NEWS 01:23年度版エネ白書 燃料油補助継続に待った!
燃料油価格の激変緩和措置を、巨額の予算で長期間実施し続けることは現実的ではない―。
経済産業省は、6月4日に閣議決定した2023年度版エネルギー白書の中で、激変緩和措置の終了に向けた出口戦略の必要性を提起した。「岸田政権の政治事情でだらだらと続く補助金バラマキの無駄遣い政策に、警鐘を鳴らした」(大手電力会社幹部)として、同措置の弊害を知る関係者からは評価の声が高まっている。
燃料油価格の高止まりは継続中だ
白書は、「燃料油価格激変緩和対策事業」で約6・4兆円、「電気・ガス価格激変緩和対策事業」で約3・7兆円の国費が投じられたものの、世界的なエネルギー価格の高止まりに加え、歴史的な円安が進む中で、一時的な負担軽減策だけでは対応しきれないと指摘。その上でエネルギー資源の大半を海外産に頼る現行のエネルギー供給構造から脱却し、原子力や再エネといった準国産エネルギーを軸に、強靭な需給構造への転換を進める重要性を訴えている。
ただ、岸田政権には馬耳東風のようだ。一部報道などによると、政府・与党は今夏以降も燃料油補助を継続する方向で調整中。それまでに予算を使い切ってしまうことから、予備費の活用を念頭に新たな予算措置を検討している。「価格決定メカニズムを狂わせた激変緩和の罪は大きい」(石油関係者)。白書の提言は岸田政権に届くのか。
NEWS 02:東電が総特見直しに着手 柏崎刈羽・事業提携に注目
東京電力ホールディングス(HD)の経営再建を目指す「総合事業特別事業計画」の見直し作業が始まった。6月5日、大株主の原子力損害賠償・廃炉等支援機構の有識者会合が開かれ、東電HDの小早川智明社長らが出席。2021年8月に策定された現行・第4次総特の改定に向けた検討に着手した。
関係筋などによると、福島第一原発事故関連の費用が賠償や廃炉などを含め計23・4兆円と、現行計画の想定から1・9兆円も増加。これに対応するため、柏崎刈羽原発再稼働への取り組みを進めるとともに、他社とのアライアンスによる収益力の強化策などを検討する。
柏崎刈羽について、東電は13日、7号機の再稼働に向けた技術的な準備が整ったことを発表した。が、肝心の地元同意が得られる見通しは今のところ立っていない。同日、斎藤健経済産業相と面会した新潟県の花角英世知事は、「今も東電に対する県民の信頼は大きく損なわれていると思っている。信頼できる運営体制を構築いただきたい」と要請した。
関係者の間では「年内の再稼働がマスト。これが実現できない限り、第5次総特にしてもつくりようがないのでは」(元東電関係者)との声も。
一方、アライアンスを巡ってはさまざまな観測が流れている。東電パワーグリッドと大手通信会社、東電エナジーパートナーと大手エネルギー系販売会社、東電リニューアブルパワーと大手商社―。原賠機構は昨年12月にまとめた東電経営改革評価の中で、年4500億円の安定利益を確保すべく、JERAに続く包括提携の必要性を提起した。第5次総特では、この宿題にどんな答えを出すのか。再建の一環で上場廃止もささやかれる中、議論の行方に要注目だ。
NEWS 03:排出量取引義務化へ まずは法的課題を整理
政府が今夏以降、いよいよカーボンプライシングの制度設計に着手する。
特に排出量取引(ETS)を巡っては、2026年度から一定規模以上の企業に参加を義務づけ、さらに33年度以降はCO2排出量の多い発電事業者に対して有償オークションの段階的導入が決まっている。
ETSの検討に先駆け、経済産業省と環境省は、法的課題を整理する研究会を5月17日に立ち上げた。新制度導入前に平場でこうした法的な整理を行うことは珍しいが、経産省は「既存の延長ではなく、今までにない規制的な措置を導入するに当たり、実務上不都合がないよう最低限の整理を行う」(環境経済室)と狙いを説明する。
6月5日の会合では、憲法上の課題や考え方に関する骨子案と、行政法上の論点を提示。ETSは汚染防止などの目的ではなく、産業政策としてCO2を規制する措置だが、憲法が定める営業の自由、平等原則、財産権などと照らし合わせ、合理的な検討がなされれば直ちに違憲とはいえないことを確認した。
その上で委員からは、ETSは企業活動や財産に大きく関わることから、「予見可能性を高めるため、事前に基準を明確化し透明性を確保することが重要」といった指摘があった。
例えば韓国のETSでは、政府が排出枠の総量を定め、無償割り当ても実施。セクターごとに排出上限を設けるため同一セクター内でパイの奪い合いが起き、不公平性などを理由に多数の訴訟や異議申し立てが起きている。この事例が、多くの委員の関心を集めた。
ただ、日本でも政府が排出枠を割り振り、無償割り当てを導入するのか、といった方針は決まっておらず、あくまで「予断を持たず前広に検討するため」(同)の例示だとしている。
NEWS 04:エネ幹部が国際展示会で決意 脱炭素と安定供給の両立へ
エネルギー業界の今後を展望する国際展示会「ジャパン・エネルギー・サミット」が6月上旬に東京ビッグサイトで開かれ、大手企業の首脳らが脱炭素化と安定供給を両立する現実的な道筋を開拓する決意を国内外に向けて表明した。
テープカットに臨む東京ガスの笹山社長ら
東京ガスの笹山晋一社長は講演で、地政学リスクの高まりなどを背景に変化するエネルギー需給構造に触れた上で、「安定供給の確保と気候変動への対応の両立という非常にチャレンジングな事業環境にある」と説明。再エネ導入拡大に伴う出力変動問題にも触れ、「出力変動に柔軟に対応でき、CO2削減効果もある天然ガスの安定的な確保が現実的かつ重要なソリューションだ」と力説した。長期的には、水素とCO2から作る合成メタン「e―メタン」に置き換えることにも意欲を示した。
JERA常務執行役員の多和淳也氏も登壇し、安定供給や経済性に脱炭素化を加えた「トリレンマ(三重苦)」を成立させる課題に挑む必要性を説き、「再エネと低炭素火力を組み合わせ、最先端のソリューションを提供する」と力を込めた。また経済安保の観点から供給網の特定国への依存度を下げる課題が突きつけられる中、欧州委員会のカドリ・シムソン・エネルギー担当委員は日本に対し、「世界のエネルギー安全保障体制を設計する上で重要なパートナーの一つだ」と期待感を示した。