【特集2】業界標準の水素検知警報装置 FCVや工場向けなどで普及進む

2022年3月1日

【新コスモス電機】

水素ステーションや工場などありとあらゆる場所で使われる水素向けガス検知器。新コスモス電機の製品は業界の定番としての地位を獲得している。

水素エネルギーの本格普及に向け、燃料電池車(FCV)の販売、水素ステーションの整備、サプライチェーン構築のための実証などが進んでいる。そうした水素関連製品や設備の運用に欠かせないのが水素の漏れなどを調べる検知器や警報器だ。

新コスモス電機は約40年前から水素向けセンサーの研究開発に取り組み、多くの製品を販売する。現在では、全国で設置が進む水素ステーションの約8割に同社のガス検知警報装置が設置され、デファクト製品として普及している。

FCV向けでは2020年12月に発売されたトヨタ自動車の第2世代「MIRAI」に同社の水素ディテクターが採用され、FCVの燃料電池上部に1個、水素タンクに2個、合計3個を搭載している。FCVでは、とてもシビアな要求がある。具体的には、ガス漏れを素早く検知する性能を備えつつ、振動や自動車部品から出る特定成分による影響対策、過酷環境への耐久性、車の利用期間に相当する寿命確保などだ。加えて、前モデルからのコストダウンの要求もある。そうした課題を乗り越えるために開発したのがディテクターの核となる接触燃料式センサーだ。インダストリ営業本部の岩見知明執行役員はこう話す。

「水素検知に求められる応答速度に対応するには、センサー自体を小型化する必要があります。そこで従来よりも細い貴金属線コイルを巻く技術を開発しました。他社にはできない独自技術と自負しています。家庭用ガス警報器生産で培った量産化技術も水素センサーの製品づくりに生きています」

㊧水素ディテクター ㊨水素向けガス検知器

トヨタ自動車は、製造現場でも水素を活用している。元町工場(愛知県豊田市)では、脱炭素化の実現に向けて、FCフォークリフトを稼働しているほか、乾燥炉などの生産工程の燃料にも水素を利用している。そうした設備の運用や点検にも検知器をはじめとした新コスモス電機の製品が多く利用されているという。今後、水素供給網の構築や水素発電など、さまざまな実証が始まる。そうした現場での採用にも注力していく構えだ。

アンモニアにも注目 新センサーを開発

次世代エネルギーでは、アンモニアに注目している。石炭火力発電ではアンモニアを混焼することでCO2排出量を減らす実証をJERAが中心となり進めている。「10年以上前からアンモニアセンサーの改良に取り組んできて、安定した性能を確保したセンサーが完成しました。ようやく花を開きそうです」と岩見執行役員。水素に加え、アンモニアでも新コスモス電機の製品が普及しそうだ。