【事業者探訪】日本海ガス
都市ガスとLPガス供給で富山の経済と暮らしを支える日本海ガス。
人口減少、そして脱炭素という地域課題解決へさまざまな手を打ち出している。
北陸経済の中心地であり、ホタルイカやシロエビ、寒ブリなど海産資源に恵まれる富山湾に面し、立山連峰など自然を身近に感じられる富山市。豊富な工業用水と安価なエネルギー価格を武器に、製薬や機械、アルミ産業などを中心とする日本海側屈指の工業都市として発展を遂げた同市は、近年では、公共交通を軸とした「コンパクトなまちづくり」や「環境モデル都市」など先進的な取り組みで存在感を高めている。
日本海ガスは、同市のほか、高岡・射水市といった県西部を供給エリアとする都市ガス会社だ。モノ作りが盛んな地域だけに、同社のガス販売量の66%を工業用が占めており、産業界の環境意識の高まりに伴い、顧客数、販売量ともにこの10年間で4割伸ばしてきた。
土屋誠社長は、「東日本大震災後、エネルギー源を多様化するためガスエネルギーがクローズアップされたのに加え、2016年にINPEX直江津LNG基地からのパイプラインが運用開始となったことも、需要開発を頑張ろうという社内の機運の高まりにつながった」とした上で、「まだまだ燃料転換で地域の脱炭素化に貢献できる」と意気込みを見せる。

産業分野での取り組みは熱利用の燃料転換にとどまらない。電力小売事業には参入していないが、太陽光発電システムのPPA(電力販売契約)を手掛けるなど、顧客企業の脱炭素化のためのエネルギーソリューションにも注力している。担っているのは、「大切なお客さまのエネルギー利用を最適化し、生産コストを下げ競争力を高めるコンサルタント役」(土屋氏)だ。
W発電で家庭用に切り込み 県内資源でクレジット創出
一方、エネルギー競争という点では、新築住宅分野においても、他燃料との厳しい需要争奪戦を繰り広げている。その戦略の一つが、家庭用燃料電池「エネファーム」の普及拡大だ。21年には、新築時にエネファームを採用する家庭を対象に、太陽光発電システムを0円で導入できる「So―Raファーム」の提案を開始した。
今年の4月には、エネファームによるCO2削減分を同社が買い取りJクレジット化し、会員制ポータルサイト「Prego Club(プレーゴクラブ)」のポイントを進呈するサービスにも乗り出す。
脱炭素への貢献の一環として、北陸銀行の富山市内の11店舗にCO2排出実質ゼロの「カーボンニュートラルガス」の供給を始めている。市と同市内の森林組合の共同による「富山市カーボン・オフセット運営協議会」が作ったJクレジットでオフセットする。土屋氏は、「地域資源を活用することに意義がある」と強調。この取り組みをほかの森林組合にも広げ、クレジットを単に消費するのではなく、地域と協力しながら県内に森林を整備することでクレジットを創出、地域の脱炭素化に寄与していく考えだ。






