【西部ガス】
新型コロナウイルス感染症が全国に広がりつつあった2月下旬、西部ガスは、非常事態を見据えた準備本部を立ち上げ、4月上旬には「第一次非常体制」に移行した。その後、政府により発令された「緊急事態宣言」を受け、感染対策を強化していった。
テレワーク推奨など出勤への自粛要請があっても、ガスの安定供給を使命とするガス会社は、事業の継続が大前提だ。同社は、安定供給に直接関わるガスの製造部門、供給部門従事者への感染を回避するため、①自家用車通勤、②交替勤務者の業務の引き継ぎには大型モニターを使い一定の距離を確保、③マスクの着用・換気の徹底、④執務室への入室要件を強化―など、新型コロナの特性に合わせた社内体制を取った。
LNG船からの原料調達の際も船陸双方の接触を避け、必要な連絡は電話やデータのやり取りで行うといった対応に切り替えた。
熊本地震での経験から対策 感染防止がBCPの鍵に
西部ガスの供給エリアは、福岡・北九州、熊本、長崎、佐世保の四つのエリアに地域が分散しており、一つのエリアが有事の際は、ほかのエリアから駆けつけて対応することができる。だが、熊本地震の際には熊本エリアのほぼ全戸の供給が停止し、自社だけでの対応が困難となった。こうした中、全国のガス会社からの応援を受けて早い復旧を実現することができた。
総務広報部総務グループの森本泰臣マネジャーは、「復旧応援を受け入れる際のノウハウはできたものの、今後は感染防止策も加えなければなりません。他社への応援が発生した場合も、自社で対策を取った上で応援に向かう必要があります」と、複合災害への対策を早急に取りまとめているという。
一方、社内では、医療従事者への自発的な募金活動が起こり、福岡県を通して約660万円の支援金を送った。沼野良成執行役員は、「一人ひとりが、インフラ企業でエネルギー供給事業に従事している責任を感じています。医療従事者の方々が不眠不休で現場を支える姿が、災害復旧時の自分たちの姿に重なったのでしょう」と話す。
ウィズコロナの時代、社員の感染防止という課題は、BCP対策の重要な鍵になっていく。