【エネルギーフォーラム賞】第43回受賞作の決定
2021年12月~2022年11月に刊行された書籍を対象に第43回「エネルギーフォーラム賞」の各賞が2023年2月20日の選考委員会において決定いたしましたので、お知らせいたします。
なお、今回の贈呈式は、経団連会館4階ダイアモンドルームにて2023年3月31日18時(開場17時半)より行います。
<第43回エネルギーフォーラム賞>
・優秀賞:
「エネルギーの地政学」
小山 堅 著(朝日新聞出版刊)

【選評】タイトルの通り「エネルギーの地政学」という切り口から主要国の相互関係、各国の地域情勢などさまざまな視点がカバーされている。ウクライナ侵攻を契機とした重要な視点を全てカバーし、事実に基づいて分かりやすく、理路整然と記述されている秀作。
【受賞の言葉】この度は、第43回「エネルギーフォーラム賞」の優秀賞を受賞することになり、著者としてこの上なく光栄に存じます。受賞作となった本書の執筆を支えてくださった多くの方々に心より御礼申し上げたいと存じます。本書執筆の最大のきっかけとなったのは、ウクライナ危機の発生と深刻化で内外エネルギー情勢が劇的な変化を遂げ、今後の展開に関する不透明感が一気に高まり、エネルギー安全保障が世界の喫緊の最重要課題となったことでした。1970年代の石油危機以来ともいえるエネルギー情勢の激変を踏まえ、エネルギーの地政学という観点からエネルギー問題を切り取ることを試みた本書が、この受賞でご評価をいただけたこと著者として誠にありがたく、心より感謝申し上げます。今後も、エネルギー問題に関する分析・発信を通じて微力ながら社会へ貢献できるよう、自己研鑽を重ねてまいりたいと考えております。
・普及啓発賞:
「電力セキュリティ エネルギー安全保障がゼロからわかる本」
市村 健 著(オーム社刊)

【選評】DR(ディマンド・リスポンス)事業者としての視点、電力業界での経験を踏まえ、関連する事柄をわかりやすく解説している。エネルギー政策基本法成立を振り返りつつ、3つのE、特にエネルギー安全保障に焦点を絞って、電力のセキュリティというユニークな視点からわが国のエネルギー政策の課題を整理して将来を展望した良書。
【受賞の言葉】この度、普及啓発賞に選考いただきまして大変恐縮いたしますと共に、光栄に感じております。業務上、様々な欧州人と意見交換をする中で忘れ難いのは「7000もの島から成るニッポンで電力自由化の本質は何?」との問いでした。彼らの目線では、50-60ヘルツに分かれた系統制約の大きいニッポンでの電力セキュリティの達成は、並大抵ではないと映っています。今回、執筆の機会をいただいた際、頭によぎったのはこの問いかけでした。25年前に上司だった亡き加納時男・参議院議員のもとで、エネルギー政策基本法制定に向け奔走した際にも、電力セキュリティへの最適解を模索していましたが、実に深遠かつ複雑なテーマだと愚考します。安全保障が脅かされる中、電力に対する理解に拙著がわずかでも貢献できるならば望外の喜びです。今回、対談に快く応じていただいた東京大学公共政策大学院の有馬純特任教授には心から感謝申し上げます。オーム社の原正美様をはじめ関係者の皆様に、この場を借りて改めて深く御礼申し上げます。
<受賞者略歴>(執筆当時)
小山 堅(こやま・けん)
1959年、長野県生まれ。1986年、早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了、同年に日本エネルギー経済研究所入所。2001年、英国ダンディ大学博士号(PhD)取得。日本エネルギー経済研究所専務理事・首席研究員、現職。東京大学公共政策大学院客員教授、東京工業大学科学技術創成研究院特任教授を兼務。その他、国際経済研究所客員シニアフェロー、日本卸電力取引所理事などを務める。経済産業省をはじめ政府審議会・委員会などの委員を多数歴任。専門分野は国際石油・エネルギー情勢の分析、エネルギー安全保障問題。近著に「エネルギーの地政学」のほか「激震走る国際エネルギー情勢」。
市村 健(いちむら・たけし)
神奈川県出身。慶応義塾大学商学部卒業。1987年に東京電力入社。1995年、米ジョージタウン大学院MBA取得。本店原子燃料部副長、総務部GM、神奈川支店部長などを経て2014年6月末に退職。同年7月にシュナイダーエレクトリック・デマンドレスポンス事業部ディレクター(エナジープール日本法人設立統括)。 2015年6月よりエナジープールジャパン代表取締役社長兼CEO現職。併せて、資源エネルギー庁ERAB検討会・委員、電力広域的運営推進機関調整力及び需給バランス評価等に関する委員会、同機関需給調整市場検討小委員会、資源エネルギー庁次世代技術を活用した新たな電力プラットフォームの在り方研究会・オブザーバーを務める。