【フォーラムアイ】2050年に向けたビジョン策定から1年 日本ガス協会が会員企業と描く業界の未来

2026年7月4日

日本ガス協会

日本ガス協会は昨年6月、「ガスビジョン2050」と「アクションプラン2030」を策定した。

同ビジョンに描かれた目標達成に向けて歩み始めたこの一年の取り組みを報告する。

日本ガス協会(JGA)による「ガスビジョン2050」「アクションプラン2030」の策定から1年が経過した。この間JGAでは、特設サイトの開設や会員企業向けイベントを通じた積極的な情報発信により、業界の未来像と行動計画の周知を推進してきた。また、地方部会主催でカーボンニュートラル(CN)勉強会を開催し、幅広い階層や年齢層への浸透に注力した。1年間の活動の進捗を、恩田直樹・企画部エネルギー環境グループマネージャー兼カーボンニュートラル推進センター長と、池田雄大・同グループ副課長が振り返る。

企画部の池田氏(左)と恩田氏

燃転の環境整備を国に要望 e―メタンの計上ルール整備

まず、都市ガス事業の基本の基となる安心・安全、安定供給への取り組みとして、重大事故の撲滅と物損事故を含む事故全体の低減を目的とした保安対策の指針「ガス安全高度化計画2030」に沿い、防災と保安の取り組みを推進した。ガス導管整備では、経年管対策であるねずみ鋳鉄管の入れ替えを25年度末にほぼ完了した。耐震化率30年度95%に向けて、地震対策として低圧本支管のポリエチレン管への入れ替えを着実に進めている。スマートメーターへの切り替えは大手事業者が全面導入に向けた取り組みを開始しており、中小事業者もトライアルを始めている。

30年までの具体的な活動を示すアクションプランでは、CO2排出量を30年度に13年度比で1800万t削減するとし、「まずは足元からCO2排出を削減する、他燃料から天然ガスへの燃料転換(燃転)を推進するため、国への政策提言に尽力してきた」と池田氏は語る。JGAは、資源エネルギー庁の「ガス事業環境整備ワーキンググループ」において、他のCO2削減手段と比べて燃転が費用対効果に優れている点や、燃転ポテンシャルが約32億㎥に達することを紹介し、需要家が前向きに投資判断できる環境整備を求めた。恩田氏は、燃転を推進していくにあたり一番のネックとして昨今の建築・資材コストの高騰を挙げ、「需要家の皆さまが前向きに投資判断できるよう継続支援・環境整備を求めていく」と話す。天然ガスへの燃転は、既存インフラを最大限活用できるe―メタンやバイオガス、クレジット活用など、さまざまな手段へシームレスに移行していく土台となり、50年に向けたガスのCN化にもつながる。「足元から着実に天然ガスを普及拡大、つまり燃転を進めることはとても重要な取り組み」と池田氏は言う。

JGAは、CO2排出削減と経済成長への貢献として、燃転と並び、省エネ・高効率なエネルギーシステムの普及拡大も後押ししている。その一つがガス空調やコージェネレーションなどを組み合わせたガスZEB(ネットゼロ・エネルギー・ビル)だ。勉強会において、最新の事例や制度動向を共有し、事例を紹介するウェブサイト「ガスZEBポータル」の掲載件数を42件から52件へ増やした。また、ガスZEBプランナー資格取得済みの事業者は15社に達し、プランナー会議で課題や事例の共有を進めている。

50年に向けたe―メタンによるCN化の取り組みは大手事業者を中心に進んでいる。e―メタンはCO2をリサイクルするため、環境価値の帰属を明確に定義しなければ削減効果のダブルカウントが生じてしまう。そのため、社会実装化に向けては国内外でのCO2カウントルール整備が前提となる。国内のカウントルールであるSHK制度では、利用者が排出ゼロとして報告できるように整理された。国際ルールに関しては、27~28年に策定・大規模改定が予定されるIPCCガイドラインやGHGプロトコルの議論を注視している。池田氏は「e―メタンなどCCU燃料の位置づけを確保するため、国内外の関係者への理解醸成に努めつつ、意見提出を通じてルールの検討に積極的に関与していく」と説明する。

GXへのガス事業の貢献 中小規模の事業者が鍵握る

このようにさまざまな取り組みを行ってきた。ただ、目標達成に向けて「最も重要なのは、全国の都市ガス事業者が協創し、同じ方向を向いて歩み続けること。大多数を占める中小規模の都市ガス事業者の行動が鍵を握る」と恩田氏は強調する。地方の中小事業者にとっては、e―メタンの実証などは設備や資金面から即座に取り組むことが困難だが、その地域に根を張り信頼関係を構築している金融機関や行政と連携することで、燃転や省エネの推進やカーボンオフセット都市ガスの導入など多様な手段を組み合わせ、50年のCN化に向けて足元から着実にCO2を削減し、脱炭素と経済成長の両立に貢献できる。

昨年発表したビジョンとアクションプランの策定に深く関わり、この1年間会員企業への浸透を進めてきた池田氏は、「地政学リスク、電力需要の増加といった問題が顕在化する一方、担い手不足、CN化への対応といった事業を取り巻く環境がより重みを増した1年だった」と振り返る。

今年4月に着任し、推進を継承する恩田氏は、「JGAの会員企業は、地域に根差し、人々の生活や産業活動を支えるエネルギー供給という大切な役割を果たしてきた。会員が志を一つにしてGX実現に貢献していけるよう、これらの取り組みを後押しし、その取り組みを今後も発信していきたい」と意気込みを語る。

JGAは今後も環境変化に柔軟に対応しながら、その時々で最適な、多様な手段を用いてGXに貢献し、50年のビジョン実現に向けてまい進していく。