【コラム/10月15日】1年弱続く紅海〝封鎖〟 フーシ派による無人艇ドローン攻撃の実態

2024年10月15日

杉山大志/キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 

2023年11月以来、イエメンの武装組織フーシ派が紅海を通行する船舶を攻撃し、事実上の封鎖をしている。フーシ派は「親イスラエル」の国の船舶を攻撃すると声明を出しており、インド洋から欧州諸国に行き来する船は、紅海およびその湾奥にあるパナマ運河の通航を回避して、遠くアフリカの南端喜望峰を迂回することを強いられている。

フーシ派の攻撃の様子を詳しく報じるショッキングな動画がウェブ上にアップされているのでリンクを3件紹介する。

この動画チャンネルhttps://www.youtube.com/@wgowshippingでは他にも攻撃の事例がアップされている。モーターボートを改造した無人艇(USV)に爆薬を積み、船舶に体当たりで攻撃を仕掛けていることが分かる。警備員が3人乗り組んでいて、ライフルで船舶を攻撃するが、なかなか当たらない。何とか難を逃れることもあるが、攻撃を受けて船体に穴が開き、船舶の放棄を余儀なくされたり、最悪の場合は浸水して乗組員に犠牲者が出たりしている。放棄されたタンカーにはフーシ派が乗り込んで火を放ち、1カ月にわたって燃え続けたこともあった。


未遂含め累積100件に 重大事例や犠牲者も発生

紅海封鎖に関しての情報はJoint Maritime Information Center (JMIC)によって収集され公開されている。

最新の9月28日付の概況報告https://cd.royalnavy.mod.uk/-/media/ukmto/products/jmic-weekly-dashboard—22-28-sep—week-39-2024.pdfによると、これまでの船舶への攻撃は未遂も含めると累積で100件に上る。船の放棄などに至る重大事例は6件で、4人が死亡、2人が負傷を負っている(図参照)。

攻撃対象となった船舶の3分の1はタンカーである。攻撃にはUSV以外にもミサイルや空中ドローン(UAV)も使用されていて、一度に複数を使う場合が多いようだ。

台湾有事となると、前回https://energy-forum.co.jp/online-content/18639/も書いたが、米軍を後方で支援する日本の経済活動を妨害するために、日本近海を航行する船舶が狙われるかもしれない。防衛体制を整えておく必要がある。

エネルギーに関しては、輸入量が減少しても経済活動を継続できるよう、備蓄を増やしておくことが必要だろう。


【プロフィール】1991年東京大学理学部卒。93年同大学院工学研究科物理工学修了後、電力中央研究所入所。電中研上席研究員などを経て、2017年キヤノングローバル戦略研究所入所。19年から現職。慶應義塾大学大学院特任教授も務める。「亡国のエコ 今すぐやめよう太陽光パネル」など著書多数。最近はYouTube「杉山大志_キヤノングローバル戦略研究所」での情報発信にも力を入れる。