イオングループの中核企業としてショッピングモールを展開するイオンモール。
電力需要は膨大であり、非常に高い再エネ導入目標を掲げている。
【インタビュー】渡邊博史/イオンモール 地域サステナビリティ推進室長、イオン 地域サステナビリティ推進担当リーダー
―太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入で高い目標を設定していますね。
渡邊 イオンモールは2025年に実質再エネ100%を目標に掲げています。と同時に再エネの「自給率」を25年に20%、30年に45%、40年に100%という「地域での自給自足」を目指しています。
―具体的な取り組みを教えてください。
渡邊 イオンモールの電力需要は年間約14億kW時(直営モール)です。イオンモールの敷地内に太陽光パネルを敷き詰めただけでは2~3割しか賄えません。そこで22年9月から「イオンモールまちの発電所」の取り組みを進めています。自己託送方式による低圧・分散型太陽光発電のオフサイトコーポレートPPAです。全国各地に1390カ所の発電所を持ち、再エネ自給率は23年に10%となりました。
強みとしては、需要が大きいことから価格交渉や技術面でスケールメリットがあることです。一方で、各送配電事業者とのやり取りは複雑で苦労しています。
―ほかにはどのような特徴がありますか。
渡邊 地域完結にこだわっていることです。イオンモールが存在する地域で発電することで雇用が生まれ、地域経済の発展につながります。地産地消を目指し、旧一般電気事業者のエリアを一つの単位として地域間融通は行いません。
われわれの最大目標は「お客さまの幸せ」です。住んでいる地域が脱炭素を実現するポテンシャルを秘めていることを知り、行動してもらうことが、その目標に直結すると考えています。地産地消の再エネ自給自足を目指すことは、あくまで手段に過ぎません。
EVを「動く蓄電池」として 脱炭素が経営に与える影響
―「お客さまの行動」という点ではV2H(ビークル・トゥ・ホーム)を進化させた「V2AEON MALL」サービスも画期的な取り組みだと思います。
渡邊 家庭で発電した余剰電力を電気自動車(EV)からイオンモールに放電していただくと、その行動に対してポイントを進呈します。23年5月、関西地区の3店舗で開始しました。イオンモールは国内で1842基のEV充電器を設置しています。社会実装研究として東京大学とも連携しており、今後もお客さまの環境意識を行動につなげるサポートができればと考えています。
―イオンモールの野心的な取り組みの背景には何があるのでしょうか。
渡邊 一つは中長期的観点から炭素税などのカーボンプライシングを想定した場合、電気料金が経営に大きなインパクトを与える可能性があることです。もう一つはサステナビリティを目指した取り組みを早急に行わなければ、企業として誰からも選択されなくなるという危機感です。