再生可能エネルギーや蓄電池、直流送電を軸に電力ビジネス展開を狙うNTTと、大手電力会社の連携が加速しそうだ。舞台となるのは、東京電力パワーグリッドと関西電力送配電が8月5日に設立を発表した「スマートレジリエンスネットワーク(SRN)」。

この組織は、山地憲治・地球環境産業技術研究機構副理事長兼研究所長、森川博之・東京大学大学院工学系研究科教授、岡本浩・東電PG副社長の3人を代表幹事に、林泰弘・早稲田大学理工学術院先進理工学研究科教授(スマート社会技術融合研究機構理事長)、竹内純子・国際環境経済研究所理事兼主席研究員ら有識者5人が参加。企業からは東電PG、関電送配電のほか、中部電力パワーグリッドが現時点で参画している。
リリースによると、SRNで取り組むのは、脱炭素化やレジリエンス強化を目的に社会のさまざまなデータやリソースを結び付け、産官学の枠を越えて協力し合う、社会共創の基盤づくり。まずは「分散型エネルギーリソース(DER)の利用拡大」「DERを活用した地域レジリエンスの強化」「DERの事業機会創出」の3分野でワーキンググループを設け、幅広い業種の企業・団体などと議論を行っていくという。
ただ、これを見る限りは内容が抽象的で、SNRが具体的に何をどうしていきたいのかが、いま一つ見えてこない。
そこで代表幹事の山地氏に話を聞いたところ、「実は今回のポイントは、電力と通信の相互連携にある。地域の重要インフラとして両事業が結び付くきっかけにしたい」と解説。その上で、「NTTグループは、直流送電で自社インフラの活用を目指す目標を掲げている。これは大手電力会社の系統から完全に独立しているわけではなく、両者間の連携が必須になる」「これまでのVPP(仮想発電所)は構想・実証レベルだったが、(SRNの場を通じて)ビジネスとして育て上げていく。その意味で、特定卸供給事業者を対象とするアグリゲーターライセンスの導入が肝になる」と指摘した。
NTT系が参加を内定 改正電事法も後押し
日経新聞は6月30日付朝刊で「NTTが2030年度までに自前の発送電網を整備し再エネ事業に本格参入する」「25年までに年間1000億円程度を投資。29年度までの累計は1兆円を超える可能性がある」などと報じた。
これに対し、業界内外では「何とも大風呂敷」「日経お得意の針小棒大報道」などと見る向きがあったが、水面下では着々と準備が進められていたわけだ。既にNTT東日本、NTT西日本、NTTアノードエナジーがSRNへの参加を内定しているという。
SRNを巡っては、NTTがスマートシティ事業で業務資本提携を結んだトヨタ自動車のほか、九州電力や東京ガス、大阪ガス、ENEOSなども関心を寄せているとみられる。 先の通常国会で成立した改正電気事業法が、SRNを後押しするのは確実。電力新時代の幕を開くのか、今後の動きに要注目だ。