【時流潮流/3月1日】イラン攻撃でハメネイ師死亡 想定される4つのシナリオ
●シナリオ3:王政復古や国内民主派の復権
1979年のイラン革命直前に国外脱出したパーレビ国王の息子レザ・パーレビ(65)は今も存命だ。米国を拠点に反ハメネイ師を訴え続けてきた。ただ、米国の「宣伝塔」としての役割に過ぎないとの見方が大勢で、多くの専門家は「イラン国内で支持する人は少ない」と指摘する。王政復古が実現する可能性は極めて少ない。
イランが秘密にしていた大規模な核開発を02年8月に暴露したムジャヒディン・ハルクなどイラン国外に拠点を置く反体制派も存在する。だが、ムジャヒディン・ハルクは革命直後の80年から88年にあったイランイラク戦争の際、イラク側に立って戦ったことへのイラン国民の反発は根強いとされ、実権を握る可能性は極めて少ない。
09年の大統領選で大規模な不正投票があったとの疑惑を機に、イラン国内では民主派を中心に「緑の革命」と呼ばれる数百万人規模の反体制運動が盛り上がった。だが、当局の激しい弾圧で、民主派は四分五裂した。専門家は「一定の力を持つ存在ではない」と分析する。つまり、神権政治やIRGC以外の「受け皿」は、イラン国内外に存在しない。
●シナリオ4:内乱 そして騒擾の海
イランへの攻撃が迫った22日、イラン国内の少数派勢力で反対派のクルド人のグループが「イラン・クルディスタン政治勢力連合」を結成すると発表した。クルド人は「国を持たない世界最大の民族」として知られ、トルコからシリア、イラク、イランにまたがる広大な地域に暮らしている。自治権が認められているイラク北部のクルド自治区以外は、いずれの国でも虐げられた状況にあり、イランでも今回の混乱を利用して広範な自治権を獲得しようとする狙いがある。
イランには、クルド人以外にもペルシャ人以外の民族が多数居る。イラク国境に近い南西部にはアラブ系住民、北西部にはアゼリ人も多い。ちなみに、ハメネイ師はアゼリ人だ。パキスタンに近い南東部にはバルチスタンがあり、これまでもたびたび中央政府との衝突を繰り返してきた紛争地帯だ。
また、昨年末以後は、物価高などを背景にイラン市民が政府への抗議活動を強め、数千人から数万人が当局に殺害されたとされる事件が起きている。一般市民にも、政府への不満は強くくすぶっており、少数民族の反乱などが重なれば、一気に内戦に発展する可能性がある。
トルコは内乱を見越し、イランからの難民流出に備えるため国境地帯に難民キャンプを設け始めている。中東では、10年の「アラブの春」移行、政権が倒れたり、実権を失ったりする諸国が相次ぎ、リビアやシリアなどで内乱が長く続いた歴史がある。トルコだけでなく、イラン周辺諸国は、固唾をのんで状況を見守っている。
●「救い神」は居るのか?
イラクでは、03年にフセイン政権が米国に倒された後、大混乱に陥った。米国は、多数の米兵を殺害された苦い経験を持つ。その轍を踏まないため、今年1月に実施したベネズエラでの作戦では、米国に移送したマドゥロ大統領の後任に、米国が影響力を行使できる可能性があるロドリゲス副大統領を据えた。イランでも、大混乱を招かないために同様の措置を模索する可能性がある。
候補者の一人は、12年間も国会議長を務めた国家安全保障会議のラリジャニ議長だ。1月にモスクワでプーチン露大統領と会談したほか、中東諸国の首脳とも会談を重ねるなど、外交舞台に頻繁に登場している。かつては、核問題の交渉代表として欧州諸国との協議を重ねた国際派でもある。このほか、国会議長のガリバフ将軍や、15年に核合意を米国など各国と結んだロウハニ元大統領の名も上がる。
イランが内乱などの大混乱に陥れば、世界の原油の2割が通過するホルムズ海峡の通峡にも影響が出る可能性がある。原油の多くを中東産原油に依存する日本にとっても、そうなれば一大事となる。イランや近隣諸国、そして日本にとっても「救いの神」となる人物は存在するのか。目が離せない展開が続きそうだ。
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