【特集2SAF最前線】長期的な視野で原料・製品の確保へ 国内農産物の新規需要開拓を

2026年4月3日

SAFの製造と社会へ実装していくには何が必要か。横山伸也・東大名誉教授に今後の展望などを聞いた。

インタビュー/横山伸也(アメリカ穀物バイオプロダクツ協会 顧問東京大学名誉教授)

―SAFの利用が始まろうとしています。


横山 航空燃料の脱炭素化を考えた時に、SAF以外に温室効果ガスの排出を大幅に減らせる方法は現時点で見当たりません。航空燃料は空の過酷な状況でも品質を維持し、安全性を確保しなければなりません。


―SAFには廃食用油などから作るHEFA(へファ:Hydrogenated esters and fatty acids)とバイオエタノールから作るATJ(アルコール・トゥ・ジェット)があります。


横山 HEFAのメリットは、現時点では原料となる廃食用油が安いことです。国内企業が「天ぷら油で空を飛ぶ」とPRし、一般向けのイメージも良い。しかし、原料の調達が難しい。国内の廃食用油は事業用からは年間で約40万㎘、家庭用からは約10万㎘です。また、事業用の廃食用油の9割以上が飼料用油脂原料や工業用途で使用されており、さらに一部が輸出され利用は限定的です。輸入廃食用油の価格高騰も見込まれます。代替として大豆油、菜種油、パームオイルなどが有力です。家庭の廃食用油は、収集に手間暇がかかり大きな供給源として期待できません。


 ATJは原料となるエタノールを米国、ブラジルが大量に生産しています。現状は、これらの国々からの輸入に頼らざるを得ません。ただしエネルギー安全保障の観点から、SAFの製造で他国に依存しすぎるべきではありません。わが国には、米、サトウキビなどのデンプンや糖分を含む農産物があります。米は余剰であっても単に減反するのではなく、新たな需要を開拓すべきで、これは食料の安全保障にもつながるものと考えます。

増産と原料供給の環境整備 企業・政府が協力する体制に

―将来的のSAFの製造はどのようにすればよいでしょうか。


横山 一つの技術や製法に偏るのではなく、多様な製造法を確保するべきでしょう。ただし目先は量を確保しなければなりません。外国から調達しながらSAFの増産を図り、同時に原料供給体制などの環境作りを官民共同で進めるべきです。


 国内での穀物原料生産はコストが高く難しいですが、長期的な視野から試みるべきでしょう。またアジア諸国で、原料調達と燃料製造を日本の企業、政府が協力しながら行うなど、原料や製品確保の確実性を高める取り組みが必要です。SAFを適切な価格で、安定的に作る方法を、官民と消費者が一緒に考えていくべき時です。

よこやま・しんや 北大大学院化学専攻博士課程修了、工業技術院(当時)入所。東大農学生命科学研究所教授、鳥取環境大学教授として、環境教育などに従事。