【日本原子力発電 村松社長】原子力事業の先駆者として期待される役割を踏まえ政府のGX方針に貢献

2023年3月2日

避難計画焦点の控訴審 初回口頭弁論が延期に

志賀 茨城県など9都県の住民が東海第二の運転差し止めを求めた訴訟では、21年3月、水戸地裁が、原子力災害に備えた避難計画の不備を根拠に運転差し止めを命じる判決を出しました。今年1月31日には東京高裁で控訴審の第一回口頭弁論が行われる予定でしたが、延期となっています。本件を担当する裁判長がかつての原子力関連施設に関する訴訟で国側の代理人を務めていたことなどから、住民側が交代を求め、結果、高裁は担当部を変更しました。極めて異例な対応に驚きました。

村松 高裁からは延期の理由について「諸般の事情」と聞いています。当社としては原判決を取り消していただけるよう、東海第二の安全性などの主張・立証に全力を尽くしてまいります。
 なお、他の訴訟でも避難計画の実効性を争う例があり、例えば美浜3号機の運転差し止めを巡る昨年末の大阪地裁決定では、「第5の防護レベルである避難計画に不備があれば、直ちに放射線の被害が及ぶ具体的な危険性があると認めることはできない」といった見解が示されたばかりです。さらに複数の高裁でも、同様の主張は認められないといった判決が出ています。こうした裁判例も踏まえつつ、引き続き当社の主張について説明を尽くす考えです。

志賀 GX基本方針でも、東海第二などの再稼働に向けた地元の理解確保について、国が前面に立った対応を取ると示しています。どのような関与の形を期待しますか。

村松 国に支援していくと明言してもらったことは、非常に大きいと思います。特に避難計画の策定では、自治体のご苦労は非常に大きいものです。東海第二周辺地域では、現在、14市町村のうち5市町の自治体に策定いただいています。今後も国や地元としっかり連携しながら、事業者としての役割を果たしていきます。また、自治体の避難訓練にも事業者として積極的に参加するなどの対応を取っています。

志賀 エネルギー価格の高騰に歯止めがかからない中、再稼働への期待はかつてなく高まっているはずです。東海第二や敦賀2号の再稼働、さらに次世代革新炉開発への関わりなど、原電に期待される役割も一層大きなものとなりますね。ありがとうございました。

<対談を終えて>岸田政権下、昨年末のGX実行会議で示された原子力政策の大転換を受けての今通常国会での原子力束ね法案の審議の行方を注視する。次世代革新炉については、日本の原子力発電のパイオニアである原電として、すでに敷地造成が完了している敦賀3、4号が一定の役割を果たすものと、謙虚に意欲を見せる。さらに、全国で24基ある廃炉をビジネスチャンスと捉え戦略を練る。パイオニア原電の22世紀構想をすでに描いているのか。

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