温暖化対策目標がパリ協定に合致 SBTが大手エネ事業者で初の認定

2023年5月6日

【九州電力】

国際機関「SBTイニシアチブ」は、九州電力の温暖化対策目標がパリ協定に合致するものと認定した。

国内大手エネルギー事業者での認定は初めて。トップランナーとして目標実現にまい進する構えだ。

パリ協定の発効から7年が経ち、今年の温暖化国際会議・COP28では、各国政府の温暖化対策の進捗を点検する「グローバル・ストックテイク」を初めて実施する。パリ協定で掲げる産業革命前からの温度上昇を2℃、さらには1.5℃未満に抑える目標と照らし合わせ、政府だけでなく、民間企業も含めて対策の実効性が問われる段階になっている。

民間では、自社が持続可能な企業だとステークホルダーにアピールする手段として、「SBT(サイエンス・ベースド・ターゲット)イニチアチブ」からの認定を目指す動きが広がる。SBTは、UNGC(国連グローバルコンパクト)やWWF(世界自然保護基金)などの団体が共同で設立した国際機関だ。そしてSBT認定は、科学的根拠に基づき、企業の目標設定がパリ協定に合致したものであると示す「国際共通基準」として位置付けられている。

国内では369社(3月1日時点)が取得済みだ。ただ、エネルギー業界においては中小企業の取得実績はあるものの、大手事業者の実績はこれまでなかった。

そうした中、九州電力は3月下旬、国内大手エネルギー事業者第一号となるSBT認定を取得した。

認定された目標のターゲットイヤーは2030年だが、同社は長期的なビジョンとして「50年に自社サプライチェーンの温暖化ガス排出実質ゼロ」、それを超えて社会全体の排出削減に貢献する「カーボンマイナス」を掲げる。同社の江口洋之環境部長は、「野心的なゴールを最終目標とし、対策を積み上げて設定した当社の経営目標が、科学的根拠に基づいて望ましい水準であると実証されたことには大きな価値がある」と強調する。

サプライチェーンで評価 裏付けは非化石比率の高さ

今回認定された目標はどのような内容なのか。

九電グループは30年経営目標として、国内の温暖化ガス排出量を13年度比で65%削減する目標を掲げる。これは、政府のNDC(国別目標、30年度13年度比46%減)を上回る水準だ。同社はこの目標をベースに、SBTが示す温暖化ガス削減経路のうち「WB2℃」(2℃目標を十分下回る経路)に沿った目標を申請し、今回認定を受けた。WB2℃は、一般的には年2.5~4.2%ペースで排出量を減らす経路だが、電力セクターについてはさらに厳しい水準を求めている。

SBTの目標設定イメージ
出所:環境省

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