【特集2】異業種・自治体と共同実証 地域課題解決に資するサービス

2025年12月3日

【四国電力送配電】

スマートメーターシステムを活用した事業が新たな展開を迎えている。
ガス・水道事業の効率化に加え、地域の課題解決にもつながりそうだ。

四国電力送配電は、地域の課題解決と持続可能な未来の実現を目指し、外部パートナーと連携、デジタル技術やデータを活用した新たなサービスの創出に取り組んでいる。


21年4月には、ガス・水道メーターの検針値を遠隔で自動収集する「IoT向け通信回線サービス」の提供を開始した。同サービスでは、整備済みのスマートメーターシステムを活用し、ガス・水道メーターに無線通信端末を接続。四国全域約260万台の電力スマートメーターがアンテナとなり、広範囲で安定した通信を実現している。このように複数事業者が一つの検針システムを共同利用し、検針値や警報情報などを自動収集する仕組みは、共同検針と呼ばれ、システム整備の合理化と社会コスト低減が期待されている。

水道メーターと無線通信端末


同社が電気事業用に構築したスマートメーターシステムは、10年以上安定稼働しており、電力メーターの検針値収集率はほぼ100%を誇る。また、電力スマートメーターとガス・水道メーターとの間は、近距離かつ省電力の無線通信のため、水道特有の過酷な環境でも電波が届きやすく、無線通信端末の電池が長持ちする点が特徴だ。さらに、強固な暗号化通信により、セキュリティを確保。無線通信端末に対して遠隔でのファームウェア更新も可能だ。


企画部ビジネスソリューショングループの亀井聖司マネージャーは、サービス開始当初に営業業務に携わった経験があり、「社内の各部で保有アセット活用の検討が活発化する中、附帯事業を将来の収益源となる成功例として新たな価値を創出したいという強い思いがあった」と当時を振り返る。地域のLPガス事業者である四国ガス燃料や水道事業者の香川県広域水道企業団などの協力を得て知見を蓄積し、サービスの優位性を積極的に訴求してきた。


こうして、ガス事業者へのサービス展開は比較的スムーズに進んだという。だが、水道事業への進出には苦戦した。亀井マネージャーは「最大の課題は費用対効果の算出だ」と話す。高度成長期に整備された水道インフラの老朽化に加え、人口減少による収入減、財政難など複数の課題が絡み合う中、自動収集した水道データの先進的な活用を推進する必要があった。

水道事業の経営効率を向上 インフラ強靭化への期待も

そこで今年4月、水道事業へのサービス展開を加速するべく、総合水インフラ企業のフソウと徳島県南部に位置する海陽町(人口約8000人)と提携し、住民サービスの向上や水道インフラの強靭化などの地域課題解決に資する共同実証に着手した。同町に水道施設等監視システムを導入するフソウが、水道施設の運転管理において経験とノウハウを保有していた。また、同町は23年度から四国電力送配電と水道遠隔検針に関する実証を実施しており、デジタル技術を活用した取り組みに理解・関心があったことから、共同実証を実施する運びとなった。

タッグを組んでサービス拡充を目指す


フソウの持ち株会社FUSOグループホールディングスの門脇恵一上席執行役員は、四国電力送配電について「既存社会資本の効率を高め、水道インフラにかかる社会コストの低減を追求するという理念が一致した」ことに加え、「フソウの事業発祥の地である四国で、地元企業の四国電力送配電と地域課題解決に取り組むことは地域貢献の一環としての意義もある」とタッグを組んだ意図を明かした。


今回の共同実証では、フソウの持つ管路に関する豊富な技術力と知見が加わり、水道データに関する検針業務以外の付加価値のアイデア創出と実証に取り組んでいる。このうち、管路漏水検知の実証では、管路漏水の疑いがある小規模地域(40世帯)で漏水箇所がほぼ特定され、今後は、管路の補修や新設を進める計画だ。給水量に対して料金として収入につながった水量の割合を示す有収率は、23年度の全国平均が89・3%。管路漏水防止対策の実施などによって有収率を高めることで、水道事業の経営効率の向上や安定給水の確保などが期待できる。

実証成果を四国で広く展開 福祉や防災への活用視野に

海陽町上下水道課上水・農集担当の長谷直樹氏は「サービス導入のおかげで住民サービスの向上や、自治体としての運営の高度化につながっている」と改善効果を実感しているという。


実際に同町では、検針員が現場に出向かずとも検針値を遠隔で自動収集できるようになった。また、データの一元管理による検針業務の効率化、漏水の疑いがある場合は、水道データをもとに住民への通知やアドバイスを実践している。さらに、今回の共同実証についても「成果や課題を踏まえて、町内の他エリアへの展開も視野に入れ、今後は導入数を増やしていくことを検討している」という。


人口減少や検針員の高齢化による人材不足、水道インフラの老朽化などへの対応として、今後ますます水道データの先進的な活用は広がりを見せることが想定される。両社は海陽町での実績を元に、四国エリアでの横展開を見込んでいる。


四国電力送配電企画部の淀靖典チーフマネージャーは「エネルギーとデジタルの力で未来を創造していくというビジョンの下、自治体などに向けた地域課題解決に資するサービスを軸に、保有アセットを活用した新規事業の創出に取り組んでいる。まずは、共同検針の普及を推進しつつ、ガス・水道事業を通じて地域を支えたい。その先には、高齢者の見守りなど、福祉分野や防災分野への活用も見据えている。『地域と共に』がわれわれの存在意義であり、地域の発展と、快適・安全・安心な暮らしに貢献していきたい」と今後の見通しと抱負を語った。