【フォーラムアイ】四国電力送配電がAIでカラスの営巣検知 停電事故防止と撤去作業を効率化

2026年11月8日

四国電力送配電は、営巣検知AIと撮影機材をパッケージ化したシステムを開発し、実用化した。

巡視人数を従来の2人から1人に削減。今後導入エリアを拡大していく予定だ。

 四国電力送配電は、NTTドコモソリューションズが提供する営巣検AI「Deeptector」を活用したカラスの営巣検知システムをNTTドコモソリューションズと共同開発した。これにより、供給信頼度を維持しつつ、営巣巡視員の数を減らすなど業務効率を大きく改善できるようになった。

中にはカメラ2台とドライブレコーダーを格納

同社が管理する配電線は総亘長約4万6000㎞に及ぶ。カラスが配電設備に営巣する際、木の枝だけでなく、ハンガーなどの金属類も使っている。この営巣材が高圧電線に接触するとショートや漏電が起き、変電所の安全装置が作動して停電が発生する。こういった安定供給を脅かす営巣トラブルを防ぐため毎年春に大規模な営巣巡視を実施し、年間約2万個を撤去してきた。しかし、この巡視・撤去には膨大な労力を要するため、AIを活用した営巣検知システムによる課題解決が進められてきた。

同システムでは、帰所後に車載カメラが捉えた配電線の映像から、AIがカラスの巣の有無を判定。撤去業者へ通知する指示書を自動作成し、迅速な現地対応へ直結する仕組みを構築した。従来の巡視は運転手と目視要員の2人体制だったが、目視の自動化により、運転手1人のみでの巡視が可能になった。安定供給と現場の省力化という二つの大命題をデジタルの力で両立させる抜本的な業務改革だ。

3万枚の営巣画像を学習 必要機材をパッケージ化

配電部設備グループの河邊泰斗副リーダーは「一連の開発から実用化を通じて最も苦労した点は、高い検知率を維持することだった」と語る。カラスの巣は完成前後で形状が大きく変化する。また、背景や天候によっても見え方が異なる。そのため、実際の営巣画像を3年間収集し、完成した巣や作成途中の巣、枝、ハンガーなど、多様な営巣の形状パターンをAIに認識させた。また、天候や背景の違いを考慮した学習や、変圧器や樹木といった誤検知しやすい対象も学習。合計約3万枚の画像を用いた学習により、実運用に耐え得る精度まで改善した。

営巣撮影器具の開発については、グループ会社の四国計測工業と協力し、何度も試行錯誤を重ねた。開発当初、撮影機材は車内に設置していたが、カメラの角度調整や複雑な配線作業が運用面での足かせになっていた。また、フロントガラス付近には小型のカメラしか設置できず、画質の低さから営巣判定の精度にも課題を残していた。そこで、車上に搭載可能な営巣撮影器具を開発し、機材のパッケージ化を図った。

特にカメラの設置には細心の注意が必要だった。カメラは車の走行中に道路両側の電柱を動画撮影し、営巣の有無のほか、ドライブレコーダーの情報を基にした電柱番号の検知にも必要なためだ。そこで、高画質な動画撮影が可能なミラーレス一眼カメラを採用し、道路両側の電柱を正確に撮影できる角度でカメラを固定したほか、高性能カメラの長時間にわたる駆動に伴う発熱を抑えるため、ファンによる強制空冷機能を搭載した。さらに、逆光による視認性低下を防ぐフード機構を設けることで、撮影画質と判定精度を高めた。

また、巡視中の突発的な降雨から機材を保護する箱状の防水構造を採用するとともに、車両のルーフキャリアへ簡単に固定できる機構を構築。機材の設置作業の省力化にも配慮し、重量を10・4kgまで軽量化したことで、一人での持ち運びを可能にした。

営巣巡視に使用している車両

映像確認時間を大幅短縮 配電知識ない人でも可能

車載カメラが撮影した動画は、SDカードを介してパソコンに取り込まれ、専用アプリにより解析される。

営巣検知後に撤去工事を速やかに行えるよう、システムには発見時刻や電柱名、営巣や道路画像、指示内容を含めた指示書を自動作成できる機能を付加した。開発当初は動画をリアルタイムで判定していたが、複雑な配線作業などの課題から撮影後にデータを一括判定する方法に変更したものの、営巣の有無を確認する画像の高画質化により1・5時間分の巡視映像を10分弱で確認できるようになった。

こうした運用効率向上を目指した取り組みにより、現場の作業負荷を最小限に抑えつつ、安定した高精度な巡視体制を確立した。

昨年2~6月に、この営巣検知システムを5事業所の車両8台に導入し、検証試験を実施した。その結果、人とほぼ同等の能力を確認できたため、巡視業務を営巣検知システムに代替可能と判断。今年、配電知識のない臨時職員を雇用し、単独での巡視運転を任せたところ、鮮明で判定に適した動画を撮影することができた。現場の検証に携わってきた香川支社配電部配電計画課の德永功副長は「当初は課題がいくつもあり、実用化は難しいのではと思ったこともあったが、今後は現場の省力化、事業効率化の改善に貢献できる」と期待を寄せる。今後も、配電部門以外の従業員の協力も得ながら、営巣検知システムの導入エリアを順次拡大していく予定だ。これにより、電力の安定供給体制を維持しつつ、現場における業務効率化に一層貢献していく。

※Deeptectorは、NTTドコモソリューションズの登録商標