FITの自家消費型「新制度」に対応 停電時に自立運転機能を活用へ


【メーカー編/デルタ電子】

デルタ電子は、低圧太陽光発電PVが設置できる小規模事業者や店舗、企業の支店などを対象に、ハイブリッド蓄電システムを展開する方針だ。

その背景には、今年度から10 kW以上50 kW未満の低圧事業用太陽光には、「自家消費型の地域活用要件」が新たに設定されたことが挙げられる。事業者がFIT認定を取得するには、太陽光で発電した電力の30%以上を自家消費すること、また停電時に最低限の電力が使えるよう自立運転機能を装備することが必須条件となった。つまり、災害時の自立電源として太陽光の役割が大きくなったといえる。

電力の自給率アップが期待される「SAVeR-AC」

同社が展開するハイブリッド蓄電システムは、従来から販売してきた住宅向けシステム「SAVeR‐H(セイバーH)」が軸となる。PV、蓄電池をはじめ、PVと蓄電池を合わせて制御できるハイブリッドパワーコンディショナ(PCS)で構成されており、PVで発電した電力を自家消費しながら蓄電できる点が最大の特長だ。

従来型の蓄電システムは、PVの電気を自家消費か蓄電か、どちらか一つずつしか運用できない。同システムは、PCSに組み込まれたDCバスバー(直流回路)を大容量化したことで、PVが発電した電力を、自家消費と蓄電の同時運用が可能になった。

例えば、最大容量6kWのPVがフル発電した場合、3kW分を住宅内で消費しながら、残り3kW分を充電できる。夕方など日照が不足している場合、PVと蓄電池からの放電を合わせて需要を賄う。さらに、200V出力に対応しており、家中のコンセントを使うことも可能だ。停電が数日続いたとしても、日照があれば住宅内の電力需要を賄える。

最大3台を一括制御 低圧事業用に活用

この「セイバーH」は、PCSを含めた最大3台まで組み合わせての一括制御が可能だ。そのため、事業者の電力消費量や必要とする蓄電容量などに合わせ、低圧事業用としても活用できる。「設置方法や太陽光モジュールにもよりますが、400㎡あれば、40~50 kW程度の太陽光モジュールの設置が可能です。こうした施設には未設置の箇所が多く、これから導入の余地があります」。エナジーインフラ営業本部の高嶋健マネージャーはこう話す。

同社は、今年の年末ごろをめどに、さらなる進化形システムとして、連系機能付き蓄電池「SAVeR‐AC(セイバーAC)」を発売する予定だ。プライベートグリッド機能「マイデルタ・ソーラーグリッド」を使い、停電時にはPCSとセイバーACが連系モードで再起動。通常時と同様に連系モードで運転するので、PVで発電した電力を利用できる。

現時点では、停電時にはPV用PCSとセイバーACの1台ずつの接続に限られているが、将来的には複数台をつなげられるようにする予定で、「50 kW未満のPVを使い、停電時にはEVを蓄電池として使った充放電が可能になる」(高嶋マネージャー)という。自立運転・自家消費の仕組みを最大に生かし、レジリエンス力を向上させる取り組みが続いている。

「連携」「自助・共助」を強化へ 非常時エネ供給の新たな方策


災害と感染症に立ち向かうべく、エネルギー業界が対策に乗り出し始めた。

一方、需要側でも非常時のエネルギー供給を維持する取り組みが進んでいる。

近年、自然災害が激甚化し、被害が広範囲に及び、復旧が長期化するケースが出ている。こうした状況の中、今や企業、自治体の連携が欠かせない。

電気事業連合会は6月16日に開かれた総合資源エネルギー調査会の電力レジリエンスワーキンググループで、「災害時連携計画案」を公表した。この中で、事業者間の応援体制がうまく機能するよう、一般送配電事業者間で復旧工法や電源車仕様の統一化、現場情報収集のシステム化などを進めていく方針だ。また、各事業者は、倒木処理や道路復旧といった役割分担や連携方策について、各自治体との協議も進めている。

一方、近年の災害では、想定外の被害が発生する事態が多く、「自助」「共助」につながる自立分散型システムを活用する動きが出始めている。東京電力ホールディングスとNTTが共同出資するTNクロスは、NTTアノードエナジーなどとともに、千葉市でレジリエンス強化に向けた取り組みを進めている。今年度から3年間かけて、避難所となる小中学校など182カ所に太陽光発電(PV)とリチウムイオン電池を設置。施工・運用費はTNクロスが負担し、平常時には、PVで発電した電力を自家消費で使う電力購入契約(PPA)により、20年契約で運用しながら、災害時の非常用電源として活用する。

需要家側の対策強化 自家設備を有効活用

将来的には、NTTが持つICT技術を活用し、各避難所の需要やPV発電量、蓄電池の充放電量などを遠隔管理し、分散型エネルギーネットワークの構築を目指す。また、避難所の収容人数や設備などの情報提供は、避難所の「密」を防ぎ、感染症対策にもなる。

NTTビルに設置するPVと蓄電池からの直流自営線による電力供給や社用EVの電源活用も計画中だ。髙瀬憲児社長は「住民や地元企業と行政が相互で連携できるエネルギーと通信のネットワーク整備を進めていきたい」と話す。

災害時のエネルギー供給を需要側で継続させられる仕組みも整い始めた。I・T・Oは、LPガスに空気を混合して都市ガス仕様のガスを作る機器を展開する。これまではガス事業者が操作する必要があったが、タッチパネル式の制御盤を開発して作業を自動化。既存の都市ガスを混入させない独自開発のバルブを取り入れ、安全に操作できる体制を整えた。

家庭用機器にも停電時に電力供給を継続させる機器が登場している。パナソニックは、エネファームで発電したAC(交流)の電気をDC(直流)で蓄電池に出力するユニットを開発。新型機のオプションにラインナップし、電力供給維持の機能を強化した。デルタ電子は、PV電気を自家消費しながら、同時に蓄電できるシステムを構築。数日間の停電に耐えうるシステムとして展開する。 供給側、需要側ともに、非常時に立ち向かう新たな方策が求められている。

IoT化が進むガス検知器 遠隔監視で保全業務を効率化


【メーカー編/理研計器】

無線通信技術が発達する昨今、IoT化の波は、ガス検知器などの保安機器を大きく進化させている。

ガス保安機器の大手メーカー・理研計器は6月9日、ガス検知器を遠隔管理する無線ガス検知部用モニタリングステーション「STWL-P」を発表した。同機器は、無線通信機能を持つ定置式のガス検知部「SDWL-1シリーズ」が検知した情報を受信し、各警報機のガス濃度値やアラーム状態、警報履歴を一括で管理する。最大20台のガス検知部との接続が可能で、各機器の遠隔監視ができる。

無線ガス検知部用モニタリングステーション「STWL-P」(右)と定置式無線ガス検知部「SDWL-1」シリーズ

大型災害からの復旧時には、インフラの撤去や修理作業が発生する。SDWL-1シリーズのような無線式のガス検知器は、電源を確保する配線が必要ないため、災害を想定して設置されているケースもある。

営業技術部の杉山浩昭課長は、STWL-Pにより「検知部の通信も難しくなく、緊急時に簡単にネットワークを構築できます。そのため、災害時のバックアップとして、重要な役割を果たせます」と説明する。加えて、STWL-Pは100VのAC電源で動作するため、場所を選ばずに運用できるのも大きな特長と言える。

国内初の通信機能搭載 緊急時も無線で自動連絡

IoTの波はポータブル型のガスモニターにも到来している。同社は2018年10月、新型のセンサーを搭載したポータブル型ガスモニターのフラッグシップモデル「GX-3Rシリーズ」をリリース。その上位機種「GX-3R Pro」には、国内メーカーでは初となるBluetooth通信機能を搭載した。

Bluetooth機能は、専用アプリ「RK Link」との通信に使用することができる。作業員が持つスマホやタブレットに同アプリをインストールすることで、ガス警報などの情報を管理者側の端末に自動送信することができる。

さらに、端末にGPS機能があれば作業員の位置情報も送信することができるほか、作業員が事故などに遭い一定時間動けない状態が続いた場合、管理者へ緊急警報を自動送信する機能も搭載している。また、可燃性ガス、酸素、硫化水素、一酸化炭素に加え、二酸化炭素または二酸化硫黄の全5成分に対応している。

杉山課長は同シリーズについて「エネルギー業界のみならず、建設作業員や化学プラント、工場の保安点検など幅広い業種で利用され、着実に導入が進んでいます。通信機能の評判は良く、今後も機能拡充を図っていきます」と話す。消防や警察など、災害の最前線に立つ職種での採用例もある。

こうした現場のニーズを受け、今年4月に発表した1成分または2成分の検知が可能なポータブル型ガスモニターの最新モデル04BTには、Bluetooth機能を標準搭載。専用アプリ「RK Link」との通信に対応している。 災害からの復旧時に、現場作業をアシストするソリューションとして、通信機能を持つ保安機器が大きく貢献しそうだ。

オペレーションを自動化 簡単操作のガス供給復旧システム


【メーカー編/I・T・O】

災害時に電気やガスの供給が停止した際、特に病院や福祉施設、避難所などの重要施設には、早期の供給再開が求められる。だが、状況次第ではエネルギー事業者がすぐに到着できないケースもある。

ガス供給機器メーカーのI・T・Oはそうした状況を踏まえ、防災減災対応システム「BOGETS(ボーゲッツ)」を展開している。営業開発部の大野克美部長は開発の経緯について、「自助、共助の観点から、オペレーションを自動化して誰でも操作できる仕組みにしました」と説明する。

タッチパネルで簡単な操作が可能だ

同システムには、同社の独自技術を存分に詰め込んだ。主力製品であるプロパン・エアー(PA)ガス発生装置「New PA」は、あらかじめ備蓄しておいたLPガスに空気を混合し、都市ガス(13A)と同等のPAガスを製造する。

最大の特長が、需要家が簡単に操作できる点だ。タッチパネル式制御盤を使い、モニターに表示される手順と音声に従って操作すれば、誰でも簡単に都市ガスを仮復旧することができる。PAガスを使えば、都市ガス仕様のGHPやガス調理器などが使える。

電源確保の重要性 避難所の価値向上へ

また、安全性を確保する仕組みも盛り込んだ。ワンウェイロックバルブは、都市ガス側のバルブを閉じてスライドレールを移動して固定しなければ、PAガス側バルブが開かない。これにより、都市ガスにPAガスが混入するのを防止できる。さらに、配管に空気が入った際には、栗田工業と共同開発したパージユニットでガス成分とガス臭を除去し、安全なガスの大気放出も可能だ。

「BOGETS」の構成機器で、もう1点欠かせないのが、LPガス発電機やマイクロガスコージェネといったガスの発電システムだ。電源を確保することで、「BOGETS」の制御盤の稼働をはじめ、携帯電話の充電や照明など、最低限必要な電化製品が使用できる。

「ガスと電気の供給が両方とも継続できることは、避難所の付加価値の向上になります。また、災害時に避難所などの供給が復旧できていれば、エネルギー事業者はより重要な拠点に人員を回すことができます」。髙野克己常務はこう話す。高野常務は仙台市に行った際に東日本大震災に遭遇。停電でカード決済やビルの入館セキュリティカードが使えなかった経験から電気の大切さを実感したという。

安全性を確保するワンウェイロックバルブ

同社は、東大阪市にある本社、東京支店、名古屋支店に展示室を設けており、企業や自治体、設計事務所、都市ガス事業者など多くの関係者が見学に訪れている。導入先も順調に増えている。都市ガス会社の技術研究所をはじめ、給食センターや工場に採用されたほか、自治体が避難所となる小中学校に「BOGETS」を整備する大規模導入も予定されている。

2019年度のコージェネ大賞では、操作性と安全性を向上させた点が評価され、技術開発部門の特別賞を受賞した。災害時の「自助・共助」が重要視される今、同システムの普及が防災対策の強化につながることが期待される。