【電力中央研究所 平岩理事長】課題を科学で捉え技術で解を示し、未来を支えていく
1951年の創立以来、科学技術研究を通じて、
経済社会の発展を支える電気事業に貢献してきた。
エネルギーを取り巻く環境が急速に変化する今、
求められる技術は増え、研究領域は広がる一方だ。
今後もエネルギーの安定供給を研究力で支えていく。
【インタビュー:平岩芳朗/電力中央研究所 理事長】

井関 衆院選で自民党が圧勝しました。高市早苗政権のエネルギー政策をどう見ていますか。
平岩 エネルギー政策を国家安全保障の中核に位置付けるという方針を高く評価しています。原子力発電の活用拡大や、国内技術を活用した再生可能エネルギーの推進、サプライチェーンの多様化などを打ち出したことは、エネルギーの長期的な安定供給と自給率向上に資するもので、国益の観点からも重要です。当所としても、これらに資する研究を着実に進めていきます。
井関 原子力政策は期待が大きいのではないでしょうか。
平岩 原子力発電の活用に関し、原子力規制委員会により安全性が確認された原子炉の再稼働加速や、廃炉を決定した事業者の原子力発電所サイト内での建て替えに向けた次世代革新炉の開発・設置など、将来技術までを見据えて国民に目指す方向性を明確に示していることを評価しています。
DC電力需要の衝撃 問われる系統の安定
井関 世界的にAIの開発や活用が進むなか、データセンター(DC)による電力需要の急増が見込まれています。
平岩 特に米国の動きを注視しています。米中のAI覇権争いの中で、巨大テック企業などが巨額の投資や契約を行い、DCの建設ラッシュとなっています。膨大な電力需要増加が見込まれ、電源確保や電気料金の高騰などが課題です。わが国で同程度の状況が生じるかは分かりませんが、研究機関として海外の先行するトレンドをウォッチすることは重要です。
井関 具体的にどのような課題がありますか。
平岩 DC事業者が早期建設を望む一方、送配電網などのインフラ整備には数年以上かかるといったギャップが問題になっています。DC事業者が複数の送配電事業者と接続交渉を行い、最初に認められた案件でDCを建設し、他の交渉をキャンセルすることなどにより実際の需要を見極めることが難しくなる、いわゆる「ファントム需要(幻の需要)」の問題もあります。
井関 インフラ投資の費用負担についての議論も必要ですね。
平岩 DCは事業の動きが速く、短期間での事業規模縮小や技術革新により個別DCの電力需要が想定を下回る可能性もありますが、送配電網などの整備には多額の投資が必要であり、費用を誰が、どのように負担するかという議論は重要です。わが国では、経済産業省の次世代電力系統ワーキンググループにおいて、送配電網の効率的・合理的な設備形成と費用負担の在り方などについて議論が進められていると認識しています。
井関 系統の安定性にも影響を与えます。
平岩 米国の規制当局は大規模需要であるDCに対し、系統事故時に系統から離脱しないような規制措置を検討しています。わが国は太陽光発電などインバーター電源の増加により慣性力などの系統安定化機能を有する同期電源の系統連系が減少しており、DCのような大規模需要が電圧変動などの系統じょう乱に反応して一斉に切り離されると、系統全体の安定性が低下する恐れがあります。
複数のDCにワークロード(計算処理)を分散させ制御することは合理的ですが、それが急激な潮流変化をもたらすことも考えられ、系統運用者との協調が欠かせません。わが国では審議会などで大規模需要の柔軟性(フレキシビリティ)の活用が論じられていますが、系統の安定性維持に向けて、DCなど大規模需要者と系統運用者が各々の運用実態や課題認識についてお互いに理解を深め、解決策を探るためのコミュニケーションが必要と考えます。
井関 電中研としての具体的な取り組みはありますか。
平岩 米国などのDCの導入と運用に関する調査などを行っており、わが国で求められる事業者間連携の姿についての議論に貢献できるように準備を進めています。今年1月に、EPRI(米国電力研究所)が主導する「DCFlex」に研究機関として参画し、議論に加わり始めました。巨大テック企業や規制当局、電力会社など多数の関係者が参画し、DCの柔軟性活用などについて実証などを踏まえた議論を行っており、先行する米国の現状をいち早く吸収していきたいと考えています。


