【特集2SAF最前線】米国が主導する巨大産業化 最新の動きを現地レポート
石井孝明/経済ジャーナリスト
アメリカではさまざまな企業がSAFの生産体制整備に動き出している。
今後、日本にどのような影響を及ぼすのか、米国現地などを取材した。
SAF(持続可能な航空燃料)を使い、航空産業の脱炭素を進める動きが国内外で始まっている。世界最大のバイオ燃料生産国である米国では、トウモロコシ由来のバイオエタノールを原料にしたSAFの製造業を政府、民間が育成しようとしている。昨年11月に米国事情を取材した。
「米国農家の利益」を強調 トランプ政権は協力姿勢
「トランプ大統領自ら関わる重要な経済問題」。首都ワシントンで農業団体のロビイストは、SAFの現状をこう説明した。ロビイストとは企業や団体などの利益代表として議員や政府関係者に働きかける専門家だ。このロビイストは弁護士で、政治の裏表に詳しかった。
第2次トランプ政権が昨年発足した後、このロビイストは「トランプの言葉でバイオ燃料を語るようにした」という。政権のスローガンである「アメリカ・ファースト」という言葉を使い、「SAFは米国農家の利益になる」と強調した。民主党政権時代には、「エコ」を強調したが、トランプ政権と共和党議員はその視点を嫌うという。今は、SAFへの支援、制度設計に、現政権は協力的だ。
米国では、トウモロコシ由来のバイオエタノールが自動車向けの混合燃料として定着している。その製造で10万件以上の生産農家と約5万5000人が関わる巨大な産業になっている。このバイオエタノールを再加工するSAFによって、産業は発展する可能性がある。当然、政治影響力も強い。「日本への購入のお願いも続く」と、前出のロビイストは見通しを述べた。
そして日本は、政府としてSAFの購入を米国に約束している。米国は主要国と関税交渉を行っているが、日本とは昨年7月に大筋合意した。「日本は、大豆、トウモロコシ、バイオエタノール、SAFなどの農産物を80億ドル規模で購入する」という。これは、トランプ大統領が自ら、同年2月の石破茂首相(当時)との会談で持ち出した。購入期限や形などの詳細は決まっていないが、一定量を官民で調達することになるだろう。
SAFの拡大は全世界的な流れだ。国際民間航空機関(ICAO)は2050年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げている。その目標を達成するため、「国際航空のためのカーボン・オフセットおよび削減スキーム(CORSIA)」という国際的な枠組みが作られた。参加航空会社は30年までに、10%の温室効果ガスの削減を目標にしている。
そして米国では、SAF産業の発展に、関係者の期待が高まっていた。バイオ燃料を製造するGEVO(ジーボ)グループのノース・ダコタ州にある工場を訪ねた。集めたトウモロコシを発酵しエタノールを作る。家畜資料にも加工する。工場には甘い柔らかい香りが漂っていた。製造工程で出る20%程度の二酸化炭素は圧力をかけて液化し、地下2000mの砂岩層に流し込み地中に埋める。CCS(二酸化炭素回収・貯留)という取り組みだ。



砂岩の上下は岩盤で、二酸化炭素はその中に閉じ込められることになる。また、同社は農家と提携し、不耕起栽培で作られた穀物を調達する。耕さないことで、二酸化炭素の排出が少ないとされる農法だ。同社はこうして削減した温室効果ガスの価値を上乗せして提供する予定だ。さらに、米国の公的な温室効果ガスの指標に加えて、炭素削減の価値を評価するシステムを独自に作り、顧客に提供している。そしてSAFへの進出を表明している。


「トランプの時代でも、脱炭素への関心は止まらない。当社の脱炭素の取り組みは製品を差別化する」と担当者は話した。
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