【SNS世論】メディアの再エネ賛美は迷惑 世論の批判は消えない

2026年7月1日

エネルギー業界の片隅にいると、一般の人から、「脱炭素政策や再生可能エネルギーへの支援は私に何の利益があるのか」という質問を頻繁に受ける。話を聞くと、巨額の支援と、「環境にやさしい」とされる再エネでの環境破壊問題という2つの問題に不満が広がっている。

再エネへの不信は広がっているのにオールドメディアは伝えず、SNS主導で世論が作られつつある。2016年、山梨県北杜市の太陽光発電所の反対現場=編集部撮影

私は一応、誰もが言える再エネの利点を説明する。「再生可能エネルギーは、二酸化炭素を減らし、環境にやさしいエネルギーです」。しかし最近は答えながら一般の人の再エネへの不信は当然で利点を述べても、納得は得られないだろうと思うようになった。

2026年度の再エネ賦課金の総額は3兆2000億円で一世帯あたりの年額負担も平均で2万3000円だ。FITで支出された太陽光、風力など再エネへの公的支援の総額は、12年度の制度開始から26年度までの累計で約36兆円の巨額になっている。

さらにオールドメディアはほとんど報じないが、SNSではメガソーラーによる森林伐採、また風力発電による騒音など、環境問題が取り上げられている。環境に悪影響を与える再エネの現場をいくつも何度もみたが、とても悲しくなる光景だ。「環境にやさしい」との名目で導入された再エネによって、日本の自然環境が破壊された例があるのだ。

判断の尺度は人それぞれであろうが、こうした現実を前に、国民全てが「役立つ支援だった」と、再エネについて合意はできないだろう。もちろん、それは太陽光や風力などの再エネの発電技術のせいではなく、その事業者の倫理観、そして問題のある制度を放置する政府の問題だ。

再エネそのものを否定する人は少数派だ。賛成か反対かという単純な質問をした世論調査は、いずれも賛成が過半数を上回る。しかし不信感が根強いものになっていることは感じる。そうした調査でも、それに対する言及が増えている。

◆メディアやNGOの奇妙な再エネ擁護

ところがオールドメディアは、再エネの問題点をあまり報道しない。朝日新聞のデータベースで、同紙の「再エネ」「再生可能エネルギー」という言葉を含んだ記事は福島原子力事故2011年に857件だったのに、25年には395件と急減した。メディアは11年の原発事故の際に、「原子力の代替手段としての再エネ」という誤った考えを広げた。その「原子力」「原子力発電」で同じように検索すると、11年の9001件から25年には1078件まで減った。原子力と関連して再エネは注目された。福島事故の収束と対応が進むにつれて、メディアの関心も減った。

メディアは再エネを支援する。エネルギー源でいうと、原子力や二酸化炭素を出すために悪者にされる石炭とは対照的な扱いだ。そして再エネの評判が悪化していることを、認識する記者もいるようだ。

朝日新聞は「交論 逆風の再エネ」(6月6日)で識者に再エネの信頼回復のアイデアを語らせていた。しかし、その識者から示された提案は(政府が)「明るいビジョンを具体的に示していくこと」という。誰でも言えることで、厳しい現実を見ず、楽観的すぎる考えだ。

再エネ推進派のNGOグリーンピース・ジャパンも、再エネの悪い評判は気にしているらしい。わざわざ「【全国意識調査】市民の多数は太陽光発電を拒否していない-普及の鍵は屋根置きと本質的価値の提供」(5月19日)という調査記事を日本支部のホームページに出した。ただし再エネに反対か、賛成かというアンケートで、賛成が多かったということだけを、記事の根拠にしている。あまりSNSで反響はないし、データの取り扱いがおかしいという批判も出ていた。

あるメディアの経済・エネルギー担当の記者に再エネについて「問題を客観的に述べるべきではないか」と話す機会があった。その人は「先輩たちが再エネを持ち上げ過ぎ、会社がこれまで再エネをほめたたえすぎたので、批判記事を書きづらい」と本音を話した。産経新聞は再エネ批判記事を載せ、読売新聞は、両論併記の報道をする。しかし、他のオールドメディアはほとんど報道をしない。おそらく、この記者と属する会社と同じような姿勢なのだろう。

◆「贔屓(ひいき)の引き倒し」が起きつつある

こうしたメディアと政府、そして関係者や支援者が、再エネの良い情報だけを流し、今起きている問題を伝えない姿勢は、日本国民と、エネルギー業界のためにはならない。そして、再エネの発展のためにもならない。国民の支持がなければ、そして前述の「巨額の支援」と「環境破壊」の2つの問題を是正しなければ、再エネの次の段階の成長はない。

オールドメディアの影響力の低下、SNSの影響力が強まる。その中で、再エネ問題について、正確な情報を伝えなければ、そして改善がなく、また議論の場が作られなければ、批判が社会の中で一方的に増えるだけだ。そして前述の2つの問題を話題にするSNSで多く見られる批判に正当性がある。

問題解決を関係者が、情報の面から妨げているなら罪深い。日本では「贔屓(ひいき)の引き倒し」という言葉がある。応援する人や事柄を賛美しすぎて甘やかすと、その人が成長しなかったり、物事がうまくいかなかったりすることを言う。

再エネはSNSの時代に、そんな危険に直面している。再エネを語る場合に、それに関わる、応援する立場の人は、問題を直視し、それを改める行動をしなければならないだろう。