【電力中央研究所 平岩理事長】課題を科学で捉え技術で解を示し、未来を支えていく

2026年4月1日

井関 こうした最先端の研究成果を、どのように社会に還元していきますか。

平岩 研究の取りまとめで終わらせず、その成果を社会実装することが重要です。そのプロセスは当所だけで完結できるわけではありません。研究資金の提供機関やものづくりを担うメーカーなど、段階に応じたさまざまなパートナーとの連携を通じ、研究成果の事業化に取り組んでいきます。国の審議会や学会で、研究から得られた客観的知見に基づく発言や発表を行うことで問題を共有し、検討を促していくことも大切です。当所研究員は国内のエネルギーや電力関係の規格・基準の策定にも関わっており、最近では鉄塔設計基準の大幅な改定に貢献しました。また、わが国のエネルギー安全保障や産業界の利益に貢献する国際規格・基準の策定や標準化活動の議論などにおいて中核的役割を果たし、国際貢献と国益につながる合意形成を主導することも重要です。

井関 情報発信はいかがですか。

平岩 研究成果の発信も強化します。優れた研究成果を英文学術論文に積極的に投稿し国際的プレゼンスを高めるとともに、海外の研究機関などとの連携を深化します。分かりやすい情報発信を心がけ、SNSや動画の活用にも積極的に取り組んでいます。当所のホームページに掲載した動画などのコンテンツをXで紹介した際に、インフルエンサーが気づいて広めてくれたこともあります。雷実験の動画は、発雷期にテレビを含め多くの媒体で活用されています。

創立75周年の節目 新たな歴史を築く

井関 次世代層への教育や広報活動についてはいかがですか。

平岩 研究所公開や近隣の小学生などの見学受け入れ、外部機関主催の工作教室に協力し、当所の研究活動やエネルギーへの理解促進に継続的に努めています。また、昨年の大阪・関西万博では電力館の屋外ステージでサイエンスショーを実施し、多くの方に見ていただきました。

井関 今年は電中研にとって75周年という節目の年です。

平岩 先人が紡いできた研究開発の歴史と努力の蓄積があって今日があります。当所の創設者である松永安左ェ門が「科学の進歩は累積と推理に由り、無限の発展を遂げる性質のもの」としたとおり、当所が果たすべき使命に終わりはなく、不断の努力によって次代に引き継いでいきます。技術や社会環境が急速に変化し、未来を見通すことが難しい今日、新たな研究課題にも果敢に挑み、エネルギーの未来を切り拓く研究成果を創出し続け、伝統ある研究機関としての新たな歴史を築いていきたいと思います。

井関 ありがとうございました。

対談を終えて
電力システム改革の進展に加え、DX・GX時代の本格到来という時代の変化にさらされる電気事業。どれだけ自由競争や脱炭素化が進もうとも、電気は国家の活動を支えるライフラインの一丁目一番地。根幹である安定供給が揺らぐことがあってはならない。電力システムが複雑化する中、平岩理事長が言う「生身の電力システム」をいかにうまくコントロールしていくか。75周年を迎えた電中研の取り組みに期待がかかる。(聞き手:井関晶/本社社長)

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