を導入したばかりだ。

同設備は福島県内でも採用されている。ヒメジ理化は半導体用石英ガラス工場(田村市)にYHCのP2Gシステム(1万4800kW)を設置。同工場所有のメガソーラーなどを利用しグリーン水素を生成、バーナー用燃料として利用する。同社では他の工場にも水素を供給する計画だ。住友ゴム工業白河工場(白河市)も水素サプライチェーン構築を目指す。YHCのP2Gシステム(500kW)を導入し、白河工場のタイヤ製造に活用する。
大熊町のベンチャー企業・OKUMA TECHはFCドローンを開発する一方で、次世代水素キャリアの粉体・固体水素開発も進めている。水素を粉体・固体で貯蔵後、加水・水分除去し水素を取り出す活気的なもので、常温常圧で貯蔵することにより、水素の低コスト化につなげていきたい考えだ。

展示会の最終日のトークセッションには内堀雅雄福島県知事が登壇した。「福島県は水素普及をトップランナーで進めていく。持続可能な、災害に強い町づくりを水素利用で加速していく。水素を身近なエネルギーに変えていくチャレンジを通し未来を変えていく」と述べた。2日間にわたる展示会は盛況のうちに閉幕、知事のメッセージに込められた水素の輪を広げる挑戦を示す内容だった。


