【特集2】多様化する通信環境を安全運用 制御系を守るSIMを開発


【NTTコム】

近年、ネットワークにつながるデバイスを狙ったサイバー攻撃が増加している。NTTコミュニケーションズはセキュリティー機能搭載のSIMを開発し制御系の安全を守る。

商用化が進む5G(第5世代移動通信システム)は4Gと比較して、「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」という特長を持つ。

多様なニーズに応じられるよう、通信事業者によるサービスとは別に企業や自治体などが自営の5Gネットワークを構築できるローカル5G制度が整備された。これにより工場やプラントでもローカル5Gを構築し、ドローンによる遠隔警備や点検、巡視ロボットなどを導入してDXを加速させている。

SIMにセキュリティー内蔵 ITもOTもトータルで守る

5GはWi―Fiを使用した通信に比べ盗聴や改ざん、なりすましが難しいというメリットがある。だがSIM(加入者識別モジュール)を不正利用されたり機器が乗っ取られたりするリスクはある。

製造機器などのOT(制御系)デバイスは、機器の仕様によりセキュリティーソフトを導入できないことが多い。同社は、セキュリティー機能を搭載した「eSIM」をトレンドマイクロ社と共同開発した。あらかじめeSIMとOTデバイスの正しい組み合わせを登録しておけば、eSIMが別のデバイスで使用されるとサーバーから管理者に通知が届く。不正な通信を検出すれば遠隔で通信を遮断することもできる。セキュリティーソフトを組み込めなかった機器も安心してネットワークにつなげるようになる。

だが、気を付けなければならないのは、新しい通信やシステムの導入が進むと接続するデバイスが増え、ネットワークが多様化、複雑化していくことだ。ランサムウェアはこうしたネットワークの脆弱な部分を狙って侵入し、システムを乗っ取り高額な身代金を要求する。特定の企業を狙う標的型サイバー攻撃も国内外で増えている。

NTTコミュニケーションズ(NTTコム)はこうした攻撃に対し、IoT/OTデバイス、ネットワークのセキュリティーを強化。工場や重要インフラを支える制御システムをどう守るかについて、全体を統合したセキュリティーを提案する。

スマートファクトリー推進室の村上佳子担当課長は、まず現状を把握し評価するアセスメントを行い、次にリスクに対する対策を施し、さらに24時間365日の監視体制で攻撃に早期に対処できる仕組みを作ることが重要だと強調する。NTTコムはこれらサービスを一気通貫で提供している。

大手電力からは送配電設備も含めてどう守っていくかという相談も受けている。同社は複雑化する工場やプラント内のネットワークセキュリティーを底上げし、運用までをサポートしていく構えだ。

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産業用OTの導入によりつながる制御システム

【特集2】目指すは「ゼロカーボンシティ」 水素利活用の好循環モデル構築


【北九州市】

北九州市は、街中を走るパイプラインを使った水素利用の実証を行う。 低コスト・CO2フリーの水素をつくり、イノベーション創出に力を注ぐ。

官営八幡製鐵所の創業の地である北九州市東田地区は、近代産業発祥の地としての面影を残し、今も工業地帯の風景が広がる。環境問題に古くから積極的に取り組んでおり、現在は脱炭素社会に向け、環境と経済の好循環によって都市や企業の競争力を高め、国内外の脱炭素に貢献する成功モデルを構築するべく取り組んでいる。

産業都市の利点を生かし 水素利用に早期に取り組む

2009年、経済産業省の「水素利用社会システム構築実証事業」において水素タウンプロジェクトが発足した。岩谷産業やENEOS、東京ガスなどが名を連ねる「水素供給・利用技術研究組合(HySUT)」(当時)が主体となり、東田地区にコミュニティーレベルで水素を活用するエリア「北九州水素タウン」を構築。福岡水素エネルギー戦略会議などが協力をしながら、14年度まで水素パイプラインによる水素供給技術の実証を行った。

水素タウンエリアには、ホームセンターや水素ステーション(水素ST)、市営の博物館や居住可能な水素燃料電池実証住宅などが建つ。

実証では、東田地区が工業地帯であることが水素の調達面で奏功した。同地区にある日本製鉄が協力し、工場プロセスの中で利用している水素の一部を水素タウンまで1・2kmの長さのパイプラインで供給。水素タウンに設置した燃料電池14台を活用し、①水素パイプラインによる水素供給技術、②純水素型燃料電池などの多用途・複数台運転、③水素を燃料とするフォークリフトや燃料電池アシスト自転車、スクーターなどの走行―の実証を行った。

約4年間に及ぶ実証の後、設備は岩谷産業に譲渡。18年から引き続きパイプラインで水素を供給し、①普及型燃料電池の実証、②水素ガス不純物分析計の実証、③水素センサーによる漏洩監視システムの開発、④超音波式水素ガスメーターの実証、⑤高濃度低圧水素用ステンレス配管システムの開発―など、九つの技術実証を行っている。水素を供給し利用する実証から、社会実装に向けて水素関連の周辺機器の開発・技術実証に前進した格好だ。

一般消費者に対しても、移住希望者がお試しで入居できる水素燃料電池実証住宅に新型の燃料電池を設置。パイプラインで供給する水素を一部利用して生活してもらうなど、広く水素への関心を高めている。

響灘地区・東田地区の実証事業の概要

既存の再エネで水素をつくる 環境省の実証事業を開始

北九州市は、環境省の「既存の再エネを活用した水素供給低コスト化に向けたモデル構築・実証事業」に採択され、水素の製造・運搬・利用の実証にも取り組んでいる。20~22年度にかけて、響灘地区の太陽光発電や風力発電と、市内にあるごみ発電(バイオマス発電)といった複数の再エネの余剰電力を有効活用することで、CO2を発生させずに低コストの水素をつくり、県内各地の水素STなどに運んで利用する。

代表事業者は、北九州市が出資する地域新電力の北九州パワー。水素製造とエネルギーマネジメントシステムの開発をIHIが担当する。製造したCO2フリーの水素は福岡酸素とENEOSが東田地区の水素タウンや水素ST、久留米市や福岡市の水素STに運び利用している。北九州市と福岡県は実証フィールドの提供や関係機関の調整を担う。

一方で北九州市は、25年度までに、市内全ての公共施設約2000施設を、ごみ発電を中心とした市内の再エネ発電所の電力で100%賄うことを目指す。自家消費型太陽光発電やEV・蓄電池、省エネ機器を第三者所有方式で導入して再エネを普及する「再エネ100%北九州モデル」を推進し、全国自治体の再エネ導入のトップランナーとなることを目標に掲げている。

北九州市環境局グリーン成長推進部の玉井健司水素戦略係長は、「ゼロカーボンシティの実現に向け、北九州市のグリーン成長戦略を策定し、産業都市としての特徴を生かした、産業競争力の強化と脱炭素化を実現する好循環モデルをつくりたい」と、事業への意気込みを語る。脱炭素に向けて水素の利活用を検討している需要家側からの問い合わせに応じ、メーカーなどの参画企業をマッチングする役割も担う。技術開発のフィジビリティスタディーを支援し、イノベーション創出に向けた企業支援に力を注ぐ。

玉井係長は、「水素をつくるのは技術的に難しいことではないが、何にどう使うかが需要拡大の鍵だ」と強調する。それには水素が低コストであることが欠かせないとし、響灘地区の取り組みの重要性を説く。再エネ電力の調達コストを下げることも視野に入れ、「経済性の高い脱炭素エネルギーを市内に安定供給して、脱炭素電力の推進と、水素を利活用できる町を目指す」。それを支えるイノベーションの創出をパッケージ化して、成長を続けるアジアを中心とした海外マーケットへの展開も視野に入れている。

【特集2】再エネの余剰電力を最大限活用 国内初の水電解型EMS実証


【IHI】

低コスト、CO2フリーの水素が実現しようとしている。 北九州市響灘地区でのIHIの技術を結集した取り組みを紹介する。

産業都市であり水素の製造や需要のポテンシャルが高い北九州市では今、環境省の委託により「北九州市における地域の再エネを有効活用したCO2フリー水素製造・供給実証事業」が行われている。製造の中心となる技術は、「水電解活用型エネルギーマネジメントシステム」だ。開発を手掛けるのはIHI。ごみ発電(バイオマス)を含む、太陽光、風力といった複数の再生可能エネルギー由来の電力を制御して、水電解装置でCO2フリーの水素を製造するエネルギーマネジメントシステム(EMS)としては、国内初の取り組みとなる。

ごみ発電は電力量のコントロールが難しく、発電計画と異なるインバランスが発生するという課題がある。余剰電力を水素に変えて活用すれば、エネルギーの有効利用につながることに。また響灘地区には太陽光・風力発電の設備が多いことから、複数の再エネを同時に制御するEMSの効果が期待できる―。そんな発想が開発のきっかけになった。

実証では、ごみ発電の余剰電力を想定した消費電力指令値をベースとし、合計出力9kWのマルチレンズ風車、合計出力45 kWの追尾型太陽光発電からの電力を制御して、水電解装置によりCO2フリーの水素を製造する。太陽光や風力の電力は不安定なので、これをうまく活用するために出力50 kWの蓄電池を組み合わせる。

パイプラインで水素供給 EMSが最適制御

EMSでは、ごみ発電からの消費電力指令値の変動や太陽光・風力の変動電力に対し、水電解装置と蓄電池のどちらを割り当てるかを最適制御する。リアルタイムで蓄電池の充放電と水電解装置の消費電力の制御を行いながら、三つの再エネ電力を最大限に利用して水素を製造する仕組みだ。

実証運転では、水電解装置で10Nm3/時の水素を製造して、内容積37 m3の水素中間貯蔵タンクにためる。これを圧縮機で20MPaまで圧縮し、移動用の水素カードルに貯蔵する。1週間の実証運転で製造する水素はカードル1基分で、FCV2台のひと月分ほどに当たる。これを東田地区に運び、水素パイプラインを通じて水素タウンで活用するほか、東田地区や福岡市、久留米市の水素ステーションや物流施設のフォークリフトで利用する。

カーボンソリューションSBU基本設計部の谷秀久主査は「再エネが多い北九州市で、出力制御などの余剰分を水素に変えて活用することで、北九州市が目指す『ゼロカーボンシティ』を実現する一助にしていきたい。また、日本の脱炭素化に貢献したいと思っています」と意気込みを語った。

IHIの実証実験は2020~22年度まで

【特集2】POS内蔵水素充てん機でセルフ対応 独自開発のノズルで運営をサポート


【タツノ】

充てん機の設置場所に合わせた豊富な製品ラインアップを持つタツノ。アフターサービスにも力を入れ、手厚いサービスを提供する。

タツノのFCV用高圧水素ディスペンサー「HYDROGEN―NX」シリーズは、運営用途に合わせて最適なタイプを選べるよう豊富なラインナップを用意している。国内で多くの水素ステーション(ST)で採用されている「L」タイプをはじめ、複数箇所の水素STで充填運用が可能な移動式の「M」タイプなどがある。フォークリフト専用35Mpaの機種も取りそろえ、市場に合わせた製品展開を進める。国内の約160カ所の水素STでは、タツノ製ディスペンサーが過半数を占めるほど好評を博している。

タツノ製ディスペンサーの大きな特長は、POSを内蔵した非防爆モデルがあるという点だ。国内では限られたスペースに水素STを建設することが多く、POSを内蔵することで省スペース化になるうえ、1カ所で充填と精算ができれば利便性も高まる。

コスト削減の一環として遠隔監視型の無人セルフ水素STで運用する場合にも、このモデルの活用が見込まれる。

もう一つ、タツノ製だけの特長として充填ノズルが自社製という点が挙げられる。ノズルには、より早く安全に水素を充填するために通信を行う赤外線通信受光部(IR受光部)が組み込まれている。IR受光部とノズルの製造元が異なると、IR受光部の故障発生時にはノズルごと取り外し工場に持ち込んで修理を行うため、その間充填ができなくなり、営業に支障を来すことになる。タツノのノズルは自社製のIR受光部を内蔵しており、故障が発生した際に現地での交換が可能。運営者にとっては販売機会の損失が少なくなるメリットがあるわけだ。

POS内蔵の水素ディスペンサーはタツノ製だけだ

サービス面でも安心を提供 FCトラックの登場も視野

タツノは販売後のメンテナンスにも力を注ぐ。ガソリン計量機でも共通するポリシーとして「迅速なメンテナンス」を掲げる。これは国内外共に同様で、特に国内約80カ所のサービス拠点数は業界トップを誇る。水素事業部の小嶋務部長は「できる限りメンテナンスを理由に運営を止めずに済むよう、引き続きアフターサービスに力を注ぐ」と語る。

今後の課題は大量充填への対応だ。業界では、大型トラックに関してはFC化が有望だとされている。EV化ではバッテリーを大量に積む必要があり、荷物の積載量が少なくなってしまうからだ。水素技術開発部の木村潔次長は「FCトラックが登場すれば、大量の水素を短時間に充填することが求められるでしょう。その要望に応えられるディスペンサーの開発を進めたい」と言う。来るFCトラックの時代を見据えている。

【特集2】発想「大転換」の再エネ推進策 既存設備と連携し最適制御


既存のインフラを生かし、太陽光や風力を主力化する新発想が生まれている。 「分散型コージェネ」を使った再エネ共存策のアイデアもある。

東光電気工事のクロス発電 新発想「光×風」の真骨頂

「クロス発電」という耳慣れない言葉がある。クロス発電とは、太陽光発電と風力発電を効率よく制御して、一つの連系枠を有効に利用するシステムのことだ。こんなユニークな仕組みの再生可能エネルギー発電が動き出している。2020年9月から福島県飯舘村で「いいたてまでいな再エネ発電所」が国内初のクロス発電所として、運転を開始している。

いいたてまでいな再エネ発電所。「までい」は「物を大切に」「心を込めて」の福島の方言

始まりは太陽光発電所としての稼働だった。11年の東日本大震災後、全村避難となった飯舘村の遊休地を利用して太陽光発電所を建設する案が浮上。復興のシンボルとなるべく、東光電気工事と飯舘村が共同出資して「いいたてまでいな再エネ発電」を設立した。

牧草地だった約14 haの平地に太陽光パネル約4万5000枚を設置。パネル容量が1万1800kW、連系出力1万kWの太陽光発電所として、15年3月に運転を開始した。

東光電気工事は建設に取り組む中で、培った風力発電の知見からこの地が風力発電の適地であると予想。太陽光の運転開始後に風況観測を開始した。

太陽光発電は夜間や曇天では発電量がほぼゼロになる。契約容量は1万kWでも全体の設備利用率は14%程度だ。一方、夜間や天候が悪い日にも風は吹く。晴天時には風が弱く、風の強い日には天気が悪いという気象の特徴からも、太陽光と風力は補完し合える。設備未利用の約86%分を風力発電で補えば、発電量は増やせる。

こうして1990年代から風力発電の建設にかかわってきた同社のノウハウを生かし、敷地内に3200kWのGE社製風車2基の建設が実現した。

独自開発の制御システム 安定した再エネ電源を目指す

同社は、変動する二つの再エネが契約容量を超えないようコントロールする制御システムを開発した。実際の発電の変動に合わせて24時間365日、双方の設備を自動制御している。タイムラグも計算するリアルタイム制御だ。太陽光と風力のどちらを優先させるかも設定できる。

この再エネ発電所はクロス発電で、年間の太陽光発電量は約1200万kW時、風力発電量は約1100万kW時の実績となり、発電量は倍になった。太陽光発電を効率良く補う風力設備の導入で、出力制御が必要だったのは全体の1%程度と、ロスもほとんどなかった。

クロス発電の発電量推移

クロス発電は、契約容量はそのままで、二つの再エネを稼働できることがメリットとして挙げられる。同発電所は、契約容量が1万kWのところに風力を6400kW増設した上で、両方の出力をコントロールして1万kW以下で発電している。

初の取り組みを巡って、東北電力とは協議を重ねた。太陽光と風力の買い取り価格は異なるため、契約メーターの手前に個別にメーターを取り付け、それぞれの発電の割合で契約をしている。発電量は全量を東北電力に売電。収益の一部を村の復興に役立てる。

再エネ事業部の原隆之営業部長は「今ある容量の枠を無駄にせず、有効に活用するにはどうしたらいいか、というのがクロス発電の発想」と話す。国が目指す30年の再エネ電源構成比率24%を目標に、送電網を強化する取り組みの一方で、クロス発電を導入すれば設備更新を抑えつつ再エネ電源を増やしていくことができるのだ。

発電量推移のグラフを見ると、クロス発電を導入しても設備利用率は30%程度。契約容量にはまだ余裕がある。原部長によると、クロス発電で再エネをさらに増やす場合、安定的な水力やバイオマスなどをベース電源として組み合わせ、変動部分を太陽光と風力で補うことも可能だという。

「培ったノウハウでお手伝いし、連系枠を有効に活用してもらいたい。再エネを拡大させながら社会的コストの削減に貢献できると考えています」

現在は1サイトでの活用だが、連系協議が認められれば離れたサイトを一つの連系枠で接続するなど、活用の幅も広がる。復興のシンボル、いいたてまでいな再エネ発電所は、連系容量を有効に活用して効率良く再エネを供給する新しいモデルになりそうだ。

「再エネ×コージェネ」 二つの分散型の親和性

需要地で熱と電気を発生させるガスコージェネレーションシステム―。この分散型に、もう一つの分散型である再エネ電源を加えて共生を図ろうとするユニークな発想がある。

コージェネは優れた省エネ性と、ガス導管のレジリエンス性の高さを持つ。停電時も継続的・安定的に発電できる分散型エネルギーシステムとして、工場などの産業用、商業施設や病院などの業務用、家庭用などさまざまな分野で活用されてきた。11年の東日本大震災以降、災害対応への意識が高まったことなどから、さらに導入が進んでいる。そんなコージェネが、昨今の再エネ普及の社会情勢と相まって、新たな役割で注目されている。

変動型の再エネが拡大する中、「いつでもすぐに出力調整が可能」というコージェネの特長を生かし、その再エネの変動性を補う調整力・供給力としても期待が高まっているのだ。コージェネは再エネとの親和性が高く、「調整力」のほかにもいろいろと果たせる役割がある。簡潔にまとめると、①送電容量の確保、②自然条件や社会制約への対応、③系統の安定性維持、④コストの受容性―といった面での貢献が考えられる。

送電線を使わない電力 社会的コストの削減

この四つの視点を説明しよう。①の送電容量の確保は、再エネ由来の電力を送電するには大規模な設備投資を伴うことから、大きな課題になっている。その背景は、再エネポテンシャルが高い地域と需要地が離れていることにある。そこで、コージェネの出番だ。再エネ由来の電気から、「メタネーション」につなげていく。圧縮性が高く長期間にわたって、品質が劣化しない「合成メタン」を作ることで、ガス体エネルギーとして貯蔵するというアイデアだ。ガス導管に流してコージェネで利用することも可能だ。送電せずに需要地で発電できるため送電容量の確保につながる。

②でも同様、合成メタンの出番だ。日本は再エネの開発余地が少ないことから、海外の再エネ適地の安価な電力でグリーン水素を作る。CO2と合成し、合成メタンを製造。これを輸送することでコージェネの燃料としても使おうというグローバルな視点での発想だ。一方、国内事情に目を向けると、都市部では狭小ビルが多く、屋上に設置する太陽光発電には限りがある。場所を取らないコージェネを併設すれば、都市部でも地産地消の電源が実現できる。

③は、ようやく国内でも議論の俎上にあがってきた「慣性力」という極めて重要な技術的視点だ。突発的な事故の際にブラックアウトを避けるためには系統全体で慣性力の確保が必要。太陽光や風力発電は、周波数などに急激な変化があるとその電子機器を守るため発電を停止する。他方、コージェネはタービンなどの回転で発電しており、急激な変化に対して、同じ周期で回転を維持する慣性力が働く。火力、原子力、水力などのタービンを回転させる電源と同様に系統安定に貢献できるのだ。

系統安定化には慣性力のある電源が不可欠だ。(出展:20年11月17日資源エネルギー庁「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた検討」

④は、エネルギー・資源学会にて発表された三菱総合研究所の分析を例に紹介する。この分析によると、50年にCO2排出量80%減を実現するために必要な社会コストについて、電化中心のシナリオでは、系統増強費、発電所を調整電源として維持する運営費などに費用がかかる。他方、メタネーションを活用したシナリオでは、合成メタンにより既存インフラを利用してこれらの費用を抑制することができる。電力システムの合理化にもつながることが示唆されている。

全国のコージェネの設置容量は約1300万kW。再エネ拡大を、系統増強や調整力としての火力発電の維持、蓄電池など、電力系統だけで部分最適とするのではなく、コージェネやガス導管といった既存インフラを最大限活用することで、社会コストを低減し、レジリエンスの向上や地域内経済循環のメリットが見込める。

こうしたコージェネとの親和性について日本ガス協会は「再エネ導入を加速させる中で、コージェネの利点が生かせるような制度設計をしてほしい」と話している。

  *  *  *

クロス発電にしても、コージェネ利用にしても、大切なことは「既存のインフラを無駄なく使う」という視点だ。こうした取り組みは、結果的に、国民負担の低減につながっていくことになる。

【特集2】飲料業界では初めての採用 人も地球も健康な社会の実現へ


ヤクルト本社

今年3月、ヤクルト本社は「ヤクルトグループ環境ビジョン」を策定した。2050年のあるべき姿として、バリューチェーン全体でGHG(温室効果ガス)排出量ネットゼロを目指している。コーポレートスローガン「人も地球も健康に」の下、脱炭素社会の実現のためにグループが一体となってGHG排出量削減に挑む。

ヤクルト本社 中央研究所(東京都国立市)

ヤクルト本社中央研究所は06年以降、新棟建設や改修を進め、16年に全面リニューアルが完了。延べ床面積が2倍以上になり、エネルギー消費量も原油換算で10年実績の2倍以上にあたる6188klにまで増加した。

建設・改修と共に10年からは一段と積極的に省エネ対策に取り組んできた。中でも、研究所全体のエネルギー使用量の7割以上を占める空調の省エネに注目。既に新しい建物と設備で高効率機器は導入済みだったため、運用面での省エネに取り掛かった。熱源設備の運用や制御方法を変更するなど工夫を凝らすことで節電を図った。

電力でCO2を削減する場合、高効率機器を導入した後も運用を見直し、再エネ由来の電力を選択すれば一層のCO2削減につながるが、ガスについては高効率機器を導入した後の有効な手段が取りづらい側面がある。

ガス設備では既存の蒸気配管や熱交換器、蒸気ヘッダーの保温外装材の上から、通常の2倍以上の保温性がある断熱材を巻くなど、物理的に放熱ロスを削減した。また、蒸気配管系統にあるスチームトラップを、可動部分がなくドレン排出時のロスが少ない省エネタイプのものに更新し、蒸気ロスの低減を図った。

事務部施設管理課の光永浩也課長は「ガスを燃焼して蒸気を出す理論値は変わらないので、ガス設備でのCO2を減らすには二次的な方法に頼るしかなかった」と、当時の苦労を振り返る。こうした取り組みにより、20年のエネルギー消費量を16年比で16・7%減の5157klまで削減することができた。

保温カバーを付け放熱ロスを削減

CN都市ガスを採用 利用拡大も検討

ヤクルトではさらなる省エネの検討を進める中、東京ガスから「カーボンニュートラル(CN)都市ガス」の提案を受けた。「できることを最大限に積極的に進める」という研究所の方針のもと、導入を決定した。

今年4月から5年間の契約を結び、飲料業界初のCN都市ガスの全量導入が始まった。主に2・5t/時の蒸気ボイラー4台に供給。年間約1500tのCO2を削減し、国内のヤクルトグループ全体のCO2排出量で約2%減を見込む。

当初は東京ガスのみがCN都市ガスを供給していたため、利用できる事業所が限られていた。ヤクルトグループの環境活動を担うCSR推進室によると、今後供給されるエリアが広がれば、CO2削減への選択肢の一つとして他事業所での利用を検討するという。

一方、ガスは省エネ法や地球温暖化対策推進法の適用外だ。CN都市ガスを導入してもCO2削減効果が数字に表れないことが課題として見え始めている。

今年3月に発足した「カーボンニュートラルLNGバイヤーズアライアンス」には、CN都市ガスを調達・供給する東京ガスと、購入する企業や法人14社が参画してスタートした。CN都市ガスの普及拡大と利用価値向上の実現を目的に据える。参画企業が増え、国の制度における位置付けの確立に向けて取り組み、この課題解決の糸口が見えることが望まれる。

ヤクルトグループは50年の実質ゼロを目指し、30年にはCO2の30%削減を目標に掲げている。

「目標達成に向け、新しい技術や工夫を取り入れて、ガスの使用量の削減を図るとともに、エネルギー事業者と協力しながらCO2削減の取り組みを進めていきたい」。光永課長は自社による省エネ活動への意欲とCN都市ガスの普及・導入拡大への期待を語った。

【特集2】ガス事業からCNに取り組む 響灘エネルギー拠点の青写真


西部ガス

CNのトランジション期において目標達成に挑む西部ガス。LNG基地をはじめとするエネルギーの一大拠点はどうなるのか。

北九州市の響灘地区に、西部ガスのひびきLNG基地(18万kl×2基)や、グループ会社が運用するエネ・シードひびき太陽光発電所(2万2400kW)がある。基地の隣接地には九州電力との共同事業として、2020年代半ばの運転開始を目指すLNG火力発電所の建設が予定されている。響灘の約83万㎡に及ぶ一大エネルギー産業拠点だ。

九州地域の発電設備の低・脱炭素化を進める

西部ガスは50年のCN実現に向け、30年に次の目標を掲げる。①同社グループおよび需要家のCO2排出削減貢献量を150万tにする(現在の排出量は約300万t)、②再エネ電源の取り扱い量を20万kWにする(現在は約5万kW)、③供給するガス全体のCN化率を5%以上にする―。

LNG基地を中心とした響灘地区の取り組みは、この目標達成に大きく貢献している。

基地の特性を生かす事業展開 新技術を取り入れCN実現へ

国際海事機関(IMO)は50年までに船舶から排出されるGHG(温室効果ガス)排出量を08年比で半減させ、今世紀の早い段階でゼロにする目標を掲げており、今後LNGを燃料とする船舶の導入拡大が見込まれる。

ひびきLNG基地では、船舶燃料を重油からLNGに転換した船舶へのLNG供給事業に乗り出す。岸壁や洋上に停泊するLNG燃料船に横付けしてLNGを供給する、Ship to Ship方式のLNGバンカリングの拠点形成に参画する。LNG燃料供給船の建造や保有について、九州電力や日本郵船、伊藤忠エネクスと検討中だ。

基地では、さらにメタネーションにも取り組む。太陽光発電所などで発電した電気を使って水を電気分解。水素を発生させCO2と合成して、都市ガスの原料となるメタンを作る。CO2を再利用するため、燃焼時にCO2が発生しても相殺される“CNメタン”になる。既存のインフラを使い、都市ガスと同じように供給して社会コストを抑制する。

基地に隣接する太陽光発電所は敷地面積の合計が約27万6000㎡。約7500戸分の年間電力使用量に相当する発電量だ。

立地を生かし、メタネーションへの活用も検討している。

西部ガスグループ最大のインフラ基盤であるひびきLNG基地。経営企画部の齋藤章人マネジャーは、「ISOコンテナなどによる海外向けLNG再出荷事業を拡大しながら、CNの実現に向け、新たな基地利用の取り組みを検討していく。アジアに近い立地の優位性や拡張性がある同基地の特性を生かしたビジネスを展開したい」と話している。

【特集2】エコジョーズがCNの強い味方に ハイブリッドで一次エネルギーを大幅削減


【パーパス(エコジョーズ/業務用ハイブリッド給湯機)】

パーパスのエコジョーズはスマホと連携し、省エネをサポート。 業務用ヒートポンプと組み合わせ、コスト削減にも貢献する。

LPガスの特長に、燃料が劣化しない、備蓄ができる、災害時の復旧が早いという点がある。日常はもちろん、非常時にも力を発揮する。そのLPガスの機器が、2050年カーボンニュートラル(CN)に向けて進化を続けている。

省エネ高効率ガス給湯器「エコジョーズ」はお湯をつくる際に発生する排熱も利用する。ガスの使用量が減ってガス代が下がり、CO2も削減。CNをサポートする給湯器としても注目されている。

エコジョーズ「GX-H240ZW」

近年はIoT化が進み、パーパスのエコジョーズは「AXiSスマート(900シリーズリモコン)」とスマホを連携。「パーパスコネクト」アプリを使い、スマートフォンから給湯器の遠隔操作や使用エネルギーの見える化が行える。今年6月からは2世帯住宅など、給湯器が2台ある住宅でも一つのスマホで操作できるようになった。

環境意識の高まりに対応し、使用したガスや水などのエネルギー使用量もスマホで確認が可能。オプションの「マルチ計測ユニット」を組み合わせれば、家じゅうの電気の使用量も見える化し、省エネ生活をサポートする。同社のエコジョーズは電気をつくるエネファームにも接続可能で、省エネから創エネまで行いたいユーザーの希望を叶える商品だ。

組み合わせてイイトコ取り 補助金利用で導入を促進

パーパスの業務用ハイブリッド給湯システム「PG―HB90/PGM―HB90シリーズ」は、高効率のヒートポンプ(HP)給湯器と瞬発力のあるガス給湯器を組み合わせた、エネルギーの〝イイトコ取り〟の商品だ。業務用HPユニット、バックアップ給湯器(エコジョーズ)、貯湯ユニットから構成される。

コンパクトで分散設置が可能な業務用ハイブリッド給湯システム

通常はHPをベースとしてお湯をつくり、エコジョーズはバックアップ用として待機する。お湯の消費が一時的に増え貯湯タンクの残量が少なくなると、自動的にエコジョーズが稼働する仕組みだ。42℃のお湯を1日3000ℓ使用する場合、一般的なガス給湯器を単体で使用するより、年間約47%のランニングコストを削減する。ガスの使用量が減るので、一次エネルギーは35%の削減になる。洗い物などで大量のお湯を使う業務用厨房のある飲食店や福祉施設への導入が進んでいる。

システムは、①お湯の温度が安定、②高温殺菌機能を搭載、③フレキシブルな設置が可能、④スケジュール運転が可能―が特長だ。

①は、エコジョーズでつくったお湯を貯湯タンクを通して直接供給する独自の回路を採用。これにより、HPからエコジョーズに運転が切り替わってもお湯の出が悪くなる心配がなく、安定した温度のお湯を供給し続けられる。

②は、民生用の2~3倍の加熱能力を持つ6kWのHPを採用。80℃の高温水をつくることで貯湯タンク内の殺菌ができ、いつでもクリーンなお湯を提供して事業者の負担を軽減する。

③は、ユニットがそれぞれ独立しているため、分散設置ができる。給湯器は高低差5mまで設置可能なので、給湯器のみ2階の店舗に設置するといった使い方ができる。貯湯タンクも従来の業務用エコキュートの5分の1程度の大きさになり、設置面積も3分の1になった。店舗の軒下に設置するなど、都会の店舗での利用に便利だ。

④は、営業時間や定休日をリモコンで設定できる。営業時間に合わせ沸き上げを行うので、エネルギーの無駄がなくなる。HPを停止させる時間をつくり、電力のピークカットを行うデマンドコントロールにもなる。

全て1台のリモコンで操作でき、HPと給湯器の稼働状況もリモコンに表示されるので、どの一次エネルギーを使用しているのか一目で確認できる。

今年5月、経済産業省が公募する「産業・業務部門における高効率ヒートポンプ導入促進事業費補助金」の2次公募から、システムに含まれるHPユニットが補助対象になった。現在12月10日まで5次公募中だ。

パーパスがハイブリッド給湯システムに取り組んだのは、エネルギーの自由化が始まった16年頃。鈴木孝之営業企画部長は「自由化が始まり、ガスだけでなくエネルギーという広い視野で製品を提供し、エンドユーザーのコスト削減に貢献したかった」と話す。

CN達成のために電化やCO2削減につながる機器が注目される中、ガスの利点を生かしつつコスト削減とCO2削減を実現するパーパスのハイブリッド給湯システム。国の補助金の後押しを受け、エネルギー利用が偏ることなく、電気とガスのイイトコ取りで、ユーザー目線で提案できる商品になっている。

【特集2】製造工程や排水処理で活用 GHG排出量ネットゼロに躍進


【キリンビール】

キリンはビールの製造工程で20年以上前からヒートポンプを導入。培ったエンジニアリング技術を生かし、CSV先進企業を目指す。

キリンビール名古屋工場

キリングループは昨年発表した「キリングループ環境ビジョン2050」で、2050年にバリューチェーン全体の温室効果ガス(GHG)排出量をネットゼロにすると宣言。その達成に向けた戦略として、「省エネ」「再エネ拡大」「エネルギー転換」を打ち出している。

「省エネ」では、ヒートポンプ(HP)を用いた未利用排熱の活用と電化を項目に挙げる。「再エネ拡大」では、太陽光発電設備の導入を推進しながら、必要な電力を100%再エネ由来に切り替えていく計画だ。この二つを組み合わせて成果を出し、最後は「エネルギー転換」で水素技術を活用しネットゼロを目指す。

キリンビール(キリン)のHP導入は、1990年代からビール製造工程で始まった。ビールの製造工程は大きく分けて、①原料の仕込み、②発酵・貯蔵、③ろ過、④充填(じゅうてん)・包装―の4段階があり、それぞれの工程で多くの熱を使う。同社はまず仕込み段階にHPを導入した。麦汁の煮沸工程では低温の水蒸気が発生する。これを圧縮・昇温し、再び熱源として煮沸プロセスに再利用する。現在は国内の全9工場に、この排蒸気回収システムを採用。一次エネルギーの使用量を約80%削減し、GHG排出量は1工場当たり、年間のCO2換算で約1400t削減を実現した。

同社は、④の工程でもHPを導入している。加熱した麦汁は発酵のために冷却が必要なので、冷凍システムを使用する。従来は冷凍機からの排熱は、冷却塔で大気へ放出していた。この排熱を活用し、充填後に缶の結露防止のため加温する工程に再利用して、燃料の使用量を削減している。

このように燃料を削減しながらも、各工場では1日に約1800tもの蒸気を使う。19年に同社が使ったエネルギーは、電気で1億2000万kW時、都市ガスで6000万Nm。GHG排出量は合計約19万tにも上る。ネットゼロ達成に向けて、未利用排熱をいかに活用するかが大きなポイントになる。

排水加温ヒートポンプ(滋賀工場)

排水処理にHPを導入 大幅なGHG削減を実現

19年から順次導入し、大きな効果を上げているのが排水処理でのHP活用。現在、効果が見込める全工場で導入済みだ。

前述のビール製造の各工程では、それぞれ排水が発生する。排水には麦の残りかすなどの栄養分が混じるため、微生物を使って分解処理を行う。この微生物の活性を維持するには排水を一定温度に保つ必要があり、水温が下がる冬季は排水を加温しなければならない。これまで都市ガスを燃料とするボイラーでつくった蒸気で加温していた工程に、HPを導入した。

排水は1時間に約150mが20℃前後で流れ込む。これを熱交換器で30℃程度に昇温し、微生物による分解処理をする。その後約25℃に降温した排水を別の熱交換器で15℃まで下げ、放流する。この時回収した熱はHPで圧縮し再び35℃に昇温。熱交換器を通して、流入する20℃前後の排水の加温に利用する仕組みだ。

この導入で、キリン全体のGHG排出量は約3400t削減、前年比2%減に貢献した。

排水処理工程でのHP導入後フロー

工程を熟知した設計が強み CSVの先進企業に

キリンは100年以上培ってきたエンジニアリング技術を誇り、HP導入などの設計は外部の協力も得ながら、自社とキリンエンジニアリング社が中心で行う。生産本部技術部の若松隆一氏はいかにHPの台数を少なく、高効率で稼働させるかが重要だと話す。「そのためには、生産プロセスを十分に理解し、熱がどう使われているかを知らないと設計できない」。自社だからこそ全ての熱の流れを解析し、最適化する高度な設計ができると強調する。

製品の品質を守るのはもちろんのこと、HP導入が製造工程に影響を与えず、既設の工場にどのようにレイアウトすれば熱を最も効果的に使えるか、工場ごとに設計する。「HPはさまざまな温度条件で使えること、十分な性能であること、標準機器であること、GWP(地球温暖化係数)が低い冷媒であることなどを確認しながら、工場のエンジニアと導入の設計をしています」CSV(社会と経済の共通価値の創造)を思い描き、社会的価値と経済的価値の両立を目指す。ほかの工程でも電化を進め、さらにGHG排出量を減らす計画だ。

「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業になる」が、キリンが27年に目指す姿。「HPを使いこなし、ほかの飲料にも展開して世界をリードする、社会によい影響を及ぼす技術開発をしていきたい」(若松氏)。

ネットゼロの達成に向けて、GHG排出量の少ない生産システムの実現を目指し、その目標達成をHPが後押ししている。

生産本部技術部の若松隆一氏

【特集3】気象リスクを3次元で予測 将来の安全・安心な飛行に活用


一般財団法人 日本気象協会

物流、点検、災害対応など今後の活用が期待されるドローン。現在はドローンパイロットが決められたエリアで安全を確認しながら目視飛行をするが、10年後には自動操縦で上空を飛び交う世界がやって来るともいわれる。

その未来になってもドローンの安全な運航に欠かせないのが、気象情報だ。

日本気象協会では、ドローンを利用した気象観測技術の開発と、ドローンが安全に飛行するための気象情報の提供の二つの事業を展開している。

ドローンの気象リスクは突風や強風、雨、雷、竜巻、霧、気温などが挙げられる。ドローンが飛行する地上から高さ約150mまでの情報が必要で、特に上空の風は飛行判断に重要だ。例えば、地上では風速2m/秒程度の風でも、山間部では頂上付近は風が増幅し、強風となることもあるのだ。

高層の風を測るのはゴム気球に測定器を取り付けて飛ばす「ラジオゾンデ観測」が長い間の主流だが、使い捨てのためコストが高いという難点があった。

同協会はこの課題の解決に、ドローンに気象センサーを取り付け、上空の風を測定する取り組みを2014年から始めた。17年には、ドローン運航を支援するドローン向け気象情報の開発に着手した。

上空の風の現況観測には、①環境気象センサーユニット、②ドップラーライダー、③スキャニングライダー―を活用する。

①の環境気象センサーユニットは、設置した場所の風向、風速、気温、湿度、雨、気圧など複数の気象要素を計測する。主にドローンの離発着地点で有用だ。鉄塔に取り付け、周辺の気象を監視することもできる。②は風力発電を建設する地点で、風車高さの風を調査するために使用する機器。これを応用し、鉄塔の点検時にドローンが飛行する上空の風を計測することもできる。③は、半径5~6㎞の広範囲の風速と風向を立体的に計測する。

「飛行経路または機体に設置した気象センサー、カメラなどにより気象状況の変化を把握」と飛行ルールで定められているほど、気象情報の把握は重要なのだ。

環境気象センサーユニット

予測技術を融合 より安全な飛行のために

同協会は風の現況観測だけでなく、10分後、1時間後などの予測技術を持つ。流体力学に基づいた数値シミュレーションで、山間部では地形を用い、都市部では建物の高さや位置関係を用いて風の流れを計算する。この結果から、地上から上空まで詳細な3次元の風況を予測。画面上で可視化し、強風を回避するルートを探せる。

ドローン気象情報の提供イメージ。風が可視化される。

データは山間部では20~50mメッシュ、都市部では1~100mメッシュの細かさで表示され、より詳細に安全な運航ルートを探すことができる。

ゆくゆくは、ドローン運航管理システムで気象情報を一元的に活用できるインターフェースも提供する計画だ。

同協会の強みについて事業統括部の森康彰副部長は、「科学的な知識に基づいた、高精度な気象の観測、数値シミュレーション、データ分析から、これらを融合した気象情報の提供までができること」を挙げる。「遠くない将来、多くのドローンや空飛ぶクルマが飛び交う社会が現実のものとなったとき、私たちの気象情報が安全で効率的な飛行に活用されることを願っています。ドローンが都市部を飛ぶようになったときに、速やかに飛行の安全をサポートできるよう、ドローン用のビル風予測の研究も進めています」と、来るドローン社会に備えている。

【特集2】エリアを越える電力融通のために 皆の強い使命感で計画を達成


東日本大震災を教訓に、計画停電を回避すべく始動した国家プロジェクト。工期短縮で挑んだ飛騨変換所の新設工事について、当時の洞所長に聞いた。

インタビュー:洞 浩幸/中部電力パワーグリッド 岐阜支社飛騨電力センター変電課 専任課長(当時:中部電力パワーグリッド送変電技術センター飛騨直流連系工事所 所長)

―2013年に現地調査を開始して、15年に工事に着手。標高1000mを超える山岳地帯の開発面積は13万㎡になりました。

 私が着任したのは17年7月、平地に造成し、コンクリートの基礎工事に入るタイミングでした。ここは自然条件が大変厳しく、冬は積雪が2mを超え、気温もマイナス30℃近くにまでなる。冬場の3カ月間は工事ができないのに、10年はかかる規模のプロジェクトを2年短縮して、20年度内に完了させなければならなかった。大変な現場だと思いました。

―どのようにして工期を短縮したのですか。

 通常の変電所の工事は、平地に造成し、コンクリートを打って基礎ができてから建物を全て完成させます。その後構内を舗装して、電気機器の据え付け工事に入りますが、これでは間に合わない。基礎ができたところから同時に据え付け工事を行うことにしました。多くの工事が同時並行するので、さまざまな重機や資機材を運ぶ車両が狭いエリアに乗り入れる。重機の配置場所や資機材を搬入するルートを、毎日図面に落とし込み、関係者で確認しました。

―最も大変だったのは。

 18年9月4日の台風21号による倒木で配電線が倒れてしまい、現場に電気が来なくなってしまった時です。変圧器を組み立てている工程の時でした。精密機器なのでクリーンルームを作り変圧器のコイルが湿らないよう空調を効かせて作業をしていました。発電機を動かすも燃料が切れ、倒木で道路も通れない。途中までタンクローリーに来てもらい、2日間タンクローリーから工事現場までポリタンクで燃料を運びました。停電の復旧は近隣のお客さまが最優先なので、コイルが駄目になっても仕方がないと覚悟しました。

―コロナ対策も行いましたか。

 昨年の夏は100人ほど出入りしていました。所員は2班体制にし、車両も一人1台で使いました。工事の大変さは誰もが承知だが、コロナはどう感染するか分からない。みんな負担に感じたでしょうが仕事以外でも気を付けてくれて、一人の感染者も出ませんでした。

温かい明かりを届けたい 完成を支えた人たちに感謝

―台風にコロナ、大変でしたね。

洞 その後も想定外のことがありました。10月から実際に電気を流す系統連系試験を行っていた時のことです。年明け、大寒波で全国的に電力需給がひっ迫しましたよね。試験では大きな電力のやり取りが必要なのに、その電気がない。毎日のピーク使用量を見ながら、使用量が少なくなる真夜中ならできる試験を選別し、昼と夜の二交代で行った期間もありました。

―そうして運開を迎えました。

洞 完成した設備に目が行きがちですが、造成工事や基礎工事の厳しい工程に文句も言わず、休みも返上して泥だらけになって仕事をしてくれた人たちがいてこそです。3月31日19時の運用開始時は、彼らの顔がまぶたに浮かびました。所員には「自分たちだけでやった仕事じゃないんだぞ」といつも言っています。9人の所員は強い使命感でこの長い闘いを乗り越えてくれた。電気のスーパーマンだと思いました。たくさんの人と出会い、共に苦労した、本当にいい現場でした。

―これからの飛騨変換所については。

 3.11のような状況の中でも明かりがあれば温かい気持ちになれます。東西で融通できる電力が90万kW増え、今後は、エリアを越えて、より安定的に電気を送ることができると強く感じました。万が一トラブルが起こってもどうすれば一番早く復旧できるか、今も日々考えています。

【特集2】データ活用で見える化から制御へ 再エネの自家消費を最大化


【日本ユニシス】

街全体のエネルギーマネジメントを可能にするエナビリティーEMS。ビル建物から戸建て住宅まで、幅広く管理をサポートする。データを活用し、再生可能エネルギー利用の快適な暮らしを目指す。

日本ユニシスのマルチエネルギーマネジメントシステム「Enability(エナビリティー) EMS(E・EMS)」は、建物における電力・ガス・水道など多様なユーティリティーを対象に、利用状況の収集や見える化、機器の遠隔制御によるリソースの管理などを行うシステムだ。

利用状況の収集、見える化では、大規模なビルや工場から一戸建て住宅まで建物全般を計測対象としている。大規模なビルや工場では、エネルギーの見える化のほか、空調機など設備のオン・オフ制御、計測したデータを基にした、子メーターの遠隔検針(料金計算業務と連携した検針値集計)を行う。主に高圧一括受電マンション向けには、エネルギー使用状況を踏まえた「節約ポイントの付与」などのサービスも提供する。一戸建て住宅を対象とした家電製品ごとのエネルギー使用量管理も実施する。

Enability EMSの概要

将来的には、メーター計測値を活用した環境価値管理を目指している。統合的に計測値活用を行い、建物全体のみならず、入居するテナント単位での環境価値管理(RE100への対応など)を支援していく。

収集データで遠隔制御 分散リソースを有効活用する

遠隔制御サービスでは、収集したデータを活用し、発電設備や蓄電・蓄熱設備といった分散リソースを有効活用するためのエネルギーマネジメントサービスの提供を目指している。

低圧電気利用の一戸建て住宅に対しては、日々の電力使用の傾向や気象情報を基に、AIが翌日の需要と太陽光やエネファームの発電量を予測する。自家消費を最大にするため、エコキュートを昼間の時間帯に稼働させる自動制御や、蓄電池の充放電やエネファームの発電量の制御も同時に行う。

高圧電気利用の法人や自治体向けには、一戸建て住宅と同様の制御指示に加え、制御装置にデマンドコントローラーの機能を持たせて、ピークシフト・ピークカットを行う。

リソースで注目度が高いのはEV(電気自動車)のスマート充電だ。普及が進んだ後、充電時にピークが立たないよう、社用車などは翌日の利用予定を基に、充電を制御する。事業者は契約電力の上昇を回避でき、小売り事業者は調達単価の削減につながる。

今年3月から出光興産と共同で、宮崎県国富町の工場と役場にて、太陽光発電システムとEV蓄電池、車両管理システムを活用し、建物の電力需要やEVの稼働状況、卸電力市場動向などの予測値を基にした、充放電制御を最適化する実証試験を開始している。

脱炭素社会実現の鍵 E・EMSで地産地消を支援

日本ユニシスは、5年前から関西電力のコンソーシアムでエネファームやエコキュートの遠隔制御の実証試験を行っている。昨年は九州電力ともエコキュートでの実証を開始している。

実証段階から本番サービスの提供を目指し、上位からの指令による制御と自家消費などのエネルギーマネジメントのほか、レジリエンス(強靭性)向上への対応も検証する。非常用の容量確保や、自然災害などで停電が予測されるときには充電を優先することなども検討。需要家が意識することなく自然エネルギーの活用を推進しながら快適な生活を送れる世界を目指している。

また、自然エネルギーの利用最適化の実現は企業におけるCO2排出量削減へ貢献し、2050年カーボンニュートラルの実現に寄与する。

公共第一事業部ビジネス二部の樋口慶マネージャーは、今後は地域で分散リソースを活用するVPP(仮想発電所)への取り組みが加速していくと予想する。E・EMSで、地域の電力を有効に使うためのエネルギーマネジメントやメーターの見える化によるエネルギー利用の支援だけではなく、地域におけるエネルギーサービスの提供を実現するためEnabilityシリーズを活用したいと意気込む。

「顧客管理や料金計算サービスの『Enability CIS』を組み合わせて、エネルギーマネジメントにおける環境価値の管理や、VPPで需要家の設備を利用する時のインセンティブ計算などをトータルで提供したい。持続可能なサービスとして、エネルギーの地産地消実現と、生活者の豊かで快適な暮らしを支援していきたいと考えています」と、再エネ主力電源化への展望を語る。

非化石証書のトラッキング事務局でもある日本ユニシス。E・EMSを核としたEnabilityシリーズで脱炭素社会の実現を目指す。

リソース(設備)の遠隔制御システムの構想

【特集2】日本の電力販売に革新をもたらす黒船 多彩なプランと顧客満足度で勝負


【TGオクトパスエナジー】

今秋、それぞれの暮らしに合わせてカスタマイズした電力料金プランが登場し、日本に本当の電力自由化がやってくる。

東京ガスは、英国エネルギー事業者のオクトパスエナジーと提携し、今年1月、合弁会社である「TGオクトパスエナジー」を設立した。

オクトパスエナジーはエネルギー業界向けに開発した統合ITプラットフォーム「クラーケン」を用いて、2016年に英国の電力小売り事業に参入。バイラルマーケティングの手法で、わずか5年で約200万件の顧客を獲得した。

強みの一つは300近い料金プランだ。利用状況や使用設備などから顧客に最もメリットのあるプランをAIが診断。SNSやメールで適宜提案し、顧客はスマホやPCからプランの変更ができる。

クラーケンは既にドイツやオーストラリアなどのエネルギー事業者に導入されている。複数のシステムが一本化された統合パッケージであるため、ガスも電気も販売するエネルギー事業者にとって、運用や維持管理の面で大きなコスト削減につながる。

きめ細やかな顧客サービスも特長だ。8人チームで特定の顧客5~7万件を担当する。決まったメンバーが密着したサポートを行うため、コンシェルジュのような対応が可能だ。顧客満足度が高く、離脱抑制につながっている。

アジアで初めてクラーケンを投入するTGオクトパスエナジーは、今秋から電力販売を開始し、順次全国展開していく。実店舗は持たず、SNSなどの口コミで広めることで販管費を抑え、電気料金にも反映できる。

有沢洋平取締役部門長は、「パーソナライズ化したプランを提供し、もっと電力自由化のメリットを享受してもらいたいです。日本のエネルギー事業者ではなし得なかった、新たな顧客体験を浸透させたい。価格勝負ではない、電力小売り第二幕の始まりです」と意気込む。

英国のオクトパスエナジーは、再生可能エネルギーの普及を目指しており、供給する電気を100%再エネで調達するとともに、自らも風力発電事業に参入している。TGオクトパスエナジーも、このマインドを受け継ぐ。

日本版のクラーケンはライセンス販売も視野に入れている。日本の電力小売り事業を大きく変える“クラーケン(=海の怪物)”という黒船がやってきた。

オクトパスエナジー社創業者兼CEOのグレッグ・ジャクソン氏

【特集2】業界をつなぐプラットフォーム 新しい価値を生み出しDXを実現


【パーパス】

1982年からLPガス事業者向けにシステムを提供するパーパス。培ったノウハウで、プラットフォームビジネスに乗り出した。データの共有化で生まれる新市場の開拓や活性化を支援する。

業界初の総合エネルギー顧客管理システム「クラウドAZタワー」(AZタワー)から13年。パーパスが新たに提供する全方位互換包括システム「AZスカイプラットフォーム」は、『クラウド(雲)』として分散接続する各種コンテンツやネットワークを連携させ、さらに高い『スカイ(天空)』から全体を俯瞰するシステムのイメージだ。システムやプラットフォーム、ツール、アプリが全方位で自在につながり、利用事業者と顧客を結ぶ『場』になることを目指している。AZタワーでLPガス事業者を中心に獲得したノウハウや知見を生かし、独自のアプリも展開する。

利用事業者はAZスカイプラットフォーム内のコンテンツを選び、自社のクラウドと連携して利用する。これまで顧客から集めた自社のデータのみで提供していたサービスを、参画する他社のデータも共有して、新しい製品やサービス、ビジネスを提供できるようになる。

補完プレイヤー(参画するシステム供給者)が増え、多様な製品を提供すれば利用する事業者が増える。利用者のニーズによってさらに多様なコンテンツが生まれ、補完プレイヤーが増えれば、プラットフォームとしての規模・機能・価値が向上する。AZスカイプラットフォームはこのエコシステムを循環させ、新市場の開拓や活性化への貢献を目指す。

垂直にも水平にも全方位でつながり、AZタワーもコンテンツとして含まれる

事業者のDXを実現する 業界を超えビジネスを支援

DXが注目される中、大規模な投資が難しい事業者などが大企業に負けないサービス展開をするためには、AZスカイプラットフォームのような基盤システムが必要だ。プロジェクトをけん引する、取締役常務執行役員の川口忠彦ITソリューション本部長は、「多くの補完プレイヤーに参加してもらい、利用事業者のビジネスを本当の意味で支援していきたい。コロナ禍での働く環境や事業環境の目まぐるしい変化に、柔軟で迅速に対応できるプラットフォームを構築していく」と目指す姿を語る。

プロジェクトリーダーの佐藤淳IoT・AI推進室理事部長は各プラットフォームの具体的なスキームや設計を手掛け、複数の業界をつなぐプラットフォームにすることを目指している。「住宅設備メーカーとしても、全製品についてITとの融合を始動させます」と意気込む。

国内では、顧客情報を扱うプラットフォームビジネスはパーパスが一番乗りだ。決済プラットフォーム、コミュニケーションプラットフォーム、AIエンジンの検証について、今夏の公開レベルを目標としている。

【特集3】安全に素早く正確な充塡 信頼の技術で世界トップ目指す


レポート/タツノ

昨年12月に発足した「水素バリューチェーン推進協議会」(JH2A)にタツノも名を連ねる。

エネルギー関連企業、各種メーカー、陸海運、ファイナンスなど業界を横断して88社(発足時)が参加し、社会実装プロジェクトの実現を通じて、早期に水素社会を構築することを目指す団体だ。

タツノはガソリン計量機を提供し始めて、今年で110年の老舗企業だ。新しいエネルギーの登場に合わせ、LNGやCNG(圧縮天然ガス)などの充填供給機も開発してきた。約20年前からは水素ディスペンサーにも取り組み、国内の水素ステーションでは50%を超える設置実績で水素供給インフラの構築に貢献している。

また、燃料電池車(FCV)への関心が高い北米のカリフォルニア州で、今や50%のシェアを獲得するまでの信頼を得ている。

「HYDROGEN-NX」セルフモデル

水素技術開発部の木村潔次長は「車両に入れるエネルギーが何になろうと、短時間で安全かつ正確に注入する装置をつくるというのがタツノのポリシーです」と、培った技術と信頼でFCVの普及にも貢献したいと話す。

世界随一の信頼と技術 水素社会の早期実現のために

タツノの水素ディスペンサー「HYDROGEN-NXシリーズ」は、①自社製の充塡ノズル、②世界最高レベルのコリオリ式質量流量計、③キャッシュレスのためのセルフ用POS外設機―の搭載が特長となっている。

①では、水素の特性により不具合が起こりやすい充塡ノズルを自社開発。メンテナンスの時間や費用の大幅削減を実現する。②のコリオリ式質量流量計は、質量流量精度±0・5%の高精度・低損圧の性能を発揮する。各国の防爆認証をはじめ、北米向け安全認証(ETL:Intertek)をノズルと共に日本企業として初めて取得した。③は、国内初で本体に搭載。セルフ式ガソリン計量機と同じ利便性が好評だ。

自社開発の充塡ノズル

水素は常温で液体を給油するガソリンと違って、82MPaの高圧でFCVに圧縮充塡する。ノズルは人が操作する部分なので、より高い安全性を求められる。タツノは、ノズル部分に取り付けた自社開発の赤外線通信受光部で車両のタンク情報を受信し、充塡を制御している。セルフ式の水素ステーションの普及をいち早く想定し、軽量化も図った。

昨年末、トヨタが新型ミライを発売した。タンクが3本になり容量が増えたことで、さらに短時間で充塡できる性能が求められる。

常務取締役の能登谷彰・営業本部長は、社会全体で水素の流通が増えて、その一部が車両用になるのがベストだと言い、「今後は大型車用のディスペンサーの需要も高まります。最終的に、液化水素を液体のまま充塡できれば、効率が上がりコストダウンにもつながるでしょう」と、新たな技術開発も視野に入れる。

「社会貢献の一つとして、全社を挙げて水素ビジネスを展開していきたい」と、水素社会の早期実現のために、JH2Aで積極的に取り組むとしている。