戦略的余剰LNG(SBL)の意義/洋上風力公募におけるゼロプレミアム
Q 昨年12月に開始した戦略的余剰LNG(SBL)の意義、実効性について教えてください。
A 本制度は、LNG需給ひっ迫対策であっても、電力需給ひっ迫対策ではないことに留意したいです。わが国は21世紀以降の複数回の大規模電源脱落に、石油火力たき増しで対応しました。当時、発電用重油は国内に180日程度の在庫があり、内航船やパイプラインで速やかな電力、燃料供給回復ができましたが、SBLはLNG火力大規模脱落時の効果は限定的です。採択事業者はJERAのみ、量はひと月あたり1カーゴと少ないです。国民負担額が気になり拡大できていません。本来は必要な守備力を定量設定し、LNGで不足であれば他手段を並行検討するべきでしょう。緊急時の実効性にも懸念はあり、「対象船腹をひっ迫エリアに仕向けるとして、船陸整合やひっ迫側タンク内ガスと船側ガスの性状整合性が確保されるのか」「内航船、小型船しか受入ができないLNG購入者への受渡はどうするのか」など課題があります。石油たき増しに比べ時間がかかるため、需給ひっ迫の備え万全とは言い難いです。
そもそもLNG火力の将来の位置付けが不透明なので、燃料調達、物流を維持しにくい状況は変わりません。短期限界費用で発電所の稼働を決めればよし、という従来発想のまま今に至り、同時市場検討でも同じ思考のまま(起動費、最低出力コストが加算されるが考え方は同じ)だと高限界費用電源であるLNG火力の稼働量が不透明になります。少量の洋上LNG船腹に燃料を貯蔵しても、電力ガスの安定供給維持には力不足です。総括原価時代の方が守備力は手厚く、LNG調達の予見可能性もあったということになりますが、それではシステム改革失敗の自認になるので、パッチワークが施されたことと私は理解しています。
回答者:阪本周一/東急パワーサプライ シニアフェロー
Q 洋上風力発電事業の公募で、1kW時あたり3円で入札する事業者が多いのはなぜですか。
A 促進区域における洋上風力発電事業の公募第1ラウンドでは、三菱商事グループのコンソーシアムが圧倒的な低価格で3海域を総取りしました。国民負担抑制の観点からは再エネのより安価な利活用が評価できるものの、例えば地域共生の観点からは、地元との合意形成に注力する事業者が落札できないことに対しての懸念が生じました。それを受け第2ラウンド以降は、調達価格のみで勝敗が決まらないよう、いくつか評価ルールの変更がなされています。
公募審査は、供給価格と事業実現性、両面での評価がポイントです。まず供給価格については、FIP制度が適用され、市場への売電のほか、需要家に環境価値と合わせて売電することが可能となりました。既に海外では需要家との相対取引を前提として、FIP制度のプレミアムを受け取らない落札事例が出ています。このようなケースも想定し、市場価格を十分に下回る価格(ゼロプレミアム水準)として1kW時あたり3円が示され、この価格以下での入札は価格点が満点となることが決まりました。第2ラウンドでは12社中9社がゼロプレミアム水準である1kW時あたり3円の入札により価格点の最高評価を獲得しました。
事業実現性については、これまでのルールでは差がつきにくかったという反省から、公募海域ごとに最高評価を受けた事業者の評価点が満点になるように補正されるようになりました。つまり、供給価格は差が生まれにくくなり、事業実現性は差が生まれやすい評価ルールとなったのです。現在公募中の第3ラウンドでも供給価格がコミットできる事業者は限られる一方で、1kW時あたり3円入札は落札の必須条件となるでしょう。
回答者:桑畑みなみ/NTTデータ経営研究所 社会・環境戦略コンサルティングユニットマネージャー



