【フォーラムアイ】FC増強へ大規模工事が進む 中部電力PG東清水変電所
【中部電力パワーグリッド】
周波数変換設備を備えた東清水変電所では大規模な増強工事が進んでいる。
容量はこれまでの3倍になるが、限られた敷地での工事には難作業もあった。
富士山と清水湾を一望できる日本平(静岡市)のほど近くに、日本の電力供給の「要」と言える施設が存在する。中部電力パワーグリッド(PG)の東清水変電所だ。ここは変電機能だけでなく、周波数変換という重要な役割を担っている。

日本の電力系統は、明治時代に導入された発電機が東日本(ドイツ製・50㎐)と西日本(米国製・60㎐)で異なっていた歴史的背景から、現在も静岡県や長野県、新潟県を境に東西で周波数が分かれている。東清水変電所はこの境界線上に位置し、交流を一度直流に変換して再び異なる周波数の交流に戻すことで、50㎐と60㎐の電力を相互に融通する。全国で4カ所しかない「周波数変換所(FC)」だ。
エアシャワーを浴びてから「バルブホール」と呼ばれる部屋に足を踏み入れると、1相当たりに四つのモジュールで構成されたアームが4段積み重なった巨大なサイリスタバルブが鎮座していた。光信号によってミリ秒単位でスイッチングを行い、交流を直流へと変換するFCの心臓部だ。

市場分断抑制の効果も FCで国内初の自励式
東清水変電所ではさらなる電力融通能力の強化を目指し、二つの周波数変換装置棟の増設が急ピッチで進んでいる。完成すれば設備容量はこれまでの30万kWから90万kWへと3倍になる。供給力不足への対応力強化だけでなく、スポット市場での東西エリア間の市場分断を抑える効果も期待されている。
増設のきっかけとなったのは、2011年の東日本大震災だ。当時、東日本の電力設備が被災し、供給力が大幅に低下。東京エリアでは計画停電を実施し、夏場には電力使用制限令が発出された。そこで、国はFC容量を20年度に210万kW(90万kW増強)、その後はできるだけ早期に300万kWに増強する方針を打ち出した。これを受け、東清水変電所では電力広域的運営推進機関が16年策定した「東京中部間連系設備に係る広域系統整備計画」に沿って、20年5月に増設工事を開始した。28年に運用を開始する予定だ。

新設するFCには、周波数変換用としては国内初となる「自励式変換器」を採用した。最大の特徴はレジリエンス(強靭性)に優れていることだ。従来の他励式は交流系統への依存度が強かったが、自励式はそうではなく、系統かく乱への対応力に秀でており、片端外部電源なしでの起動(ブラックスタート)が可能だ。他励式で必要だった巨大フィルタや電圧を適正に保つ調相設備なども不要(または小型化)で、限られた敷地を有効に活用できる。
コロ曳きで機器を移動 建物内部の安全性は向上
東清水変電所は山の中腹に位置した手狭な敷地に建設されていて、一筋縄ではいかない工事となっている。
特筆すべきは、重さ180tの巨大な変換用変圧器の輸送だ。この機器は、清水港から特殊車両によって運んできた。構内に到着してから最終的な設置場所への移動に用いたのは「コロ曳き」という手法だ。車輪の役割を果たす細長いアルミパイプの上に機器を置き、3日間かけて120mを引いた。

建物内部にも、高度な工夫を凝らした。自励式で使用される巨大な空芯コイル(リアクトル)から発生する磁束により、運転中に建物のコンクリート内の鉄筋を誘導加熱する可能性がある。そのため、壁や床にアルミニウム板を敷き詰めた。この磁気シールドでリアクトルホール内は一面の〝銀世界〟が広がっている。火災対策も万全だ。高電圧設備がある部屋の一部では、万が一、火災が発生した場合には、300本以上のボンベから窒素ガスを噴出し、一気に窒息消火するシステムを備えた。
中電PG基幹系統建設センター東清水FC工事所の小林力所長は「工事が完了すると東清水FCの総容量は90万kWとなり、レジリエンスや市場取引の活性化の観点からも期待される役割は大きくなる。自励式FCの導入は初めてなので、受注メーカーである日立製作所とも協力しながら、安全を最優先に工程を遅らせることなく、取り組んでいきたい」と力を込める。
進化した東清水変電所が、日本の安定供給に果たす役割は計り知れない。これまでも、これからも、平時と有事を問わず日本の電力を支えていく。


