【特集2】CNへ必須のエネルギー利用 サプライチェーン構築を支援

2024年9月3日

国内外の各地で新燃料の供給・活用体制づくりが加速している。政府としての対応を、廣田大輔水素・アンモニア課長に聞いた。

【インタビュー】廣田大輔/資源エネルギー庁 水素・アンモニア課長

ひろた・だいすけ 2005年東京大学大学院電気工学修士を修了、経済産業省入省。原子力・石油ガス政策、新型コロナ下の予算編成・税制改正やGX政策などを担当。24年7月から現職。

─アンモニアや水素など新燃料への取り組みの現状をどう見ていますか。

廣田 カーボンニュートラル(CN)社会を実現する上で、水素やアンモニアを燃料として活用していくことは非常に重要な取り組みです。発電燃料としてはもちろん、輸送や工場のボイラーの熱源といった電化できない工業プロセスの脱炭素化に向け鍵となる燃料であり、既にさまざまな業種の企業がコンソーシアムを組みながら取り組みを始めています。

─エネルギー利用に向けての課題は。

廣田 燃料として活用するためには、水素にせよアンモニアにせよ、膨大な量を必要とします。現段階でそれを賄えるような大規模な製造・生産の事業例はなく、世界中で燃料のスケールに合った技術やシステムの確立を目指し開発が進められています。技術面に加えて、プロジェクトに対し、きちんとファイナンスが付くかどうかも大きな課題です。ファイナンスが付くためには、製造した水素・アンモニアを安定的に買い取る需要家の存在が欠かせません。燃料規模のプロジェクトを立ち上げるには、技術とファイナンスの二つの課題をうまくクリアしていく必要があります。

─そうした課題に対する政府の支援策とは。

廣田 今年5月に水素社会推進法が成立し、施行に向け準備を進めています。この中に、化石燃料との価格差に着目した支援が盛り込まれています。支援期間は15年ですが、その後も10年間供給を継続する計25年間の事業計画を立ててもらうことで、長期的なプロジェクトを成立しやすくする狙いです。また、海外から燃料を受け入れる拠点整備に対しても支援を行います。詳細な制度設計はこれからですが、燃料の供給、拠点整備の双方を支援することで、16年目から経済的に自立可能なサプライチェーンの構築を目指します。

─企業に対しては何を期待しますか。

廣田 今後、CNの実現を目指していくわけですが、同時に、企業は新しいビジネス機会を捉えて成長につなげるという視点を持たなければなりません。CNにより、足元のコストが増える側面はありますが、いかにコストを抑制するかだけではなく、新たな市場に向け、稼げる製品と稼げるサプライチェーンを作ることを両輪で考えていかなければ、取り組みは持続しません。増えるコストは、新しい成長市場に進出するための「投資」であるという考えを持ち、トランスフォ―メーション(X)に挑戦していただきたいと思います。政府としても、Xに挑戦する企業に対しては、思い切った支援を行っていきます。

ひろた・だいすけ 2005年東京大学大学院電気工学修士を修了、経済産業省入省。原子力・石油ガス政策、新型コロナ下の予算編成・税制改正やGX政策などを担当。24年7月から現職。