【大阪ガス 藤原社長 】CN投資を着実に進め 脱炭素に貢献しながら国内外で収益力高める

2026年2月1日

井関 注目されていたロシア「サハリン2」との取引許可が6月まで延長されましたが、まだ危機が去ったわけではありません。

藤原 当社は2%程度とはいえ、日本全体では輸入量の9%をサハリンに依存しています。日本にとって非常に大きなウェイトを占めていますし、もし輸入できなくなればエネルギー需給にとって大きな痛手です。あまり大騒ぎされていないのですが、27年1月以降はロイズがロシア産のエネルギーの運搬に対する再保険を引き受けないと決めており、実施されれば大変なことです。出荷からわずか2日間で日本に到着するため、パナマ運河や喜望峰経由の航路と比べ非常にセキュリティー性の高い優れた供給地点であることは間違いありませんから。

高市早苗首相がトランプ大統領と会談した際、サハリン2の重要性を訴えたと聞いています。利益が戦費に使わることを良しとするわけではありませんが、たとえ日本が輸入しなかったところで「Take or Pay」で支払いは発生します。国、そして商社には、ぜひこうした危機を回避できるよう取り組んでいただけることを期待しています。

井関 アラスカのLNGプロジェクトについて東京ガスとJERAが関心表明をしました。

藤原 当社に対して公式的な働きかけがまだありませんので、いつ、どれくらいの量をどういった条件取引するのかといったことが分からず、正直なところコメントしようがありません。西海岸が輸出基地となりますので非常に関心はありますが、情報がない中で軽々に判断できません。


制御ノウハウが強み 蓄電池事業で差別化

井関 分かりました。蓄電池事業にも力を入れており、30年度までに100万kWという目標を掲げています。

藤原 系統安定型と再エネ併設型の双方で蓄電池ビジネスの取り組みを進めています。蓄電池の保有だけではなく、制御のみを手掛ける案件も含めて100万kWに拡大したい考えです。当社は、1987年から受託研究開発事業を手掛けるKRIで、あくまでも中立の研究機関としてリチウムイオン電池に関する研究委託を受け知見を積み上げてきました。どういった蓄電池を選ぶべきか、どのように制御すれば長寿命化が図れるかなど、他のユーティリティー企業と比べてもノウハウがあります。再エネ発電のサイトを多く保有していること、そしてKRIの制御のノウハウがあることは大きな強みであり、研究を深めさらに差別化を図っていきます。

井関 北川進氏(京都大学特別教授)がノーベル化学賞を受賞されました。1995年から約9年にわたり、大阪ガスと多孔性金属錯体(PCP)を使ったガス吸着性能を評価する実験に取り組んでいたそうですね。

藤原 北川氏は私にとっては大学の学科の先輩であり、都立大学にお勤めだった際にメタン吸蔵合金を作れないかとお話を持ち掛けたことをきっかけに、当社との共同研究が始まりました。私が大学4回生だった1981年に福井謙一氏がアジア人として初めてノーベル化学賞を受賞され、2019年にはKRIの顧問を務めていただいている吉野彰氏、そして今回の北川氏と受賞が続いたことに縁を感じますし、うれしい限りです。

ガス会社は、さまざまな研究者や企業と共同で技術開発に取り組むことで、消費機器の製品化や安全性向上に努めてきたという歴史があります。中でも当社は、最も基礎的な研究に力を入れているガス会社と言えます。研究所が老朽化してきたこともあり、研究に携わる社員、パートナーの皆さんにとって魅力的な研究拠点を作りたいという思いから、大阪市此花区の酉島地区の「カーボンニュートラルリサーチハブ」に新研究開発拠点を整備しました。

CNに向けた研究開発を集約し、情報発信や、オープンイノベーションなど社外との共創を強化し、当社独自技術の社会実装の加速を目指します。幅広いパートナーと研究に取り組むという当社の姿勢は、これからも変わることはありません。

井関 本日はありがとうございました。


対談を終えて

2021年1月の社長就任から丸5年。エネルギーを取り巻く世界環境が激変する中で、米フリーポート事故などの逆風を受けながらも、GX/DXの時流を上手につかみ、経営に取り込んできた成果がここにきて表れ始めた。通期決算の上方修正と思い切った増配が好調さを物語る。藤原社長の手腕が光る。今年1月から姫路LNG火力1、2号機が相次いで運
開する。電力事業面でも今後の展開が楽しみだ。(聞き手・井関晶)

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