【特集2】温室効果ガスの約4割を排出 CO2削減で果たす大きな役割

2021年8月2日

山地憲治/地球環境産業技術研究機構(RITE)理事長・研究所長

カーボンニュートラル宣言を受けて、電力業界は電源の脱炭素化と電化推進などに力を入れていく。脱炭素化された電気は、さまざまな分野で利用されることで大量のCO2排出削減が期待できる。

2020年10月に菅義偉首相が表明した50年カーボンニュートラル実現宣言を受けて、電力業界をはじめ各業界や主要企業から実現に向けた取り組みの表明が相次いでいる。

電気事業は発電に伴って年間4億tを超えるCO2を排出しており、わが国の温室効果ガス排出の4割近くを占めている。わが国のカーボンニュートラル実現において、電力部門のCO2排出削減は極めて大きな役割を果たす。

電気は利用段階でCO2排出なくクリーンかつ効率的に利用できることに加えて、さまざまな資源から生産できるので低炭素化・脱炭素化が相対的に容易である。カーボンニュートラルなバイオマス発電とCCS(CO2回収・貯留)を組み合わせれば(これをBECCSと呼ぶ)、大気からCO2を回収して地中に隔離するとともに電気を生産できるのでCO2排出はマイナスになる。このような脱炭素化された電気を産業や運輸などの分野で利用することで、省エネ効果も含めて全体として大きなCO2削減が期待できる。

北海道・苫小牧市のCCS実証試験 (経済産業省ウェブサイトより)

21年5月に電気事業連合会から公表された「2050年カーボンニュートラルの実現に向けて」においても、供給側の「電源の脱炭素化」とともに需要側の最大限の「電化の推進」に取り組むとされている。具体的には供給側の脱炭素化に向けて、再生可能エネルギーの主力電源化、安全を大前提とした原子力の最大限の活用、火力の脱炭素化に向けた取り組みが表明されている。

また、需要側の取り組みとして、最大限の電化に加えて、水電解による水素などの脱炭素エネルギー供給によって社会全体での脱炭素化に貢献するとされている。電解水素供給に加えて、政府が推進するカーボンリサイクル(回収CO2の利用)においてもCO2の電解還元技術の利用が有望であり、脱炭素化における電気の利用が大いに期待されている。


再エネはバランスを取って 原子力の新増設は欠かせず

電気事業連合会の取り組み方向には全く異論はないが、多少コメントしておきたい。

まず再エネ。再エネ主力電源化は国民の支持が強く、むしろ再エネ一辺倒にならないようバランスを取る必要がある。重要なのは長期的な原子力の維持とゼロエミッション火力である。ゼロエミ火力については、現状では研究開発段階である水素・アンモニア発電に加えて、既に技術的には確立しているCCSの活用が重要と考えている。

IGCC(石炭ガス化複合サイクル発電)などゼロエミ火力に至るトランジション(移行期)を支える技術も含め、コスト評価を通して技術経済的に合理的なゼロエミ火力を追求する必要がある。

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