【コラム/1月23日】選挙前に大盤振る舞い予算を考える~強い経済への難問解決となるか

2026年1月23日

飯倉 穣/エコノミスト

1、2026年は、回復継続期待

26年度予算が閣議決定された。規模は、過去最大122兆円である。価格転嫁・物価上昇で税収見積もりも過去最大を見込み、公債金は、昨年に続き30兆円を超えず、公債依存度も前年を下回る。そして28年ぶりにプライマリーバランス(PB)黒字という総理記者会見(25年12月26日)があった。予算成立のため内容に野党配慮もにじむ。

「予算案122兆円過去最大新規国債29兆円国の借金最大に閣議決定」(朝日12月27日)。「来年度予算案最大の122兆円決定 成長探る「積極財政」社保、改革後退で39兆円」(日経同)と報道もあった。

この予算を踏まえた26年度政府経済見通しは、輸出増・個人消費・設備投資期待で、GDP成長率実質1.3%、名目3.4%である(25年度見込実質1.1%、名目4.2%)。この姿が経済成長を促進し財政の持続可能性も確保する戦略的な財政政策(責任ある積極財政)なのであろうか。

政府が目指す強い経済の中身は、なお曖昧だが、景気や成長と財政の関係で、幾つか理解に苦しむ点がある。公債金の多少の抑制やPB黒字化で、財政再建可能で財政破綻状態を脱却できるのか。現在の景気変動を考えた場合、適正な予算規模なのか。国民やメデイアが期待する物価上昇の抑制となるのか。この予算内容は、経済成長に結実するのか。これらの疑問は、今後予算審議で明確になるだろうか。

衆院選挙を前に2026年度予算を財政の姿、経済変動、物価、成長との絡みで考える。


2、財政の姿~破綻懸念は継続

26年度予算の数値の事実を再確認すれば、次の通りである。歳出総額122.3兆円(前年比6.2%増)、うち国債費(10.8%増)を除いた政策経費91.0兆円(4.7%増)である。歳入では租税等収入83.7兆円(7.6%増)、その他収入8.9兆円(3.0%増)を見込み、公債金は29.5兆円(3.3%増、公債依存度24.2%)を予定する。PB黒字化でも国債残高は増加する。物価上昇見込みで、26年度末の名目GDP比公債残高は165%(国・地方債務残高194%)である。また税収弾性値(税収伸び率/名目成長率)は、従来1.2程度が目安だったが、それを超える想定である。

経済のフローを見れば、26年度名目GDP比公債依存度は4.3%(同赤字国債比率3.3%)で、借金で経済水準を押し上げ、維持する姿である。財源の公債依存度は、31年連続20%超(1996年度以降)、24年連続赤字国債発行20兆円超である。経常経費を税収で賄えない状況が続く。

90年代バブル崩壊、金融危機、2000年代ITバブル崩壊、リーマンショック、10年代アベノミクス狂気、20年代コロナ感染危機等の様々なショック対応もあった。その間平時に戻っても財政赤字に頓着せず、政治は「経済あっての財政」等と繰り返している。事実上、財政均衡努力を放棄している。そして近年の物価上昇見合い賃上げ推奨がある。実質GDPを忘れ、名目GDPにこだわる人々の思惑が浮かぶ。「財政政策があきらかに持続不能になりインフレにせよという政治的圧力がかかったら」(ケネス・ロゴフ「ドル覇権が終わるとき」25年11月)という文脈を思い出す。今後、経済変動に耐えられるのか。


3、予算規模~景気判断とは

誰でも財政の役割は、資源配分、所得再分配、経済安定化の3機能を上げるだろう。そのうち経済安定化の視点から、今回の予算規模を考える必要がある。一般的に景気の状態を考慮し予算編成することは基本である。つまり景気変動に対し抑制型か、中立型か、景気浮揚型となる。今回の予算は、経済の現状認識との乖離はないのか。

内閣府の景気判断を月例経済報告で追ってみよう。一昨々年(23年)は、弱さありから「緩やかに回復」の表現だった。一昨年は(24年)も足踏みながら「緩やかに回復」だった。昨年は、足踏みや不透明感ありながら「緩やかに回復」の表現が継続している。そして直近は、景気は「緩かに回復」(月例経済報告25年12月)とある。

現在先行きに不安材料はあろうが、現段階で大きな対策を要する事案は見かけない。何故、大型予算や大型補正予算が必要なのか。現在の物価上昇を考えれば、むしろ政策経費の増額(4.7%増)は不要で、予算の伸び1%程度の抑制的か中立的な予算編成が適当と思われる。政治都合の大盤振る舞いに陥っていないか心配である。

4、物価との絡み~緊縮財政が適当

来年度予算は、物価対策が強調された。診療報酬改定、公務員人件費増、官公需の見直し、給付引上げに加え、間接税の廃止等である。経済物価動向の反映で人件費、サービス料金、調達価格の物価調整を盛り込んだ。困窮者対策は必要な場合もあろうが、生産性上昇のない賃上げや物価監視のない諸措置の引上げは妥当なのか。

繰り返しになるが、物価状況を見てみよう。現在の物価状態は、財政インフレに進んでいないが、輸入インフレ型からコストプッシュ型に変化している。数字を見よう。

輸入物価(前年比)の推移をみれば、22年39.1%(契約通貨21.4%)、23年△4.7%(△8.8%)、24年2.7%(△3.1%)である。昨年(25年)は、三四半期円・契約ベースともマイナス基調の後、10月△1.7%(△2.6%)、11月△1.8%(△2.7%)、12月0.0%(△1.5%)と推移している。円安の影響あるも些少である。これを受けた国内企業物価(前年比)は、22年9.8%、23年4.4%、24年2.4%と低下した後、昨年(25年)前半高め(4~3%)の後、10月と11月2.7%、12月2.4%と下げ止まっている。企業物価に占める輸入物価のウエイトを考慮すれば、明らかに輸入物価や円安の影響でないことが窺える。

要因として生産性を上回る賃上げと便乗値上げを想起させる。前者の賃上げは、22年2.20%、23年3.60%、24年5.33%、25年5.52%だった。この数字は生産性の指標である実質成長率を大幅に上回っている。後者は、法人企業統計の企業収益好調がそれを裏付ける。

消費者物価(総合・前年比)は、22年2.5%、23年3.2%、24年2.7%、その後25年1月以降4~3%で推移し、8・9月2%台後半となり、10月3.0%、11月2.9%で推移している。そして生鮮食品エネルギーを除く総合は、22年1.1%、23年4.0%、24年2.4%、25年5月以降3%台を推移している。企業物価上昇に加え、サービス価格等値上げの影響が推測される。

生産性の上昇がない中で、物価上昇見合い賃上げ・価格転嫁すれば、明らかにコスト増・商品サービス価格の上昇を余儀なくする。これが物価を上昇させて、インフレ継続 を招くと同様、成長も停滞しスタグフレーションとなる。果たしてこのような物価対応予算編成は妥当であろうか。公務員の賃上げも、人勧(25年官民較差3.62%)を反映し26年度給与予算国3.3%増、国・地方計4.5%増(経費移し額を除く)である。いかがであろうか。

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