【特集2 分散型エネルギー事情】水素の供給量に合わせた空調運転実現へ 大阪ガスなどが仕様検討進める

2026年7月3日

脱炭素化を実現するには、都市ガス業界が導入を目指すe―メタン(合成メタン)のほか、水素やアンモニアといった多様なカーボンニュートラル(CN)燃料に対応する機器やソリューションの準備が急務だ。こうした中、大阪ガスとDaigasエナジー、パナソニックの3社は、昨年8月に技術開発と製品評価の完了を発表した業界初の「水素および都市ガス混焼対応吸収式冷温水機」の商品化に向け、仕様の検討を進めている。


水素と自然冷媒によるカーボンフリー空調を実現できるとあって、発表後には企業などから大きな反響が寄せられた。今年6月には、電気需要最適化に資する優れた機器やシステムに贈られる「令和8年度デマンドサイドマネジメント表彰(DSMA)」(ヒートポンプ・蓄熱センター主催)の機器部門で優秀賞を受賞した。NOX低減技術が水素活用の発展に大きく貢献できる点や、既存機への水素・都市ガスの燃焼部の後付け可能であるといった先進性が評価されたのだ。

DSMA表彰式に臨む関係者ら

精緻な制御技術を確立 混焼率に応じ空気を供給

グリーン水素を生成する上で欠かせない再生可能エネルギー由来の電気は、天候に左右されやすく、それによって供給できる水素量が変動してしまう。同製品の特長は、将来的にカーボンニュートラルな水素の供給量や価格が見通せない中で、水素と都市ガスの混焼率を調整することで、その状況下に合わせた適切な燃料を選択し、安定した冷暖房を提供できる点にある。それを可能にした技術の要が、パナソニックの「低NOXバーナ技術」と、Daigasエナジーの「燃焼制御技術」だ。


水素は都市ガスに比べて燃焼速度が約6倍と極めて速い。そのため、そのまま燃焼させると局所的な高温が発生し、NOXが基準値を上回ってしまうことが導入する上での大きな課題だった。


そこでパナソニックは、燃焼後の排ガスを再利用することで水素を燃焼しにくくし燃焼速度を抑える構造を採用した「低NOXバーナ」を開発。局所的な高温の発生を防ぐことで、水素専焼時であっても、NOXの排出量を都市ガス専焼時と同等以下に抑制する。


一方のDaigasエナジーが手掛けたのは、独自のデジタル燃焼制御システム「Dr.Flame(ドクターフレーム)」の技術を応用した、精緻な流量制御技術の確立だ。冷暖房の出力変動に伴い燃焼量を変える際、水素と都市ガスの混焼比率ごとにNOX値を基準値以内に収めるための適切な空気の割合は変動する。混焼率に応じた水素と都市ガスの流量、そしてその混合率に応じた最適な空気量を適切にコントロールしなければならない。


空気量のコントロールには「リンケージ方式」と呼ばれる従来技術が用いられることが多いが、使用範囲の全領域で精密にコントロールすることが難しい。この問題を克服するため、同社が着目したのが、流量を制御する弁の前後の「圧力差」だ。開発を担当したビジネス開発部技術開発チーム燃焼技術開発グループの神谷一彰チーフは、「弁の前後に圧力計を設置しその差を検知することで、流量計なしで適切な制御が可能になった」と、ポイントを説明する。

混焼率に合わせ空気比を適切にコントロールする

既存機をアップデート可能 リスクなくCNに対応

3社は現在、市場へのヒアリングを重ねながら、商品化に向けたスペックの絞り込みを行っているところ。現段階では水素インフラがどのような規模、スピード感で導入されていくかを見極めることは難しい。技術開発チーム空調・業務用開発グループの金内健チーフは、「まずは副生水素を活用できる工場などでの導入を見込んでいる」とし、「現在、商品化時期の検討を進めている」と明かす。


大型機器を導入してしまうと、水素供給が滞った際のリスクが高く、顧客企業にとって大きな投資負担となってしまう課題もある。その点、本体を丸ごと買い替えるのではなく、既存の都市ガス対応の吸収式冷温水機に、バーナや燃焼制御ユニット、燃焼制御盤といった燃焼関連部品を追加・交換するだけで、水素混焼・専焼機へとアップデートできるようにする本開発は、企業の低リスクでスムーズな水素運用を後押しする意義は大きい。

燃料関連部品の追加・交換のみでアップデートが可能だ


都市ガスへのe―メタン導入によりCNを目指す大阪ガス。その移行期における水素活用のニーズに向け、 同製品の開発を進めてきた。技術開発チームの山下祥史マネジャーは、「社会全体で CNの実現に向かっている中、その移行期においても水素をはじめとした多様な燃料に対応可能な技術開発を進め、貢献していきたい」と、次のステップを見据える。