【特集2】系統用ビジネスに参入ラッシュ 事業者が魅力を感じる収益構造
2024年ごろから急激な盛り上がりを見せている蓄電池ビジネス。
この要因は何か、そしてブームは長続きするのか。現状と展望を探った。
【レポート】瀧口信一郎(日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト)
蓄電池ビジネスへの参入が相次いでいる。再生可能エネルギー併設型蓄電池事業に代わって系統用蓄電池事業が今回の主役である。関西電力(E―Flow)、ENEOS、大阪ガスなどのエネルギー大手、分散した電力設備を取りまとめるVPP事業を展開するエナリス、東芝エネルギーシステムズ(ESS)、デジタルグリッド、Shizen Connect、しろくま電力など、その顔ぶれは多彩だ。パワーエックス、GSユアサなど蓄電池供給企業の動きも活発である。10年近くかかっていた蓄電池の投資回収が2~3年に縮まる事例も出ている。
背景にあるのは需給調整市場の本格稼働である。2021、22年に開設された電力供給指令から数十分で電力供給が必要となる三次調整力市場に続き、24年に開設された、数秒から数分の短時間対応を求める一次、二次調整力市場では、電力供給の出力増減(ΔkW)に対し1時間当たり39・02円(30分当たり19・51円)という上限価格が設定された。短時間対応ができる事業者不足のため、上限価格での取引が頻発。結果として、早期の参入企業は容易に利益を上げられる状況が生まれた。
それを見て参入企業が続出している。メガソーラー(事業用大規模太陽光発電)事業で成功した企業群やファンドが蓄電池投資に乗り出したのである。これらの事業者は、再エネ併設型蓄電池事業、あるいは長期脱炭素電源オークションの入札を検討してきた経緯がある。23、24年度の長期脱炭素電源オークションでは採択枠が少な過ぎて多くの事業者は失注したものの、蓄電池への投資を準備する機会を持つことができた。需給調整市場は多くの事業者に投資機会を与えた格好だ。

取引判断力と資金力が重要 連携に向けた動きが活発化
系統用蓄電池事業は、「トレーディング力」と「資金力」という異なる能力を必要とする。まず、需給調整市場を活用するため、蓄電池の稼働率と販売価格を最適化して収支を最大化しなければならない。参入者が増えれば、上限価格での落札は難しくなるため、市場取引の判断力の重要性が増す。一方、規模にかかわらずシステムコストや人件費といった固定費はほぼ一定で、投資規模が大きいほど収益性が向上するため、投資余力のある企業に有利に働く。
系統用蓄電池事業は、市場取引に長けた運用企業と安定した資金力を持つ所有企業が協力し、二つの相反する能力を組み合わせる連携が今後の市場拡大の鍵を握る。多くの系統用蓄電池事業で、蓄電所とトレーディングを行うアグリゲーター(市場取引者)の連携スキームが検討されている状況にある(下図参照)。まず蓄電所をアグリゲーターに貸与する形が考えられるが、蓄電所側で事業リスクを取り、アグリゲーターがシステムと運用基盤の提供を行うこともある。役割とリスクの分担を決められるかどうかが事業開始の分岐点となる。投資体力のある電力・ガス・石油の大手企業は二つの能力を備えているため、早期のスタートを切っている。だが、連携先のリース会社との共同事業も多いため、事業拡大のためには資産所有リスクを切り離す方針を持っていると見られる。

上限価格変更が収益に影響 制度の動向に注視
系統用蓄電池事業は、制度設計次第で収益が大きく左右される。直近では収益性が高すぎるとの声を受け、資源エネルギー庁は、次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会・制度検討作業部会で上限価格の再検討を始め、26年度から1時間当たり14・42円(30分当たり7・21円)に上限価格を下げる方向にある。この上限価格水準でも収益性は見込めるはずだが、制度変更リスクを嫌気して参入を躊躇する企業も出ている。
エネ庁には、市場の継続性に配慮した長期・複数年にわたる方針を提示し、民間事業者の予見可能性を高める運用の重要性を指摘したい。6カ月ごとに上限価格が変更され得る現状では、事業者は制度動向を注視する必要がある。
国産化の動向も忘れてはいけない。製造国の偏りによる供給リスクを懸念し、25年度の長期脱炭素電源オークションの募集要項では新たに「1国・地域当たりの蓄電池容量を30%未満にする」との要件が加えられた。今後、蓄電池の調達に影響が出るだろう。
また、系統用蓄電池事業者も需要併設型蓄電池をどう活用するかを考える必要がある。元来、蓄電池は電力系統外に設置するものと位置付けられてきた。蓄電池は、工場、通信基地局、データセンター、自治体の防災用のバックアップ(BCP)としても用いられる。製造業、情報通信産業、運輸事業者、交通事業者、自治体と蓄電池を共有することは不可欠となる。所有形態は今後も進化を求められる。
再エネの発電出力が拡大し続ける中で、昼の発電余剰、夜の発電不足、雪の日の電力不足、季節変動に対応するため、蓄電池に対するニーズは続く。30年の再エネ導入目標に向けて蓄電池ビジネスは進化、発展が続くだろう。



