【特集2】自社ブランドの大型システムを販売 他社と共同で系統連系蓄電所を展開
【伊藤忠商事】
さまざまな企業が参入する蓄電池業界において、伊藤忠商事のビジネススタイルは異彩を放つ。「商社っぽくない動き方」「珍しいタイプのプレイヤー」。業界関係者はこう評す。
特徴の一つが、メーカーとしてのポジションによる事業展開だ。中国の電気自動車(EV)大手BYD、蓄電池ベンチャーのパワーエックス(岡山県玉野市)と提携し、OEMで自社ブランドの蓄電システム「Bluestorage(ブルーストレージ)」を販売している。工場などに設置する産業用をはじめ、系統用蓄電池や太陽光発電サイトなどに併設する蓄電池をラインアップした。
次世代エネルギービジネス部電池ビジネス課の道野僚太シニアマネージャーは、「一番の強みは、導入しやすい価格設定に加えて、安定した蓄電ビジネス環境を提供できる点にある」と説明する。製造にあたっては、自社工場を持たない「ファブレス型」を採用。日本市場に適した基本設計の下、中国で製造することでコストを抑える。その一方で、システムを導入した後は、同社が監視・制御といったエネルギーマネジメント、メーカー同様のレベルでの保証や保守・メンテナンスまで全面的にサポートする。ブルーストレージ採用の蓄電所は2025年9月現在、全国7カ所で稼働中のほか、14カ所で建設中、100カ所で検討が進んでいる。

協業でプロジェクトに参入 網羅的な事業経験を生かす
もう一つの特徴として、他社との協業が挙げられる。その関わり方は、実にバラエティに富んでいる。系統連系プロジェクトを例に挙げると、カネカグループと手掛けた兵庫県内の蓄電所では、EVで使ったリユース蓄電池で構成するシステムを納入し、周辺の太陽光発電を使ったPPA事業やマイクログリッドを実施。西日本鉄道(福岡市)の蓄電所に蓄電システムのリース提供で関わる一方、東急不動産グループと運用する蓄電所では、蓄電池の調整力を各電力市場での最適運用と収益化に活用するアグリゲーターとして参画する。パートナー企業の意向やプロジェクトの特徴を踏まえ、多様な役割を果たしてきた。
こうした動きの背景には、同社が原料トレードや電池のリサイクル、蓄電池の開発、システム販売、設備の保有・運用までを網羅する形で蓄電事業に携わってきた経験にある。また、累計6万台超を販売した家庭用蓄電池での知見も大きい。
自社の蓄電事業にとってもメリットがある。「電気事業は制度などで難しい面があるので、他社との協業で理解を深められる。また、他社とのコミュニケーションから気付きが生まれ、新たな事業に派生させるきっかけになる」(道野氏)という。
24年には、系統用蓄電池専業ファンド運営大手の英ゴア・ストリート・キャピタル(GSC)と共同で、国内初かつ国内唯一の「東京都蓄電所ファンド」を設立した。蓄電所の運用ノウハウを投資企業に還元し、蓄電所の普及を図っていく方針だ。


