【特集2SAF最前線】米国が主導する巨大産業化 最新の動きを現地レポート

2026年4月3日

独自技術用いた新工場稼働 幅広い原料から製造可能に

昨年11月にエネルギー企業のランザジェットが、ジョージア州で大規模な工場を稼働させた。当面はバイオエタノールから製造するが、独自技術で農業残さ、都市ごみなど幅広い原料からも製造可能という。同社はこれまで年3万4000㎘の製造能力を持っているが、それが新工場で大きく増える。

同社CEOのジミー・サマルツィス氏に話を聞いたところ、「SAFというグローバル産業が生まれつつあり、その先頭に立てた。日本の皆さまの支援に感謝し、共にこの産業を発展させていきたい」と語った。同社には、米国の主要企業に加え、日本の全日本空輸(ANA)、三井物産、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)などが出資している。

SAFには課題もある。現時点で、航空燃料の値段は1ℓ当たり0・6~0・9ドル程度なのに対し、SAFは米国でその1・7~2倍程度だ。航空会社の経費の2~3割を燃料費が占めているので、その影響は大きい。

米国の航空業界団体の幹部に取材した。脱炭素の取り組みでは、航空路の効率化などはもう限界で、SAFによる対策しか手段はないという。ただし顧客は安い運賃に流れがちで、全ての航空会社がSAFを利用しなければ、航空運賃に差がついて、乗ってもらえなくなるという難しさがある。「SAFの需要と供給が共に増えれば価格は安くなり、またそれが安定するだろう。SAFの使用を各国の航空会社に働きかけたい。日本政府や航空会社にも協力を期待している」と幹部は話した。

製造と需要喚起の体制構築 日本はアジア市場けん引を

日本の官民はSAFの利用拡大を計画している。経済産業省と国土交通省、そして石油会社、航空会社は「持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会」を22年に立ち上げた。この中で30年までに、国内航空会社の燃料使用量の10%をSAFに置き換えることを目標としている。

24年1月時点の推計では30年の国内SAFの需要量は、国内のジェット燃料使用量の10%(約172万㎘相当)の見込みだ。一方、石油元売りなどが設備を建設・計画中で、現在国内で年数万㎘の生産量が30年には国内で年約192万㎘となる見込みだ。ただ、原料確保や技術開発などの不確実性があり、生産量は不透明だ。量の確保には外国産のSAFを一定量使うことになりそうだ。

バイオ燃料に関わってきた日本環境エネルギー開発の澤一誠社長に、見通しを聞いた。澤社長は日本が主導して「アジア・バイオマス・コミュニティ」という、生産と需要喚起の協力関係を作ることを提唱している。「日本と東南アジア諸国はバイオ燃料の普及がまだ途上だ。米国やアジアの国を巻き込み、多国間の製造と需要喚起の体制を日本が官民協力で作る価値はある」という。トランプ大統領に望まれて行うのではなく、日本からビジネスの体制を作り、国益と世界の脱炭素に貢献するという夢だ。

生産と需要喚起の一体整備が必要になる

2月末に始まったイランと米国・イスラエルの紛争をきっかけに、原油価格が一時1バレル110ドル台にはね上がった。日本が原油を中東に依存することの危険性が改めて露呈している。バイオ燃料、SAFという新しいエネルギー産業が作られつつある。制度設計を適切に行えば、無資源国であることに苦しみ続けた日本経済の姿を変えられるかもしれない。それを担うのは、現代日本のエネルギー産業だ。

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