【特集2家庭用エネルギー】東急パワーサプライが蓄電池「1000台無償」で社会実装
東急パワーサプライが家庭用蓄電池による社会実装事業を開始した。需要家の経済的メリットとともに、分散型電源としての活用も期待される。
東急パワーサプライは、家庭用蓄電池1000台を無償で設置・貸与する大規模社会実装事業「てるまるでんちプロジェクト」を実施した。設置の条件は、東京都内で太陽光発電を設置していない戸建て住宅に住んでいること。昨年8月下旬から専用ウェブサイトで受け付けを開始し、12月末日時点で、申し込み数は600台超となっている。
市場連動型プランを活用 充放電制御で電気代を削減
狙いの一つが、分散型電源として制御できる蓄電池の社会実装だ。プロジェクトに参加する需要家には、同社の市場連動型電気料金プラン「ライフフィットプラン」に入ってもらい、蓄電池の制御は全て、同社が遠隔で行う。市場価格が安い時間帯に充電しておいて、高い時間帯にはためた電気を放電して家庭内で使用する。需要家は普段どおりに生活しているだけで、電気代が削減できる仕組みだ。
先行導入した世帯では、昨年9月の電気代が蓄電池未設置の場合と比較して最大で4・8%、646円の削減になった。真夏・真冬などの電力消費量の多い時期にはさらなる削減効果が期待される。一方で、市場連動型料金は、市場価格が高騰すると電気料金が高くなるリスクがある。そうした中、「蓄電した電気が使えるので、高騰による値差があればあるほど効果を発揮できる。蓄電池が高騰の影響を緩和するバッファーとして機能する」と、コンシューマ事業本部の冨山晶大執行役員はメリットを説明する。

停電対策にも効果的だ。平常時にも常に最低30%の電気を残す運用になっており、非常時には自動的に放電モードに切り替わる。すでにプロジェクトに申し込んだ世帯にアンケートを取ったところ、6割近くが「停電対策に期待する」と回答。災害対応へのニーズの高さがうかがえた。

プロジェクトに採用した蓄電池は、オムロンソーシアルソリューションズ製の12・7kW時タイプ。1000台の調達には、東京都の「家庭における蓄電池導入促進事業」の補助金を活用した。需要家との貸与契約期間は10年間。その間、東急パワーサプライがメンテナンス費用などを負担し、期間終了後はそのまま需要家に譲渡される。需要家にとっては無料で蓄電池を使うことができ、節電などのメリットが受けられる。一方、同社にとっては、10年間という長期にわたり、需要家との電力契約が締結できる。
一括運用でDRに対応 需要抑制と逆潮流に効果
今回のプロジェクトには、1000台の蓄電池を一括制御することで、DR(デマンドレスポンス)による需給調整に活用する狙いもある。同社が設置済みの蓄電池5台分について、昨年7月~11月で試算したところ、調整力となり得ることが確認された。
まず、需給ひっ迫時の下げDRでは、昨夏の東京電力管内では需給ひっ迫警報が出なかったため、インバランス単価が45円以上(広域予備率8%以下)の時を「警報が出そうな状況」としてカウント。需要抑制DRが必要なコマ数27に対し、同社が放電の指示をしたコマ数は26に上り、ほぼ全ての需要抑制に対応できることが分かった。また、この間の総放電量は49・2kW時で、家庭で使用した電力量に該当する1台当たりの平均放電出力は0・76 kW。仮に1000台になれば、760kWほどの需要抑制が可能になる。
また、試験的に4日間・12コマにおいて逆潮流放電を行ったところ、平均放電電力(蓄電池端)は23・8kWとなり、1台当たりで4・76 kWとなった。これは、蓄電池の定格出力と同等の放電ができたことになり、家庭内負荷超過分の電力が系統へ提供できることを確認した。また、一般的な系統蓄電池の約2台分の出力に相当する。「蓄電池を設置したお客さまにメリットがあると同時に需給調整にも貢献できる。この仕組みが実装できた点がプロジェクトの最大の特徴と言える」。冨山氏はこう胸を張る。同社は昨年7月、東京都家庭用アグリゲーターに登録された。今後、都が実施するDR実証事業への参画も予定している。
これまでは、電気を使う総量の削減が節電になってきた。だが、今後は系統全体の需給バランスを保つ上で、余剰が発生しやすい昼間に電力を消費するといった節電が必要になってくる。冨山氏は「一般の需要家に対して、電気を使って節電することを理解してもらい、意識付けていくことは難しい」と話す。そうした状況において、電気料金の削減というインセンティブにつながる市場連動型料金は、行動変容を促す仕組みとして有効であり、「次世代の節電の切り札になる」(冨山氏)という。
同社は以前から夏季と冬季の電力需要が高まる時間帯に商業施設でのイベントや日帰りツアーなどを企画。需要家に外出を促すことで、家庭の節電に寄与してきた。こうした行動変容と、今回の蓄電池制御を両輪として、DRによる需給調整を推進していく構えだ。



