【特集2 ガス転換の潜在力】 システム改革を次の段階へ 都市ガス業界挙げ安定供給とGX対応を強化
LNG導入以降、天然ガスへの燃料転換を着実に進めてきた都市ガス業界。
ガスシステム改革の検証結果を振り返り、CN実現に向けた展望を聞いた。
インタビュー/内田高史(日本ガス協会会長)
―8月にとりまとめられたガスシステム改革の検証結果をどのように受け止めていますか。
内田 小売り全面自由化や導管部門の法的分離など、一連の制度改革が進められてきました。自由化が進展した現在においても、安全・安心かつ安定的なエネルギー供給は、都市ガス事業者が長年にわたって受け継いできた使命であり、その価値は今後も変わりません。
一方で、ガス事業を取り巻く環境は大きく変化しています。
今回の検証で整理された①安定供給の確保、②GX社会への貢献、③適正な取引環境の確保―という対応方針を踏まえ、全国のガス事業者が志を一つにして、持続可能なガスシステムの構築を着実に進めていきたいと考えています。
―制度面では、どのような点が重要になりますか。
内田 安定供給やGXの担い手として、事業者が必要な投資を着実に進められる環境が欠かせません。今般、託送料金について適切に費用回収できる料金制度の在り方が整理されました。
また、保安分野においては、将来的な担い手不足を見据え、スマート保安の導入・普及を進める必要があります。新技術導入の好事例を全国の事業者に水平展開し、保安・レジリエンスの強化と業務効率化につなげていきます。
熱需要の脱炭素化を推進 産業競争力維持にも貢献
―対応方針の中の「GX社会への貢献」も大きなテーマです。
内田 天然ガスへの燃料転換やその高度利用が、わが国のGXに資する重要な柱であることが国の政策の中で位置付けられました。民生・産業用エネルギー消費の約6割を占める熱の脱炭素化が求められる中、足元で石炭や石油系燃料から天然ガスに転換することは、CO2削減の手段として費用対効果が高く、実効性があります。そのため、産業競争力を維持・強化しながら、CO2累積排出量を減らすことが可能です。
―燃料転換には、どのような意義がありますか。
内田 LNGは、調達地域の多様化により、ホルムズ危機の際も安定的に調達を継続することができました。こうした天然ガスに足元で燃料転換を行った上で、将来的には、e―メタンやバイオガスによる都市ガスのカーボンニュートラル(CN)化を進めます。既存インフラを活用して供給することで、追加的な社会コストを最小限に抑えながら、社会全体のCN実現に貢献します。
さらに、ガスコージェネレーションシステムは、需要地で発電するとともに排熱を有効利用することで高いエネルギー効率を実現します。CO2削減に加え、停電や災害時の事業継続につながるレジリエンス性にも優れています。
データセンターなどによる電力需要の増加、老朽火力発電所の稼働停止による供給力不足が社会課題となっています。こうした中、国内に設置されている600万kW超のガスコージェネの重要性は、今後さらに高まると考えています。
―これまでの成果をどう見ていますか。
内田 日本にLNGが導入されてから半世紀以上、都市ガス業界を挙げて産業分野を中心に天然ガスへの燃料転換やガスコージェネの導入を進めてきました。その結果、産業分野における約200億㎥の都市ガスの普及とCO2累積排出量の削減を実現しています。
その一方で、地方を中心に燃料転換のポテンシャルは少なくとも年間32億㎥ほど残っています。今後、さらなる燃料転換を進めていく必要があります。

価格差と投資負担が課題 国や自治体の関与が重要
―燃料転換の推進に向けた課題は何でしょうか。
内田 大きくは、燃料コストと投資負担です。石炭を使っている場合には燃料コストの差、またA重油を使っている場合には、設備・工事費の高さが課題になるケースが多いようです。
お客さまが前向きに投資判断できるよう、国には「燃料転換はGXに資する」というメッセージを明確に発信し、自治体には施策や計画に反映していただくことが求められます。
実際に、自治体が燃料転換をお客さまに直接働きかけたり、ガス事業者と連携することで、お客さまの予見性が高まり、燃料転換が実現した事例があります。お客さま、国や自治体、ガス事業者など、全てのステークホルダーが燃料転換の意義を共有することが重要だと考えています。
―最後に、今後の都市ガス業界の方向性をお聞かせください。
内田 2025年6月に策定した「ガスビジョン2050・アクションプラン2030」については、CO2排出抑制、保安、都市ガスのCN化などの取り組みが順調に進んでいます。海外産e―メタンなどの輸入調達に向けた要件・ルールの整備、CN関連技術の開発とともに、燃料転換などによる省エネや天然ガスシフトを加速しているところです。
先般の熊本地震や千葉豪雨では地域を超えた相互支援体制によって、業界一体となり早期復旧に取り組みました。今後もエネルギーの安定供給と災害対応を継続しながら、将来に向けた都市ガスのCN化に挑戦していきます。



