脱炭素化の世界的潮流が加速する中、大阪ガスの社長に就任した。化学系関係会社での社長経験などを生かし、多彩な事業領域を持つ企業グループとして、新たな企業価値の創造に力を傾注する。
井関 まずは社長就任に当たっての抱負をお聞かせください。
藤原 社長就任後の3月10日に発表した中期経営計画「Creating Value for a Sustainable Future」の初年度がいよいよスタートし、身の引き締まる思いです。厳しい事業環境において大変な重責ですが、自らがフットワーク良く動いて率先励行し、さまざまな経営課題に全身全霊で取り組んでいきます。
2017年の「長期経営ビジョン2030」で示した「枠を超える活動」をさらに加速させ、お客さまから時代を超えて選ばれ続ける革新的なエネルギー&サービスカンパニーの実現に向けて、Daigasグループ全体で「不断の進化」を目指します。
新中期経営計画を実現するに当たっては、当社のコア・コンピタンスとそれによって生み出す提供価値をグループ全体で明確にし、最大化させます。また、脱炭素化やデジタル化などの潮流を俊敏に捉え、Newノーマルな時代に適合すべく、抜本的な業務改革にも取り組む所存です。
井関 大阪ガス入社以来、これまで最も印象深かった出来事は何でしょうか。
藤原 入社以来、さまざまな経験をさせていただきましたが、大阪ガスケミカル社長時代には、自社よりも規模の大きいスウェーデンの「Jacobi Carbons AB社」のクロスボーダーM&Aを実現し、ヤシ殻活性炭で世界トップ企業に躍り出ました。さらに、活性炭と同様の機能を有する、無機系吸着分離材料を製造する水澤化学のM&Aを実施した結果、吸着分離材料を中心とした材料ソリューション事業を成長させる礎を構築することができました。これらの経験は、今後の社長業に生かせると考えています。
井関 中期経営計画のポイントを教えてください。
藤原 今回の中期計画には、「Creating Value for a Sustainable Future」というタイトルを付けました。未来において解決したい社会課題として、「低・脱炭素社会の実現」「Newノーマルに対応した暮らしとビジネスの実現」「お客さまと社会のレジリエンス向上」―の三つを「ミライ価値」と定め、私たちのソリューション・イノベーションにおける強みと、ステークホルダーの強みを組み合わせることで課題解決の実現を目指し、その成果を分かち合っていきたいという想いを込めました。
この三つのミライ価値の最大化に向け、国内エネルギー事業、海外エネルギー事業、ライフ&ビジネスソリューション事業のそれぞれの事業領域において取り組みを着実に推進し、ステークホルダーと共にミライ価値を創造し成長し続けるために強くステップを踏み出す期間としたいですね。
また各事業ユニットの自律的な成長を促進するため、経営管理指標にROIC(投下資本利益率)を導入しました。これにより全体最適な資源配分を実現し、強靭な事業ポートフォリオを構築することで複数の事業の集合体として進化させていきます。23年度のROIC目標5%に向け、まず今年度には4・4%を目指します。