【特集2】次世代スマメが拓く社会変容 情報産業の新たな価値創造へ

2025年12月3日

電力・ガスのスマートメーター普及が全国で進んでいる。
業務効率化、省エネ推進、データ利活用などのさらなる進展が期待される。

従来型メーターに通信機能が備わったスマートメーター(スマメ)。既に第一世代の導入は完了し、第二世代への置き換えが始まった今、どのような進化を遂げ、今後、社会にどのようなインパクトを与えようとしているのかに関心が集まっている。


第一世代の全件導入がもたらした成果は大きい。これまで人手に頼ってきた検針業務や電気の遮断・復旧を遠隔で行えるようになったことで、委託費用の抑制につながった。さらに、災害時に電力データを活用することで早期復旧に貢献している。


実際に、石川県は2024年の能登半島地震および奥能登豪雨の災害対応業務に電力データを活用。発災直後から復興支援までの幅広い場面での電力データの有効性が確認された。また、最近では「共同検針」の実証を始めた自治体もある。例えば四国電力送配電が取り組む、電力スマメのネットワークを利用して水道やガスなどの検針を行う共同検針は、社会的コストの合理化、検針保安業務の効率化などさまざまなメリットがある。

             集合住宅に設置されたスマートメーター

分散化・多層化志向に対応 リアルタイム制御が可能

第二世代導入を推進する背景にあるのが、再生可能エネルギーなど分散型エネルギーの導入拡大だ。再エネのコストが低下しているのに加え、デジタル技術の進展によるエネルギーマネジメントの高度化、災害時のレジリエンス強化に対する関心の高まりや、カーボンニュートラル宣言などが後押ししている。


とりわけ、分散化・多層化を志向する次世代の配電プラットフォームにおいては、データを活用した電力ネットワーク運用の高度化、電力分野以外への電力データの利用拡大、需要側リソースの拡大に伴う取引ニーズの多様化などに対応することが求められている。これにより、リアルタイムでの電力需給調整や、分散型電源の増加に対応した電圧制御、さらには多様なIoT機器との連携が期待されている。


今後10年間で8000万台を再度導入していくに当たり、23年6月に次世代スマメの計量部の仕様統一は完了している。その一方で、第一世代の導入と運用の経験から課題も浮き彫りになってきた。


一つは、導入に関わるコストを回収できるかどうかだ。レベニューキャップ制度の第一規制期間(23~27年度)においては物価上昇などは原価参入を認めないとされており、最近の物価高の影響を回避できていないのが実情だ。一般送配事業者がそういった影響を自助努力のみで吸収することには限界があり、物価などの変動影響を制度に適正に反映することが求められている。


二つ目は、情報セキュリティー対策だ。第一世代導入から「スマートメーターシステムセキュリティガイドライン」に準拠してきたが、さらに見直しを進め、今年2月に改定した。


主な改定点は、外部接続に関するセキュリティー強化で、外部機器・システムとの接続点におけるリスクアセスメントや脆弱性管理の徹底、接続点の最小化、ログ収集などの取り組みを明確化した。


また、外部接続事業者との管理・合意形成に関し、外部機器・システムとの接続や運用に関する責任分界点、通報・遮断・再接続手順などを整理し、合意形成を求める方針を明記した。今後増加することが見込まれる共同検針のように、電力以外のデータを電力ネットワークに受け入れることを考えれば、システム全体のセキュリティーの確保は極めて重要だ。

先行投資に膨大な負担 中小向けの支援を想定

ガス業界のスマートメーターについては、経済産業省が大手事業者とそれ以外の二つに分けて導入・運用のロードマップを示している。大手事業者は20~30年代前半までを導入段階、30年代前半以降を運用段階としている。このロードマップに沿って、東京、大阪、東邦の大手都市ガス3社は20年からシステムの共同開発に着手。その結果生まれたのが、個々のスマートメーターと3社の業務システム間で情報の送受信を担うセンターシステム「SMANEO(スマネオ)」だ。3社共通のインフラとして機能するため、開発・維持管理のコスト低減につながった。

ガスのスマートメーター化も今後進む


22年12月から東京ガスを皮切りに、大阪ガス、東邦ガスでも順次運用が始まっており 10年後には、3社合計2200万台超のスマメがSMANEOに接続される。これは全都市ガス需要家の約70%に相当し、都市ガス業界全体として業務の効率化や保安・レジリエンスの高度化が図られることになる。


中小事業者については、大手事業者の運用開始後に導入を始めるというロードマップが描かれている。20~30年代に検討、30年代以降に導入、40年代以降に運用というスケジュールだ。トライアルで導入している事業者も一部あるが、多くの事業者は現在、情報収集を進めているところ。導入には、メーター本体に加えて、通信ユニット、中継器、システム改修などの設備投資の負担が避けられない。今後、中小事業者が導入を加速させていくには、これらの膨大な先行投資を促す経済的な支援策が必要になると想定されている。一方で、スマメの導入は人件費の低減に直結するため、早期に導入を進めたいと考える事業者もいる。


本特集では、スマートメーターの次世代化を通じて、エネルギー供給の安定性と業務効率の向上を図るとともに、ビッグデータを活用した新たな価値創出を目指す取り組みを紹介する。