【特集2】スマメ全件導入で進む変革への期待 電力データをスマートに生かす

2021年5月3日

災害からの早期復旧に貢献 IoT先進国へ前進

江田 データ利活用の最適化に資するような事例はありますか。

平井 データのやり取りは基本的にはAルートで収集され、送配電事業者の中にストックされている30分値を使っています。

 自治体向けのユースケースとしては災害対応があります。スマメデータからは需要家の位置情報や、宅内の在不在を判別できます。そのため、例えば避難警報が出た後に、そのエリアの人が避難できたかどうかを可視化できます。さらに宅内の在不在データを分析することでエリアごとの空き家率が分かるため、空き家が増加傾向のエリアなのかなど、さまざまな切り口で町の変化が分かります。

 ほかにも、不動産情報を組み合わせるとエリアマーケティングに活用可能ですし、工事現場での労務管理にスマメデータを活用することで、現場にカメラなどの機器類を設置せずとも、現場の稼働状況が把握できる可能性もあります。

渡邊 災害発生時、停電になると、電力会社は自治体や消防関係と連携して、どこが停電エリアなのか、いち早く情報共有しています。その際、病院、あるいは在宅医療で停電が生死に関わるような家などの停電状況をスマメで特定することができれば、優先的な復旧など迅速に対応できます。こうした情報連携を可能にするのが、スマメデータの利点かと思います。

 また私も携わっている地域新電力の事業目的の一つは、小売り電気事業で得た収益を地域課題の解決に充てることですが、そこにスマメデータを活用した公共性の高いサービスを組み合わせることができると考えています。例えば、地方の人口減少に伴い、公共交通機関の収益を維持することが難しくなっている地域では、利用者の予約状況に合わせて運行するオンデマンド交通の検討が行われています。そうしたサービスにスマメデータを活用できないか。つまり、スマメによる在不在が分かれば、効率的な運行、最適なルート確保ができる。そんなポテンシャルがあると考えています。

江田 確かに災害対応には有効ですよね。停電復旧は例えば全然家にいない単身の家から復旧させても意味がありません。電力データを活用するポテンシャルは大きいですね。

一色正男/神奈川工科大学 創造工学部ホームエレクトロニクス開発学科教授

一色 冒頭で触れましたが、スマメや家電にはエコーネットライトという通信規格が搭載されていて、連携できます。スマメの普及台数は国内で約8000万台が見込まれています。こうした規格がしっかりと整備されているのは世界的に見ても素晴らしいことです。

 実際、私はISOの委員に説明する機会もありますが、米国の委員もエコーネットライトの仕組みに興味を持っています。日本初のエコーネットライト規格による実証事業は海外でも進み、東京電力と東京ガスは台湾で次世代検針技術の開発を共同で行っています。

 データの利活用という点では既に志幸技研という会社がスマメのBルートデータを基に、需要家の生活を見守るサービスを提供しています。将来的に水やガスとの共同検針で他業種のデータを得られるため、より充実したサービスが普及していくことに期待します。

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