【フォーラムアイ】九州電力グループ初の欧州拠点を開設 今後の海外展開支える足場を整備

2026年3月25日

【九州電力】

キューデン・インターナショナルは、英国法人を構え、洋上風力発電、廃棄物・処理発電事業に出資する。

海外拠点として、欧州のさらなる送電網関連事業や再エネなど新領域の開拓を目指す。

九電グループの海外エネルギー事業を担うキューデン・インターナショナルは、2024年12月に欧州初の拠点をロンドンに設立し、昨年8月、現地での本格的な活動を開始した。

背景には、同社の英国での事業展開の積み上げがある。「シーグリーンフェーズ1洋上風力発電所の海底送電事業」「ドガーバンクA洋上風力発電所の海底送電事業」、Viridor Energy(以下、Viridor社)への資本参画を通じた「廃棄物処理・発電事業」の3プロジェクトに出資する目途が立ち、英国を中心とした欧州地域での事業基盤強化のため、九電グループにとって欧州初となる英国法人を設立した。

英国法人の馬場京子法人長

企画本部の野田邦雄部長


九電グループらしさ大切に 高度な送電技術を生かす

洋上風力発電所の海底送電事業については、同社と九州電力送配電がタッグを組み、九電グループとして取り組んでいる。英国法人は5人体制で、1人は九州電力送配電からの出向社員だ。シーグリーンフェーズ1では、洋上・陸上変電所を含む海底送電設備の所有権を取得し、資産譲渡完了日から24年間にわたって設備の運用・保守を担当する。

ドガーバンクについては資産移管が完了していないものの、シーグリーンフェーズ1と同様、設備の所有権取得に向け交渉を進めている。20年に九州電力に入社後、キューデン・インターナショナルに出向している馬場京子法人長は、世界各国に展開する国内最大手のプラントエンジニアリング企業などでキャリアを築いてきた。

今回の二つの海底送電プロジェクトについて、馬場法人長は「真摯に取り組む姿勢、人の温かさといった九電グループらしさを大切にしていきたい。国内電気事業で70年以上の経験があり、海外で28件の電気事業に参画している高度な技術力は大きな強み」と語る。

同社企画本部の野田邦雄経営企画部長は「今回のプロジェクトで手掛ける海底送電設備の運用と保守から得られる経験は、今後日本で生かせる可能性がある」と話す。現在日本では、50年の脱炭素化達成に向け再生可能エネルギーの導入拡大やセキュリティ確保の観点から、海底送電ケーブルの増強や新設が相次いでいる。そこで、洋上風力先進国である欧州などの海底送電技術を活用する機運が高まっている。特に、長距離や大容量送電の実績に基づく知見は、日本の洋上風力や地域間連系線強化を加速させ、安定供給と脱炭素化を同時に実現するソリューションとして期待が集まる。

シーグリーンフェーズ1洋上風力発電所の洋上変電所


ビジョン実現に向けた挑戦 グローバル事業がCNの要

キューデン・インターナショナルが24年1月から出資しているViridor社は、英国全域に11カ所の廃棄物処理・発電プラントを保有し、同国最大級の事業者として長年にわたり確固たる地位を築いている。

ロンドンにある英国法人

同国の廃棄物処理・発電プラントが燃焼する廃棄物には化石由来燃料が含まれているため、作られる電気は完全にCO2フリーとはいえない。しかし途上国を中心に、廃棄物処理は埋め立てが主流である国も多く、メタン発酵による温室効果ガス発生が避けられないことから、馬場法人長は「完全にCO2フリーではないにしても、燃焼時に回収する熱の有効活用、不衛生な処理方法の解消、温室効果ガスの削減などメリットは大きく、社会的意義が大きいプロジェクトと捉えている」と話す。それに加えて、九電グループが有する国内の廃棄物発電の運用知見や国内外の火力発電所での経験を活用することができるため、優位性が発揮できる事業領域でもある。

また、同社は昨年2月、水素・アンモニア、再エネ、CCUS(CO2回収・貯蔵・利用)事業などの協業を検討する目的でドイツ企業と業務提携契約を締結した。こういった環境特化型の事業は日本より欧州で先行すると見込まれており、欧州の最先端で培われる知見や成功モデルを日本に還元することが求められている。

馬場法人長は「英国法人には新規プロジェクト開発のための情報収集という役割もある。今後は既存事業領域に加え、再エネ、陸上太陽光、陸上風力、蓄電池などの事業も機会があれば検討していきたい」と意気込む。

九電グループが掲げる「 カーボンニュートラルビジョン2050」は、カーボンニュートラルだけでなくカーボンマイナスの早期実現を掲げている。その達成には、今後成熟期を迎えるグローバル事業が要になるはずだ。九電グループの海外事業を担うキューデン・インターナショナルの海外拠点である英国法人には、同グループの「開拓者」として、日本からも海外からも熱い視線が注がれている。