振込用紙のない新たな決済サービス 東電EPが支払い業務をデジタル化

2021年7月13日

―顧客との通信手段には、Eメールもあります。SMSの特長を教えてください。

吉本 SMSは決済に非常に適したツールと考えています。Eメールと比較してお客さまへの到達率や開封率が高く、アプリも不要です。多くの方が持っている携帯電話番号を利用しているため、ユニバーサル性にも優れています。さらに、発信者番号を固定していることで「なりすまし」を防ぐ効果もあります。

電気料金などの公共料金の決済は国民生活のインフラを担うサービスなので、安定性や堅牢性が非常に重要になります。当社は長年、通信事業者向けの通信インフラを支えてきました。大手通信事業者における7000万ユーザーのトランザクションを支えている実績があります。そのノウハウを生かし安心安全にご利用いただけるプラットフォームを提供しています。

また今回、当社グループ会社が提供する「PAYSLE」がSMS選択払いの現金払いをサポートしています。電気料金などの支払い時にPAYSLEを選択すると、専用アプリに請求情報とバーコードが届くので、紙を持ち歩くことなくスマホさえあればコンビニのレジで提示して、現金で支払うことができます。

「SMS選択払い」の流れ

決済データを分析に利用 素早く新たな価値を提供

――GMOデジタル請求サービスを普及させるための取り組みについてお聞かせください。

吉井 昨年10月に発表して以降、北海道から沖縄まで広くお問い合わせをいただいており、多くの事業者の皆さまに提供できたらと考えています。当社単独で提供するのはもとより、今回のように協業で面白いサービスを提供できたらと考えています。提供先は電力会社だけでなく、IT化が課題の水道局や自治体で決済を必要とするサービスなどでも利用してもらえたらと考えています。

また、決済データを見ると、どこで、どのような時間帯で使われたのかなど、購買行動が分かります。電気料金であれば、この情報とスマートメーターの情報を掛け合わせ、属性や行動パターンによって、どのような消費活動を行っているのかといった情報を取ることができたら面白いと思います。それを使って、例えば引っ越しした方に地域情報を提供するといった、決済以外の取り組みも展開できればと思っています。

GMOペイメントゲートウェイ
イノベーション・パートナーズ本部
第二営業統括部 統括部長
吉井 猛

――NECの取り組みをお伺いできればと思います。

吉本 当社では「NEC Smart Connectivity」というブランドを掲げて企業価値向上や、生活者の価値創造などに取り組んでいます。今後は、一社単独での価値の創造ではなく、複数の異なる業種の事業体がデータやサービスで連携することで多様な価値を社会に提供することが必要不可欠です。そのような社会を安心、安全に支えるプラットフォームの提供が、私たちの使命だと思っています。

今回の取り組みでいえば、コード決済など、多様な方式への対応が求められました。ライフスタイルが目まぐるしく変化する中で、オペレーション側が市場にどう素早く価値を提供していくかは非常に重要です。その変化の一片を切り取って内製の大型システムを個別に構築していくと、変化への追随スピードの遅れや、運用負荷の増大を招きます。お客さまの価値提供実現に向け、実績あるプラットフォームを提供するだけでなく、サービス提供企業と連携し、共によりよいサービスを創り上げていくモデルづくりに取り組んでいます。

NEC
デジタルサービスソリューション事業部
事業部長
吉本 裕

吉井 東電EPの処理品質に応えるには通信分野に長年携わるNECの技術力が欠かせませんでした。

今回の取り組みは多くの顧客を抱える東電EPのお客さまの毎月の支払いに関わる処理をしなければなりません。大規模であり、処理品質が担保できるソリューションを提供しなければならないことから協業をお願いしました。今回の成功によって、規模感は問わず対応できるようになったと思います。ほかの事業者にも同様の品質を担保して提供できます。

顧客の反応も好印象 事業者から質問相次ぐ

――SMS選択払いを利用するお客さまの反応はいかがですか。

柿原 「個人情報を持ち歩かなくていい」「簡単に決済ができる」といった好印象を持たれた感想が届いています。その半面、振込用紙のバーコードを読み取ることで利用されてきたPayPayやLINE Payなどのコード決済ができないことへのご意見もいただいています。今まで通り振込用紙の郵送を希望のお客さまには、引き続き振込用紙をお届けしています。お客さまのニーズを伺い、支払い方法の利便性向上への取り組みを今後も継続していきます。

――こうした請求関連の課題はエネルギー事業者ならどこも抱えていると思いますが、この点はいかがでしょうか。

梅澤 あくまで推測ですが、電力会社や大手ガス会社も同じ悩みを抱えていると思います。

柿原 サービス開始後、電力会社に限らず複数の事業者から、システム面や、お客さまへの周知など営業面で、どのように導入したのかといった問い合わせをいただいています。

梅澤 同じように悩みを抱える事業者のみなさまに、解決先の一つとして、同サービスを通じた当社の取り組みを参考にしていただければと思います。

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