【日本原子力発電 村松社長】原子力事業の先駆者として期待される役割を踏まえ政府のGX方針に貢献

2023年3月2日

政府が「GX実現に向けた基本方針」を閣議決定し、原子力政策の見直しが今後進むことになる。将来にわたり持続的に原子力を活用していくため、原子力事業のパイオニアとしての役割を見つめ直し政府戦略の実現に貢献していく考えだ。

【インタビュー:村松 衛/日本原子力発電社長】

【聞き手:志賀正利/本社社長】

むらまつ・まもる 1978年慶応大学経済学部卒、東京電力入社。2008年執行役員企画部長、12年常務執行役経営改革本部長、14年日本原子力発電副社長、15年6月から現職。

志賀 岸田政権は昨年、GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議を舞台に原子力政策を見直し、運転期間の追加的な延長を認め、次世代革新炉の開発・建設を進めるといった基本方針を打ち出しました。今通常国会で原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法などの束ね法案が審議される予定です。原子力事業の転機になるものと期待していますが、一連の動向をどう受け止めていますか。

村松 今回示された方針はいずれも当社事業、さらにはメーカーなどを含めた原子力産業全体に深く関わるものです。これら重要事項の中で法整備が必要なものは閣議決定され、それによって第六次エネルギー基本計画の内容が実質的に上書きされるものと期待しています。
 特に原子力関連は束ね法案として審議されることから、国会ではさまざまな議論が交わされることになるでしょう。法制化や関連する政省令など、今後の具体的なプロセスを注視していきます。

志賀 今回の束ね法案で掲げる政策のうち、特に原子力産業にとっての最重要政策とは何でしょうか。

村松 やはり次世代革新炉開発を、既設炉のリプレースと併せて進めていく方針を示したことです。最新技術を取り入れて新たに炉を建設することへの政府の言及は、原子力産業に大きなインパクトを与えるものです。
 ただ、次世代革新炉の技術的要件はまだ明らかになっていません。またリプレースについても、廃炉を決定した発電所の敷地内が対象となりましたが、廃炉の数とリプレースを合わせていくのかどうかなど、定義自体がどうなるのか、注目しています。これらの具体的な内容が見えてくれば、例えば敦賀発電所3、4号機建設計画への影響を計るなど、当社内でも具体的な対応を検討できるようになります。

革新炉開発への期待 敦賀3、4号への影響は

志賀 その敦賀3、4号はすでに敷地造成を終えています。革新炉の最有力地点と言えるのではないでしょうか。

村松 本計画は東日本大震災前に原子炉設置変更許可を旧原子力安全・保安院に申請したものであり、現在は審査が中断している状態です。震災以降、他社も含め新たな建設計画は凍結されてきましたが、今回、一定の条件下で解除される方向性が見えてきました。ただ繰り返しになりますが、現在はその具体的要件をウォッチしている段階です。当社としては当面、敦賀2号の新規制基準適合性審査への対応に全力を挙げる考えです。

志賀 とはいえ、革新炉開発やリプレースを実現する上で、原子力のパイオニアである原電が果たす役割はやはり大きいのではないでしょうか。

村松 敦賀3、4号はもともとAPWR(改良型加圧水型軽水炉)の第1号案件とすべく計画したものです。歴史を振り返ると、当社は日本の原子力発電のパイオニアとして、その時々の最新型設備の建設に取り組んできました。今、われわれが敷地造成まで完了している計画を持っていることで、政府が掲げる政策の実現に、当社はパイオニアとしての役割を果たしていけるものと思います。

志賀 かつて、準国産エネルギーである原子力開発に国を挙げて取り組んできた時代の雰囲気を彷彿とさせます。

村松 革新軽水炉が日本にとってもっとも現実的かと思いますが、SMR(小型モジュール炉)や高温ガス炉、高速炉開発も政府の視野に入っており、さらに核融合炉への注目も国内外で高まっています。長期的な視野に立った技術開発と人材育成につながってほしいですね。

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