【電力中央研究所 平岩理事長】課題を科学で捉え技術で解を示し、未来を支えていく
広がる研究領域 深化する技術基盤
井関 火力分野に関する研究事例はいかがですか。
平岩 脱炭素燃料の利用に対応する保守技術を開発しています。例えば、バイオマスは貯蔵時の自然発熱や運搬時の粉じん爆発のリスクがあり、これらの未然防止に向けて、発熱メカニズムの解明や、臭い・ガス成分に着目した貯蔵時の発熱を早期に検出する監視技術などを開発しています。また、再エネ導入拡大に伴う火力発電の運用変化に対応する研究として、頻繁な起動・停止や出力変化時のプラント動特性を評価する技術の開発や、熱疲労や水・水蒸気系統の水質悪化が機器劣化に及ぼす影響評価に関する研究などを行っています。
井関 再エネはいかがですか。
平岩 地熱に関しては地熱貯留層の調査・探査技術の合理化に向けた地熱貯留層モデルの精緻化や、超臨界CO2を用いた新しい発電システムを開発しています。後者は地下からの熱抽出量を増やし、タービン発電機のコンパクト化にもつながる可能性があります。
井関 風力ではブレード損傷を巡る興味深い研究もありますね。
平岩 風車の大型化に伴いブレードの周速度が増すことにより、雨粒の衝突による損傷が深刻な問題になっています。損傷要因であるエロージョンの事前評価と損傷リスク低減対策を目的に、数値解析手法を構築しています。
井関 系統運用分野についても教えてください。
平岩 系統の慣性をエリアごとに推定する技術を開発しています。PMU(Phasor Measurement Unit:同期フェーザ計測装置)を活用した実系統の慣性推定の実現に向けて、実機PMUを用いた実系統に近い試験環境での開発技術の検証を「系統監視・制御検証用シミュレータ」で進めていきます。また、再エネ大量導入や広域連系拡大による直流連系設備の増加に伴い、今後発生が懸念される、インバーター機器と系統設備の相互作用による異常振動現象を対象とした安定性評価手法などの系統解析技術を開発しています。



