【特集2】神戸市とセミMグリッド実証 3電池で電力地産地消に挑戦
【大阪ガス】
大阪ガスが神戸市と連携し、既設の配電網を活用した「セミマイクログリッド」の実証を開始した。エネファーム、太陽電池、蓄電池の3種類を制御し、地域での電力地産地消を目指す。
脱炭素化の潮流に加え、世界的なエネルギー資源の供給不安、国内の電力需給ひっ迫リスクが拡大する中、エネルギーの地産地消のニーズは増すばかりだ。こうした社会課題に合致する実証が今春、神戸市で始動した。
大阪ガスと神戸市は今年度、再生可能エネルギーの最大限の活用を目指す「セミマイクログリッド」実証に取り組む。目的の一つに環境性と経済性の両立を掲げていることから、コストがかさむ自営線を敷設せず、既存の配電線を活用。あえて〝セミ〟マイクログリッドとした。
蓄電池+燃料電池の可能性 系統電力への依存低減
これまでも分散型リソースを遠隔制御する同様の実証はさまざまあり、大阪ガスもVPP(仮想発電所)構築実証に取り組んだ経験がある。一方今回は、家庭用燃料電池・エネファーム、住宅用太陽電池、蓄電池の3種類のリソースを組み合わせる点が特徴的だ。一般販売されている3電池を活用する実証は日本初になる。変動する太陽光の発電量に対し、調整力として一般的に組み合わせる蓄電池に加え、エネファームも活用することで、100世帯規模で系統電力への依存を低減し電力の地産地消を目指す。
実証を担当する大阪ガスマーケティングでは、「周波数レベルでの需給バランスは難しいにせよ、今回は30分同時同量レベルで系統電力を購入せずに済む状況を実現させたい。分散型リソースを最適に制御した上で、CO2排出量などの環境性にもどのような影響があるのか検証していく」(商品技術開発部)方針だ。
約100世帯を仮想街区とし、神戸市民で3電池のいずれか、または複数を保有する顧客に参加を募り、新たに設備を希望する場合については顧客負担で設置する。具体的には、①各家庭の需要や機器の稼働状況をリアルタイムで把握、②収集データから街区全体の需要をAIなどで予測、③需要予測に基づく制御計画を設定、④リアルタイムの状況も踏まえたエネファームや蓄電池の最適制御―に取り組む。
4月上旬から参加者の募集を開始したところ、顧客からの問い合わせは当初の予想以上に順調という。遠隔制御は夏以降に開始し、2023年3月まで実証を行う。
以前のVPP実証の知見などを踏まえ、この規模の電力需要を自家消費ベースでコントロールするために十分な分散型リソースのボリュームとして、3電池それぞれの導入数を想定しているという。運用面では、街区全体の需要や太陽光の発電状況に合わせて、各家庭のエネファームの出力や蓄電池の充放電を制御していく。同社は「VPPでは親アグリゲーターからの指示に合わせた制御だったが、今回は自ら需要を予測して長期間の制御計画の策定に挑戦する」(同)と強調する。
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