【フォーラムアイ】電中研が創立75周年記念シンポジウム開催 エネルギーを社会の豊かさにつなぐ
【電力中央研究所】
電力中央研究所は11月12日、「エネルギー未来シンポジウム2026」を開く。
シンポジウムで個別報告を行う西尾健一郎副研究参事に話を聞いた。
―今回のシンポジウムの概要を教えてください。
西尾 シンポジウムは、社会やエネルギーを取り巻く環境が大きく変化し、不確実性が増す中、エネルギーをどのように社会の豊かさにつなげていくかを、多くの方々とともに考えることを目的に企画しました。資源調達など足元の課題に対応しつつ、将来への準備も進める必要があるとの問題意識から、「サステナブルなエネルギーで支える安全で豊かな社会へ」をテーマに掲げています。

にしお・けんいちろう 2002年東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻修士課程修了。同年、電力中央研究所入所。25 年同研究科建築学専攻にて学位取得。博士(工学)。
人口減少や気候変動に対応 将来への選択肢を考える
―電力中央研究所が今、こうしたテーマを取り上げる意義についてお聞かせください。
西尾 例えば、AIの普及などで電力需要が再び増加する可能性が指摘されている一方、総人口や労働力人口が減少する中、電力インフラをどう維持するかは、これまで経験したことのない課題です。気候変動についても、温暖化対策に加え、自然災害が激甚化する中で、エネルギーと社会の関係をどう考えるかという視点から議論できればと考えています。今回はそれに加えて電気の利用を暮らしの豊かさや産業・経済の発展にどのようにつなげていくかという論点を提示する予定です。
―西尾さんご自身の個別報告のテーマを教えてください。
西尾 シンポジウムでは複数の個別報告を設けます。その中で私は需要と供給をテーマに報告します。需要側では、省エネルギーが引き続き重要であり、中東情勢など現在のエネルギー情勢を踏まえれば、化石燃料への依存度を下げる必要もあります。
また、快適性や利便性の向上、産業競争力の強化など、暮らしや経済活動を支える「手段」である電気の幅広い価値と意義について考えます。供給側では、電源や送配電設備の新設に必要な投資を進めるとともに、既存設備をいかに維持・活用するかが課題です。電力設備の整備には長いリードタイムを要しますが、データセンターのような大規模需要が比較的短期間に立ち上がる場合、需要の増加と設備整備の時間軸にずれが生じることが課題となります。こうした需要側と供給側の双方の課題について扱う予定です。
一層難しい投資判断 既存設備の長期活用も重要
―そうした事業環境の変化・複雑化に、社会や電気事業者はどう対応すべきでしょうか。
西尾 長期的には、社会に必要なサービスを持続的に提供するため、将来の変化や不確実性を踏まえ、複数の選択肢を確保することが重要です。そのためには、新たな技術の導入も不可欠です。設備の更新などには多額の費用を要するため、各対策の効果と、それに要する費用を適切に評価することが肝要です。
―今後のエネルギー供給を考える上では、激甚化する災害への対応も重要です。
西尾 自然災害への対応では、エネルギーのレジリエンスを高める必要があります。災害が激甚化する中でも、社会に必要なサービスの水準を維持できる体制を整えなければなりません。これは交通、水道、通信など、社会を支えるあらゆるインフラに共通する課題です。中でもエネルギー供給は、他のインフラや社会活動を支える基盤であり、特に重要です。レジリエンス向上には、複数の選択肢を確保しながら、リスクも考慮して意思決定を行う必要があります。
―来場者に特に注目してほしいポイントや、受け取ってもらいたいメッセージはありますか。
西尾 シンポジウムでは、これまでの歴史から学びつつ、今後考えていくべきことを提示します。将来に向けた選択肢をどう確保していくか、皆さまが検討する際の手がかりとなるような報告ができればと考えています。
TOPICS
研究開発の歴史の中で輝く エコキュート
電力中央研究所の代表的な成果の一つが、家庭用自然冷媒CO2ヒートポンプ給湯機「エコキュート」の開発だ。環境負荷の小さい自然冷媒であるCO2に早くから着目し、基礎研究を開始した。この成果を基に、東京電力、デンソーとの共同研究を進め、2001年に世界で初めて家庭用CO2冷媒ヒートポンプ給湯機の商品化につなげた。
エコキュートは、空気中の熱を冷媒に取り込み、圧縮して高温にした熱でお湯を沸かす仕組みで、消費電力の3~4倍相当の熱を得られる。給湯は家庭のエネルギー消費の約3割を占める。
発売後は省エネ性能が評価されて普及が進み、2024年度末には国内累計出荷台数が1000万台を突破した。近年は太陽光発電の余剰電力を使って昼間に沸き上げるモデルも登場し、普及に弾みがついている。
当所はこうした研究で培った知見を生かし、家庭用にとどまらず、工場などで使用される産業用ヒートポンプの開発にも取り組んでいる。日本が開発をリードしてきたヒートポンプ技術は、欧州をはじめとする諸外国でも、地球温暖化対策や脱炭素化に貢献する省エネルギー技術として注目され、導入拡大が期待されている。



