【コラム】2026年度前半の政策・制度設計の振り返り

2026年9月2日

加藤 真一/エネルギーアンドシステムプランニング副社長

2026年度も9月に入り、もう少しすれば年度の折り返し地点を迎える。今年は、1月の衆議院解散と総選挙の実施、それに伴う特別国会の開催と会期末延長、2月末からの中東情勢悪化と調達安定化対応、高市政権初の経済財政をはじめとした各種政策の閣議決定、そして今般の熊本地震や各地での大雨被害など、例年に比べて動きのある年となっている。

電気事業をはじめとするエネルギー政策については、4月、5月の審議会の開催状況は比較的低調であったが、6月以降、ドライブがかかり始め、通常の年度同様の流れに戻りつつある。今回は、26年度の前半のエネルギー関連の政策・制度設計の動きをダイジェスト版的に振り返る。

中東情勢のひっ迫を受けた対応は継続

石油の国家備蓄放出や民間備蓄日数の引き下げ維持、石油製品などの代替調達、サプライチェーン上の目詰まり対策などの対応は継続して実施しているところだ。特に、調達先の多角化は一定の効果を発揮している。

LNGについてはホルムズ海峡経由の輸入割合は5~6%ほどだが、利用節約のため、非効率石炭火力発電に課せられている容量市場の稼働抑制措置を今年度限定で適用外とし、端境期(春秋)の稼働を容認している。実際の効果については、今後、検証が求められる。

また、エネルギー政策を巡る状況を踏まえ、あらためてエネルギー安全保障の重要性を確認したところであり、今般の事象を踏まえ、今後取るべき方向性として、①地政学リスクへのさらなる備え、②強靭な供給力確保、③安定的な電気料金実現のための環境整備という3つの論点が提示されている。今般同様のリスクは今後も起こり得ることから、足元で行っている施策だけでなく、中長期で燃料調達の安定化を図る策も同時に検討し始めている。これは日本が、その大宗を海外からの輸入に頼っている重要鉱物などの資源についても同じである。

また、新たに石油などの供給構造を強靭化するためのワーキンググループを立ち上げ、サプライチェーンの強靭化などの検討が進められ、その中で、原油などの調達多角化の課題として、輸送日数の長期化やパイプラインの利用に伴い、平時には輸送費などが増加することから、特定のチョークポイントを経由しない原油・ナフサの輸入にかかる安定的な輸送確保に要する費用を支援する新たな仕組みの導入が提示されている。多角化に取り組む事業者に交付金による支援を行い、それに必要な原資は原油・石油製品の輸入事業者からの納付金により充当するものとなっている。

GXの灯は消さず、その取り組みは地域も巻き込んだ施策へ

昨年2月に閣議決定されたGX2040ビジョン、第7次エネルギー基本計画、そして改正地球温暖化対策計画をベースに、危機管理投資と成長戦略投資を兼ね備えた日本成長戦略が閣議決定された。17ある重要分野、62の主要の技術・製品などの現状・課題、目指すべき姿(目標)、基本戦略(勝ち筋)、官民投資額と経済波及効果などを整理した官民投資ロードマップが提示された。エネルギーに関するところでは、クラウド・データセンター、蓄電池、次世代型太陽電池、水素等、グリーン鉄、洋上風力、次世代型地熱、次世代革新炉、GXケミカル、フュージョン・エネルギーが含まれているが、いずれも、これまで関連審議会などで議論・審議・整理されてきた内容が踏襲されているものとなっている。

産業の発展・成長とエネルギー安全保障・電力安定供給はセットで考える時代となり、必要なインフラ整備も同時に進めていかなければならない。その意味で、GX2040ビジョンにある産業立地施策がそれを具現化し得るものになると考えられ、新たに創設した「GX戦略地域制度」の3類型(コンビナート等再生型、データセンター集積型、脱炭素電源活用型)の第一次審査が行われ、有望地域(地域単位)が選定された。現在、計画の精査・ブラッシュアップを行っているところであり、8月末に行われたGX実行会議の資料をみると、近日中に選定が行われると記載されていることから、9月には最終選定が行われると見込まれる。

また、企業単位では「GX地域共創補助金」の公募が始まった。地域にある脱炭素電源を活用し、地域に貢献する製造業やデータセンターの設備投資に補助金を出すもので、開催された説明会を見ても、その質問の多さなどから関心の高さが伺える。また、エネルギー事業者にとっては脱炭素電源の供給要望が需要家から出ることが予想され、内外無差別の卸売の在り方も含めた対策が必要になると考えられる。関西電力が原子力発電を使ったオフサイトコーポレートPPAの相談窓口を開設したが、とりわけ福井県嶺南地区での供給を念頭に置いているとみられ、今後の動きに注視したいところである。

さらに、地域未来戦略では、国がインフラ整備を支援する全国10ブロックで戦略産業クラスター計画の策定が進められ、17分野が選定されている。北海道・東北・九州では洋上風力クラスターが形成される予定で、洋上風力産業のサプライチェーン強靭化の一助となることが期待される。

その他、GXリーグから変更したGXフューチャー・リーグの受付が終了し2600を超える企業が参加することになったこと、GX需要拡大のためGX率先実行宣言の見直しによるメリハリある取り組みの拡充に向けた検討が進められるなど、曖昧模糊な感じで始まったGXについて、少しずつ姿形が具現化し始めている。

中東情勢を踏まえた化石燃料の調達多角化と化石燃料依存からの脱却等を盛り込んだエネルギー需給構造の強靭化対策パッケージ(通称、パワーGX)が提示され、年末までの戦略策定、次期国会への関連法案提出(おそらくGX推進法の改正)が行われる予定となっている。

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