【特集2】風の力で温室効果ガスを削減 帆搭載の船をスタンダードに

2023年4月3日

【商船三井】

商船三井は、大型貨物船の燃料消費を抑えるウインドチャレンジャ―を開発した。

さまざまな船に取り付けられるマルチデバイスとして、海運からゼロエミを支援する。

商船三井が開発したウインドチャレンジャー(硬翼帆式風力推進装置)を搭載した、東北電力向けの石炭輸送船「松風丸」が航行している。帆で捉えた風を推進力に転換し、スピードを変えることなく化石燃料の使用を抑える船だ。主に北米や豪州、インドネシアからの石炭を輸送。ウインドチャレンジャー1基を搭載し、日本から北米までの東西航路で約8%以上、日本から豪州までの南北航路で約5%以上の燃費を削減する。

ウインドチャレンジャーは幅約15m、高さ23~53mで、縦に4段階伸縮する。素材はFRP(繊維強化プラスチック)を採用。軽量化して帆全体の面積を大きくするとともに、船のバランスへの影響を最小化している。荷役時には帆の回転を防ぐ安全装置で定位置に固定。前方の視界確保のためにカメラを取り付けるなど、安全性にも工夫を凝らす。

大きな特徴は、形状と優れた操作性だ。風向風速計を搭載した三日月形の帆は、正面の左右25度以外からの風であれば、最適角に自動旋回して捉え、推進力に変える。また、風速に応じて自動で帆を伸縮する。

さらに、専用の航路計算システム「Weather Routing System」を実装。民間気象会社の天気予報をダウンロードして、帆を最も活用でき、燃料を最も削減できる航路候補とその効果を提示する。乗組員が簡単に、風力を最大限効率的に利用できるよう、商船三井が独自開発した。

既存船にも設置可能 各種大型貨物船をアシスト

ウインドチャレンジャーは、新造船はもちろん、既造船にも取り付けられる。船の仕様によっては複数本の設置を提案。海運業界が取り組む燃料転換などによる温室効果ガス(GHG)削減効果をさらに高めることができるのだ。

電力・風力エネルギー事業群第一ユニット電力第一チームの井上岳大チームリーダーは「この先主流になる燃料が現れるのか、複数が並行して利用されていくのか、今は未知数。その中で、どの燃料船に対してもアシストできるのがウインドチャレンジャー」と話し、高額になると予想される代替燃料など、ゼロエミッション・低エミッション燃料の消費量を、種類によらず削減することで強みを発揮したいと抱負を語る。

開発開始から13年。ウインドチャレンジャーを搭載した松風丸が入港できるよう、寄港する国内外全ての港に安全性や環境性を説明し、賛同を得られたのも、開発者が信頼関係を築いてきた船舶会社だったことは大きい。

商船三井は現在、「帆がある船をスタンダードにしたい」との狙いから、2番船への帆の搭載を進めている。環境負荷低減が求められる時流を追い風に、ウインドチャレンジャーの普及を通し、輸送船の脱炭素化に大きく貢献して、海から世界を変えていく。

大型商船への搭載は世界初。帆とエンジンのハイブリッド船だ