【日本原子力発電 村松社長】原子力事業の先駆者として期待される役割を踏まえ政府のGX方針に貢献

2023年3月2日

志賀 ほかに束ね法案の関連で注目している点はありますか。

村松 法案の目的の一つに、廃炉の円滑化に向けた知見の共有や資金確保など、事業環境の整備があります。当社はこの分野でもパイオニアとして、2001年から東海発電所の廃止措置に着手していますし、米国の廃炉専門会社とも連携しています。今後日本で事故炉を除く20基の廃炉を円滑に進めていくために、東海の知見を生かせる場面が出てくるでしょう。
 なお、最も廃炉プラントが多い地域である福井県では、廃炉をビジネスチャンスと捉えた計画を進めています。こうした自治体の動きからも、廃炉事業のポテンシャルの高まりを感じており、当社も取り組みに一層力を入れる必要があると考えています。

敦賀2号の審査再開 資料の品質管理を向上

志賀 他方、敦賀2号については、原子炉建屋の真下を通る破砕帯の評価を巡り、地質データに関する資料の書き換えが判明したことで、長らく審査がストップしていました。昨年12月9日、2年ぶりの再開となりました。

村松 データの書き換えや誤りの是正が複数回あったことから、原子力規制委員会による検査が行われ、その結果が昨年10月に報告されました。データの改ざんや恣意的な変更は見出されなかったとされましたが、審査資料やデータの品質管理の問題が指摘されました。プラントと同様、高いレベルの品質管理が地質データにも求められますが、そのプロセスが不十分だったということです。この点については関西電力をはじめとした各社の支援を受けながら改善に取り組みました。

志賀 審査の中断期間、現場ではどのような対応を進めていたのでしょうか。

村松 この間にもさまざまなデータの解析を進めてきました。審査では、重要設備の直下を通るD-1破砕帯などが活断層かどうか、これらの破砕帯とK断層の連続性が焦点の一つとなっています。この判断に関わる資料として、ボーリングは現時点で10本、計1100m分の確認を完了させました。これらを全て写真に収め、ボーリング柱状図という形で記録に残しています。ほかにも58本分の作業を進めており、全部で計7600m分にも及ぶ膨大なデータの確認を進めています。
 審査再開に当たり、規制委は改めて厳しく評価していく考えを述べています。当社のデータの不備で規制委の業務に負荷をかけ、さらには地域にもご心配をおかけしました。新たな体制を構築し、適切な品質管理プロセスを踏んだデータを用いて説明を行うなど、真摯に対応していきます。

志賀 敦賀2号は運転開始から36年目となります。東海第二発電所は40年超運転の認可を得ていますが、敦賀2号はこれからです。その点、今回の束ね法案では東日本大震災後の原子力発電所の長期停止期間を考慮し追加的な運転延長を認めるなど、高経年炉の規制の在り方も見直されます。運転長期化に向けた追い風となるのではないでしょうか。

村松 ただ、具体的な運用がどうなるかはまだ明らかになっていません。また、規制委では新たに30年以降、10年ごとに安全性を審査していく形になりますが、この枠組みにより審査は厳しくなると受け止めており、岸田文雄首相も国会答弁で同様の趣旨の発言をしています。いずれにせよ、審査にしっかり対応していくに尽きると考えています。

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