【コラム/2月12日】2020年代後半のスタートをどう切っていくか

2026年2月12日

足下の制度動向も着目

少し先の話をしてきたが、制度設計の議論は絶えず行われており、2026年度も多くの制度が実行あるいは審議されることとなる。例えば次のようなものが挙げられる。

大きな政策では、今後の日本の成長をどう実現していくかの準備が始まる。日本成長戦略会議では成長戦略策定を夏までに行うため、17の重要分野で官民投資ロードマップを春頃までに策定するためのワーキンググループを1月以降、順次設置、開始している。エネルギー関連では「資源・エネルギー安全保障・GX」と「フュージョンエネルギー」が含まれている。非常に速いテンポで議論を進め、取りまとめを行う方針となっており、今後の議論の行方が着目される。GXについては、GX戦略地域制度が創設され、昨年12月からコンビナート等再生型、データセンター集積型、脱炭素電源活用型の3類型の募集が始まっている。2月13日まで募集を受け付け、春頃には第一段階として有望地域の選定を、夏頃には最終的な地域選定を行い、その後に必要な支援を講じていくこととなる。都道府県や政令指定都市中心での提案となるが、市町村や民間企業の協力は不可欠であり、この短期間でどう募集にもっていくことができるか。脱炭素先行地域のように迷走しないよう、国がしっかりグリップし、自治体も責任を持った形で進められるよう準備をしていく必要があるだろう。

個別の政策も相変わらず多いが、ここでは主なものについて紹介する。

まず、電力システム改革検証を受けて進められている制度設計については、昨年末に中間整理(案)を提示したが、まだ継続議論や詳細設計が必要な項目が大宗であり、2025年度内に残課題を整理し、2026年度からは具体的な制度設計に着手する方向である。

次に市場設計について。容量市場が現在、包括的検証に入っており、事業者から意見・アイデア・提案を募集した“Call for Evidence”が終わり、2025年度内に取りまとめ、制度見直しが必要なもの(例えば、NetCONEの見直し)は2026年度メインオークションに反映させることを予定している。調整力確保のために創設された需給調整市場は2026年度に多くの変更が予定されている。具体的には、全商品が前日取引化、取引単位が30分となること、一次調整力及び二次調整力の募集量削減と上限価格引き下げ、市場競争状況の定期的な確認の実施、低圧リソースの取り扱いや機器個別計測の開始、取引手数料の値上げが挙げられ、市場参画する事業者は注意が必要である。卸電力取引市場(JEPX)では新システムへの移行により専用線接続による取引が始まるほか、年会費・手数料が見直されることとなる。また、これまで全国一律の情報のみ提供されていた時間前市場については、10月よりエリア別(①北海道、②東北・東京、③中部・北陸・関西、④中国・四国、⑤九州の5エリア)で分割された表示となる。

脱炭素関係では、2026年4月より排出量取引制度が対象となる企業(発電事業者を含む)に義務が課せられることになるが、まだ排出枠取引市場の設計など残課題もあり、実際に動き始めるまでには少し時間がかかる。また、2028年度から化石燃料賦課金が課せられることになるため、その準備を進める必要もある。

非化石価値取引においては、2026年度より対象となる小売電気事業者向けの高度化法の第3フェーズが始まる。既に制度設計の大枠と中間目標値の算出の準備が進められているほか、2033年度から始まる予定の発電事業者の一部に対する有償オークションとの整合をどう取るかといった論点の議論も始まる必要がある。また、再エネ価値の最適評価という観点で議論が昨年より着手されている非化石証書の上下限価格見直しについては、引き続き、国内外の情勢や企業動向も踏まえながら議論を行っていくこととなっている。GHGプロトコルのスコープ2の改定が議論されているところでもあり、そうした点とも整合を取り、ガラパゴス化した政策とならないよう留意が必要になってくる。

その他、原子力発電の再稼働対応(柏崎刈羽6号機、泊3号機)、CCS事業法の完全施行(5月)とCCS事業のFID期限、託送料金のレベニューキャップ第2規制期間(2028年度以降)に向けた準備と物価上昇等のエスカレーション対応、洋上風力発電の第1ラウンドの再公募と第4ラウンド公募、インバランス料金の見直し(10月)、等、さまざまな制度が施行・議論される予定となっており、引き続き、予断を許さない状況となっている。


迷走なき政策・制度設計に向けて

これまでも多くの政策や制度が議論・審議、実行されてきたが、情勢変化が激しい世の中であることから、どうしても見直しが必要となってくる。これはある意味、仕方ないことではあるが、あまりにマイナーチェンジばかり行われることや、大義と異なる議論が行われることは避けなければならない。

無計画な都市計画で、廃墟化するビル群にならないよう、足元から中長期を見据えた全体最適な政策・制度設計とその実行、定期的なフォローアップとメンテナンスができるよう、再構築する時期に来ており、決して、迷走しないことを願いたい。


【プロフィール】1999年東京電力入社。オンサイト発電サービス会社に出向、事業立ち上げ期から撤退まで経験。出向後は同社事業開発部にて新事業会社や投資先管理、新規事業開発支援等に従事。その後、丸紅でメガソーラーの開発・運営、風力発電のための送配電網整備実証を、ソフトバンクで電力小売事業における電源調達・卸売や制度調査等を行い、2019年1月より現職。現在は、企業の脱炭素化・エネルギー利用に関するコンサルティングや新電力向けの制度情報配信サービス(制度Tracker)、動画配信(エネinチャンネル)を手掛けている。

1 2