【特集2】「脱炭素先行」で地域課題解決 官民連携で多様な再エネ拡大

2023年5月3日

環境省が注力する「脱炭素先行地域」事業が各地で進んでいる。脱炭素化と地域の課題解決に資する分散型システム活用の在り方とは。

【インタビュー】犬丸 淳/環境省地域脱炭素事業推進課長

いぬまる・あつし 1997年自治省(現総務省)入省。静岡県財政室長、総務省自治財政局財政課課長補佐、島根県環境生活部長及び総務部長、総務省自治財政局準公営企業室長などを経て、2022年7月から現職。

―昨年度から「脱炭素先行地域」を始め、これまでに46件を選定しました。進捗はどうですか。

犬丸 現在3回目の選定中で、注目度は依然高いと感じています。先進的で意欲的、かつ実現可能性のある提案を選んでおり、特に実現可能性を担保するため、第3回からは民間との共同提案を必須要件にしました。電力会社の発電から小売り、送配電部門、地域新電力、PPA(電力購入契約)事業者、都市ガス事業者などが関わるモデルが出ています。

 さらに第3回からは四つの重点選定モデルを定めました。例えば、先行地域の必須要件である「30年度までに民生電力需要のカーボンニュートラル(CN)」だけでなく、熱需要や産業、運輸部門などの排出削減を強化するモデル。ほかにも施策間連携、地域間連携、地域版GX(グリーントランスフォーメーション)といったモデルがあり、これらを意識して地域の特徴を生かした多様な計画が出てくることを期待しています。

―再生可能エネルギー以外の利用拡大がカギになりそうです。

犬丸 選定事業の中にも、秋田県大潟村の稲作もみ殻を活用した熱供給、兵庫県淡路市の竹チップを活用した熱供給など、多様なエネルギー資源を利用する計画があります。また横浜市や名古屋市などはコージェネ活用を計画しており、その場合、まずは非化石証書などを活用したオフセットを、将来的にはガス自体のCN化を考えてほしい。名古屋市は水素混焼コージェネやエネファームを導入した上で、40年に合成メタン導入という先行地域の対象期間を超えた計画を掲げ、ガス分野のモデルとして評価されています。


GXの社会実装を後押し 系統負荷軽減し再エネ追加

―岸田政権のGX政策は地域のCNにどう影響しますか。

犬丸 GX基本方針では先行地域を、GXの社会実装を後押しする政策と位置付けています。先行地域は23年度当初予算と22年度第2次補正予算で合計400億円を措置し、初年度の22年度から倍増となりました。また環境省では23年度新設の「民間裨益型自営線マイクログリッド事業」に30億円を措置。自治体と民間が連携した自営線の活用で、系統制約に左右されずに再エネ拡大を図る狙いです。先行地域では1件当たりの支援の上限が50億円ですが、この新規事業を活用した場合は60億円まで引き上げます。

 各地で多様な再エネの最大限の導入が必要であり、これらが地域共生型かつ地域課題の解決に資することが求められます。できる限り系統への負荷をかけない形での再エネの追加導入を目指し、蓄電池やEVといった需要家側の設備を活用したエネルギーマネジメント技術も重要です。自治体と民間が連携し、こうした「地域裨益型CN」が広がるよう、今後は先行地域の横展開を図る考えです。

※環境省は4月28日に第3回の先行地域選定結果を発表しています。本取材は4月中旬に行いました。