目指すはLP託送業務革命 完全無人化の充填基地をオープン
【日本瓦斯】
「ニチガスが目指しているのは、地域の特性や増え続ける社会課題を解決するソリューションの実装。新しい技術を現場に導入し続けることで、新技術のトキワ荘や梁山泊になりたい」
手塚治虫を慕い、赤塚不二夫、石ノ森章太郎、藤子不二雄などの漫画界の巨匠が切磋琢磨したトキワ荘や、108人の英傑が集った中国文学の水滸伝に登場する梁山泊―。これらになぞらえて同社和田眞治代表取締役社長執行役員が目指しているように、社外を含むさまざまな能力を持った人々が連携してデジタルトランスフォーメーション(DX)技術を導入し、LPガスの充填・配送業務の効率化を進めているニチガス。その集大成ともいえる世界最大級のLPガスハブ充填基地「夢の絆・川崎」が3月16日にオープンした。
夢の絆は川崎市浮島地区にあり、基地の広さは約8700坪。最大充填能力は一般的な充填基地の100倍となる5万t/月で、14連全自動回転充填機を3基、30tのLPGタンクを2基、容器検査所、研修センターなどを完備。世界最大級の規模を誇っている。
充填業務の完全無人化 他社と連携し改革目指す
最大の特徴は、容器の仕分けや充填、車両および作業員の入退場といったバックヤード業務の管理を無人で行っている点だ。
そもそも同社には、LPガスの自動検針を行える「スペース蛍」というIoT端末がある。同端末は定期的に自社クラウドサービス「雲の宇宙船」に各種データをアップロードする機能を搭載。この機能を活用し、同社では作業員が手作業でチェックせずともLPガスボンベ残量を自動で識別するなど高度なデータ利用を行っている。
夢の絆ではこうしたデータの活用に加え、LPガスボンベに装着されたバーコードタグを基地各所に設置されているカメラで読み取ることで、AIが最適なレーンに自動で振り分け、千葉、神奈川、茨城県など首都圏各地にあるデポステーションへの配送で使用されるトレーラーもGPSやバーコードによる管理がなされている。積載するLPガスボンベの数量や基地レーンへの誘導などが全て自動的にドライバーに指示される。
また夢の絆のデータや各デポステの在庫データ、またその他保安情報や顧客情報なども、全て雲の宇宙船で共有されている。容器の検査から充填、車両への積載、配送先の指示、実配送など、LPガス託送の各工程で徹底したDX化を図ることで高度化を実現した。
和田社長は3月16日に開催した会見で「テクノロジーが世の中を変えていく。当社もやっと入り口に立てた。競い合う競争から、共に創り出す共創の時代に向かいたい」と話すなど、競合会社とも共創の輪を広げる意欲を示している。