【特集2家庭用エネルギー】エネルギー史に刻むハイブリッド給湯の潜在力を探る
総合エネ企業の青写真 三つの顔持つニチガス
角田 電力の全面自由化の中で、ニチガスをはじめ、ガスだけでなく電気も販売する総合エネルギー企業が増えています。こうした企業にとってハイブリッド給湯器を扱うことは相性が良いのではないですか。
清水 ニチガスの場合、三つの顔を持っています。電気販売、ガス販売、そして機器販売の顔です。電気や都市ガスについては卸元となる東京電力グループと連携・調達して、小売り販売をしています。お客さまにハイブリッドを使っていただくのであれば、「電気の契約もニチガスにお任せください」という思いで営業の現場は動いています。既設の場合、当然、ガスの販売量は大幅に減りますが、電気の販売で一部カバーできます。
ここでポイントになるのが、電気やガスの販売だけでなく、ニチガスが自らハイブリッド給湯器そのものをお客さまに販売しているということです。
販売の手間を考えますと、どうしてもサブユーザーに売ってもらう形になるかと思いますが、ニチガスではハイブリッドに関しては自ら仕入れて販売しています。機器販売を含めたトータルの家庭用ソリューションにワンストップで対応しています。
また、仮にニチガスにとってガス販売の減収分の打撃の方が大きかったとしても、裏を返せば、それはお客さまの光熱費削減でメリットが大きかったという証左です。お客さまに喜んでいただき、ニチガスとの契約が長く続いて10年、15年後の買い替え時期に「またニチガスに頼もう」というサイクルになればと考えています。
電気とガスの切り替え自在 我慢のないDRが可能
角田 ニチガスはハイブリッド給湯器を使って家庭用のDRを展開されようとしていますが、少し解説してもらえますか。
清水 上げや下げを含めた一般的なDRだと、電気消費を「増やして」「減らして」をお客さまに強いることになります。一方、ハイブリッド式DRは、状況に応じて電気とガスが自在に切り替わり、どちらかの熱源でお湯を作ります。電気由来だろうとガス由来だろうと同じお湯なので、お客さまが何かを我慢したり、強いられたりすることはありません。これがハイブリッドの最大の利点です。
ハイブリッドがお風呂に必要な分のお湯を沸かすには1台当たり500~600W時程度の電気を使いますが、仮に1000件のお客さまから協力をいただけたとしたら、電気からガスに切り替えるだけで500~600kW時分の価値を生みます。電源を持たない小売り事業者にとって、この価値は大きいです。
将来的には、こうしたリソースを調整市場に活用したいと考えています。その際、マネタイズするには多くのお客さまにDRに協力いただくことが必要であり、お客さまの理解が不可欠です。
申し上げた通り、電気とガスを自在に切り替えることはそれほど大きなハードルではありませんが、例えば、海外旅行で1週間不在となった家庭にはそもそも給湯のための電力需要が発生しないため、DRを発動してもピークカット効果は望めません。こうした不確実性を最小化するためにも、多くのお客さまに参画していただき、一定規模の需要量が必要となります。
当然、お客さまにとってもDRに参画するメリットがないと、参加者を増やすことは難しいと思います。例えば、小売り事業者は容量拠出金といって最大ピーク需要に応じた負担金を支払わなくてはいけません。電力の安定供給のために必要不可欠な負担ですが、DRによってピーク時間帯の需要を抑制し、その負担を減らすことが期待できます。巡り巡って電気料金の抑制につながれば、お客さまにとってもハッピーなことです。DRを通じて、こうしたサイクルを回すことが最大の目標です。
ハイブリッド給湯器を買ってぜひDRに参加してくださいと提案し、こうした複雑な仕組みをお客さまに理解してもらうことは大変ですが、LPガス販売の最前線で営業社員が積み重ねてきたお客さまとの信頼関係があります。当社はこの現場営業力により、新たな「エネルギーの調整力」の仕組みを開拓していこうとしています。

機器の点検を行うニチガススタッフ
HPの効率が高まる ZEH政策に対応
角田 ハイブリッドはお客さまが気にせずDRに貢献できます。「夏場の電力需要がひっ迫したタイミングで、お宅のエアコンを使わず図書館に行って涼んでください」といったDRとは一線を画しポテンシャルがとても高い。最後にメーカーとして何かコメントはありますか。
祖父江 「省エネ性はエコキュートより劣るが、エコジョーズよりも優れている」。そんなイメージを持たれている方が多いことも事実です。でも実態は異なります。エコキュートは高い温度でためておかないと、万が一の時に使えません。でも、ハイブリッドはガスの熱源機があることで、HPによる沸き上げ温度をできるだけ低くして貯湯でき、HPの効率がすごく良くなります。国交省のウェブプログラムの計算式でも、住宅向けの一次エネルギー消費量を大幅に削減していることをはっきりと出せます。こうした効果を私どもの努力不足でアピールできていませんので、しっかりお伝えしたいと思います。
今後はとりわけ新築分野において、国策としてZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)住宅の普及が進むことから、新築への導入件数が増えていくことが予想されます。こうしたニーズにしっかりと応えていきたいです。
角田 本日はありがとうございました。

つのだ・けんじ(右) 東京ガスで家庭用営業・マーケティング部門などに従事。現在はエネルギーコンサルティングなどを行っている。
しみず・やすひろ(中) 1987年東京電力に入社。2018年よりニチガスに参画。電力事業の立上げや電力料金プランの策定に携わる。
そぶえ・つとむ(左) 1995年リンナイに入社。エコジョーズやハイブリッド給湯などの開発に携わる。現在、国の施策への対応などに従事。
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